序章・番外編4
御神楽 薙
翌日……。
オレは今、宿のベッドに寝かされている。
横ではミルがなにやらうれしそうな表情でりんごの皮を剥いてくれている。
「なぁ、なんでオレはこんなところで寝てなきゃいけないんだ?」
「薙お兄ちゃんは何かあるとすぐに無茶しそうだから、よくなるまでは動いちゃ駄目なんです。」
…………よくわかっていらっしゃる。兄妹の契りを交わしてまだ2日目だというのに。
町について一通り診察や治療を終えた後、宿で色々とお互いのことを話していて、昼間言っていた兄弟の話題になったとき。
「お兄ちゃんか、欲しかったなぁ・・・」
と、ポツリとミルが呟いた。
この時、
「オレも妹って欲しかったですよ。」
と返したところ
「じゃあ、兄妹になってみます?」
とさらに返され、
「ああ、いいですね。」
ここで、契り完成……。
まさか本気だとは思っていなかったのだが……。
「本当ですか!? 嘘じゃないですよね?」
……………こんな反応されて断れる男がどこにいる?
………………で、今に至る。
とりあえず、昨日のうちに注意されたこと。
人前では絶対にこのことはばれないようにする。ということ。
まあ、人前で子供っぽいところは見せたくないんだろうなぁ。
背伸びしたい年頃だろうし。……他にもなにか事情があるかもしれないけど。
まあ、妹が急にできるというのも、ハッキリいって新鮮で、うれしくもあるのでいいのだが。
どうにも、それからミルの頼みが断れない。
今だってヒマで仕方がないのにベッドに横になっているし…。
まあ、いいか。悪い気分はしないし。
どこまでやれるかはわからないけど『お兄ちゃん』としてがんばってみよう。
後日談になるが、どうやらあのトラップも実習の一環だったらしい。この一日後に監督官が様子を見に来て、教えてくれた。道理であんなところにあんな罠がポツンとあるわけだ………。
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