知人

語り手エリー

「旅人2」
開戦よりかなりの時間が経った。

1253年末、冬を迎え雪国であるクレアは更に寒くなっていた。
その街に一人の「旅人」が訪れた。


「旅人」は、クレアの街を足早に歩いていた。
目指すは一人の「男」・・・・・・
いや、『存在』が正しいか・・・・・もしくは『漢』
どちらにせよ性別など関係ない。

まずは軍の詰め所を目指す。
其処に情報がある事を信じて。


「変な客」

「えっと・・・・・・・・・・・」
対応に出た兵士は困惑していた。
相手の要求している事は解る。決して理不尽な要求ではない。
相手の態度も決して不快なモノではない。
言葉少なだが、最低限の礼節は押さえていると思う。
だが、・・・・・・・・・
もう一度相手を観察してみる。

身長は180以上あるだろう。がっしりした印象を受ける。
黒いローブを羽織り、背中には大荷物
ローブの前は開かれており灰色のゆったりとした上下揃いの服が見える。
フードから覗く顔は端正で、それでいてはっきりと「男性」を感じさせる。
引き締まった表情と猛禽の如き眼光からは極めて力強い感じを受ける。
何故か頭にターバンのような布を巻いていた。
幾重にもまかれた布に耳より上が完全に覆われていた。

武人・・・・だろうか、傭兵かも知れない。
闘争に長く身を置いている人種と見て間違いないだろう。
だが、今は物静かな感じである。・・・・・その筈だった。
目を閉じて身じろぎもせずにただ待っている。
その様子に何故か困惑が溢れてくる。
ひょっとしたら困惑では無いのかも知れない。
しかし、今一番感じているのは困惑だった。
「(何故こんな事に・・・・・・・・早く帰ってこい。)」
己が身を嘆きつつ、先程使いに走った同僚が一刻も早く帰ってくる事を願う。
本当に何故こんな事になっているのだろう?
先程までの平穏を思い出すと涙が出そうになる。
少し前に同僚と共に巡回を終えた。
後は交替の兵士が来るまで詰めていればよかった。
「(この後、どうするかな?久々の休みだし)」
等と考えながらノンビリと茶を啜り始めた所でこの来客・・・・・・
しかも、その用件が
「この国に『パンドラ』という将軍がいると聞いた。合わせて欲しい。」
相手は名を名乗らなかった。問いつめても
「この手紙を届けて欲しい。そうすれば向こうが分かる筈だ。」
と、答えただけだった。
押し問答になったが、相手は主張を変え無かった。
結局、同僚が手紙を届ける事になった。
「(あの時グーさえ出さなければ)」
同僚が勝利した時の嬉しそうな笑顔を思い出す。
たかがジャンケン、されどジャンケン・・・・・・・・・・・・


「来襲」

「お待たせしました。」
聞こえてきた声に回想から引き戻される。
同僚が戻って来ていた。何処か疲れた感じがする。
すぐさま駆け寄って、耳元に囁く。
「おまえ何時まで掛かってるんだよ。何時まで(ぼそぼそ)」
当然、口にするのは遅くなった事への文句のみ
その声音からは怨嗟すら感じさせる。
「仕方ないだろう。(ぼそり)」
疲れた感じで同僚が応じる。その理由を尋ねてみる。
同僚が疲れている理由は一つ、パンドラの所在が掴めなかった事
先日編成された「聖蓮4」を訪れたが、いるのは補佐官の将軍のみ
兵舎にある自室を訪ねてみても「外出中−無断侵入は危険なので止めましょう。」
との看板が扉に下がっていた。「注:無理に鍵を開けると痛い目に遭います。」とも
その後もあちこち探し回り幾人もの人間に尋ねてやっと見つけたらしい。
結果として貧乏くじを引いたのは同僚だったと見て間違いない。

「もう、良いか?」
何時の間にか客が近くに来ていた。
怒らせたかと思い慌てたが、涼しい顔をしている。
感情を出さないのか、怒っていないのか・・・・・・どちらにせよ手早く済ませるべきだろう。
「失礼しました。パンドラ将軍に確認した所、言伝を預かっております。」
「取りあえず、身元は証明できたわけだ。」
そう言って苦笑する。戦時中故に身元の知れないものは特に警戒されていた。
「数々の非礼、申し訳ありませんでした。何分、戦時中の事・・・・・・
故『御容赦』とは行かなくともせめて『御理解』頂きたく・・・・・・」
「ああ、大丈夫、大丈夫・・・・・・・これからは平気なんだろ?」
「はい、身元はパンドラ将軍が全面的に保証すると」

珍しい言葉がでた。「全面的に『保証』」・・・・・・その意味は重い。
それ程の信頼を寄せている相手なのだろうか?

「それで?言伝の内容はどんな?」
「はい。『今は手が離せないので私の部屋で待機していて欲しい。』
『基本的に勝手に使って良いが、極私的なものを弄ったら覚悟して下さい。』との事で」
「さよか。(苦笑)彼奴らしいな・・・・・・・・・・・・・彼奴の部屋まで案内してくれないか?」
「解りました。少しお待ちを」
丁度来た交替の兵士達と話を付け、兵舎に戻りながら案内する事にする。
気になる事があったので脇を歩く同僚に聞く。
「パンドラ将軍は何で手が離せないんだ?」
「市場の改装の手伝い・・・・・・・・」
「あー・・・・・・・・そう言えば、今日改装だっけか」
街外れにある大きな市場を思い出す。食料品を中心に多くの品物を取り扱っていた。
「図面から実行までかなり手を貸しているみたいだぜ。責任者にもなってたな
代わりに今日の売れ残りの食料品全部だと」
「相変わらずと言うか何と言うか・・・・・・・・・・・・」
そんな事を話しながら兵舎を目指す。
客は何やら思案に耽っている様で、静かに付いてくる。

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PL:今ー更「オリキャラ」の参戦です。
   第4部隊にいる「ガグ」はこいつです。
   続きも続々と完成しそうだけど致命的に「眠い」のでまた後で・・・・・・
   復帰SSがこいつのネタとは・・・・・・・・・(涙)
   他は進まないしなぁ・・・・・・・何とか休戦中ニ(ムダナケツイ)


(2002.11.03)


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