お萩騒動
ヴェルナ・H・エイザー
第7部隊『白夢』がリュッカに入ったその日、聖都クレアから大量の物資が送られてきた。
「えらくまた多い補給物資ですの・・・。というよりこんなの申請しましたっけ?」
「・・・・・・ですね」
兵からの報告を聞き見に来たヴェルナと偶然その場に居合わせたツムジはほぼ同時に溜息をついた。
「ところで、これは誰からのですの?」
「はっ、結城様からだそうで。」
補給物資などの処理を担当していた兵士は表情も変えずにそう告げた。
「ところでこれは何ですの?」 「・・・・・・お萩・・・」
「食べれるんですの?」 「・・・・・・食べれます」
「クレア名物なのですの?」 「・・・・・・多分」
「何人分くらいあるのでしょう・・・?」 「・・・・・・さぁ・・・」
ヴェルナの1つ1つの問いに淡々と返すツムジ。
「なんか嫌だぁ、この空間・・・」
その場に居合わせた兵はその独特の雰囲気にそうポツリと呟くのだった。
「うまいなぁ、これ。」 「うん、いけてる。」 「久しぶりやなぁ、お萩なんて食べるの」
そういい、満面の笑みでお萩をほおばる兵士たち。
「あれ? ところで隊長は? せっかくのご馳走なのに。」
「ん? 隊長ならお萩を1口食べるなり2、3個手に持って走って調理場に行っちまったぞ」
それを遠くから聞き、綾火は溜息をついた。
「またですか・・・」
(調理場)
「う〜ん・・・おそらく材料は・・・」
ヴェルナはお萩を口に含み、ゆっくりと食べながらレシピを書き出していた。
「すごくおいしいですの・・・作り方を是非マスターしたいですの」
(一方外では・・・)
「てめぇ、ハヤテ!お萩独り占めすんじゃねぇ!」
「知るかい! てめぇらが食べるのが遅いんや!」
お萩をめぐって争奪戦が起きていた。
「ツムジさん、止めたほうが良いのでは?」
見るに見かねた綾火がツムジに聞いてみる。・・・が
「・・・・・・無駄。・・・・・・食べ物の恨みは・・・」
完全に、我、関せずといった雰囲気を漂わせてお茶を啜りお萩を食べるだけであった。
それを見、溜息をつきながら、
「というより、お萩はまだ大量に残っているんだがな」
(2時間後)
「お〜ぃ、ハヤテ・・・まだ残ってるぞ。」
「うるせぇ・・・おめぇらに譲ってやるよ・・・。」
皆の腹が膨れ、今度は押し付け合いが始まっていた。
「というか、何でこんなにお萩が送られて来るんだ・・・」
そう途方に暮れていると、調理場からヴェルナが出てきた。・・・手にはお萩が詰まれた皿を持って。
「皆さん、お萩を作ってみましたの。食べてくださ〜い。」
その声に兵士の怒号がこだました。
「隊長〜! 場の流れを読んでください〜!!!」
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