辛勝
ユーディス・ロンド
「はあっ・・・はっ・・・」
息が荒い。
目がかすむ。
腕がしびれたままだ。
「お、俺・・・ホントに勝った・・・?」
自分の有様を見て、にわかには信じがたいユーディス。
キロール・シャルンホストも自分も、常に前線に身を置いて
指揮を取るタイプの将だけに、戦場での邂逅はたやすかった。
護衛を引き連れず、一人双頭の剣を振るうキロールに、
ユーディスもまた一人で勝負を挑んだ。
だが、熟練の技と苛烈なまでの意思、そして何より人生そのものと
言っていいほどの戦場での経験に裏打ちされたキロールは強かった。
正攻法での戦いしか知らないユーディスは徐々に追い詰められ・・・
「・・・あれ? 俺、どうやって勝ったんだ・・・?」
途中から意識が真っ白になり、記憶がハッキリしていない。
何か、酷く体に力が漲っていた気はするのだが。
そういえば、以前にもコレと似た感覚に襲われた事が・・・。
「ユーディス将軍!」
思案にふけりそうになったユーディスを、ミーシャの代わりに副官を
努める兵が呼び戻す。
そうだ。ここはまだ戦場。
キロールに手傷を負わせたものの、離脱出来たという事はそう
大した事はなかったのだろう。
ならば・・・。
「よし、敵が大黒柱を失っている今がチャンスだ! 俺に続け!」
先ほどの一騎打ちの余韻が兵にも乗り移ったのか、ユーディスの
号令に応えて過去にないほどの気勢が上がる。
この若さゆえの勢いは、果たしてどちらの方向へ彼らを導くのだろうか・・・。
まだ、戦いは始まったばかり。
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