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SROM様による『FINAL FANTASY VIII』レビュー

注意

 サブタイトルにあるように、本文章はSROM様から御投稿を頂いた『FINAL FANTASY VIII』(PlayStation)レビューです。
 ですので、背景が黄緑色となっている部分(レビュー本体)の著作権はSROM様にあります。ただし、当図書館長のほうで、一部記号文字の置き換えなど、文の意味を損ねない範囲で必要最低限の編集を行っております。


SROM様による『FINAL FANTASY VIII』レビュー
項目評価
操作性7
音楽10
画像10
システム3
設定5
人物3
脚本4
主観評価10
合計52


 何をいまさらと言われそうなゲームのレビューであるが、最近このゲームを再度プレイしたので、とりあえず執筆する事にした。
 ネタばれを含むのでご注意頂きたい。

 『FINAL FANTASY VIII』は、ファイナルファンタジーシリーズの8作目であり、1999年2月にスクウェアより発売されている。発売当時高校3年生だった私は、その頃が仮卒の期間という事で時間が空いていた為、『FF8』に没頭していたのを覚えているが、結局自力ではクリア出来ず、弟のプレイを見てこの作品のエンディングを拝んだという苦い思い出がある。


<雑感>

 完全にSROMの主観である事をあらかじめ断っておく。


1. 初心者お断りのゲームシステム

 ファイナルファンタジーシリーズのゲームシステムは、それぞれが全く異なっている(ドラゴンクエストシリーズと比較すれば一目瞭然)。その中でも『8』は、特に異端と言えるのではないだろうか?

 まず本作では、レベルを上げてもキャラクターのステータスはHP以外ほとんど上がらない。キャラクターを強くする為には、GFをジャンクションし、道端や敵から取得出来る魔法を装備して強化しなければならない。つまり本作では、レベルがキャラクターの強さに直接的な意味を持たないという事である(レベルが一定値まで上がると、敵から取得出来る魔法が変わるという特徴はある)。
 どんなゲームでも、とりあえずひたすらバトルを重ねてレベルを上げて、キャラクターを強化するという手法を用いている自分のようなライトユーザーにとって、正直本作のレベルシステムは苦痛である。

 せっかく苦心して創り上げた、ジャンクションシステムやドローシステムを活用させたいというスタッフの考えは理解出来るし、これまでのようにレベル上げを序盤にやりすぎて、ゲームバランスを崩してしまう事を防止するという意味でも、「レベルを上げてもキャラが強くならない」という所までなら許容出来る。
 しかし、本作のレベルシステムにはもう一つ大きな特徴がある。
 本作では、キャラクター側のレベルに応じて敵も強くなる。しかもキャラクターとは異なり、HP以外のステータスもどんどん上がるのである。つまり『FF8』は、レベルを上げれば上げる程戦闘が苦しくなるのである。
 ちょっと待てと言いたい。いくら何でもここまでする必要があるのだろうか?キャラクターが強くならないだけならまだしも、敵まで強くなってしまうのではいたずらにレベルを上げるわけにもいかないではないか。しかも頭にくる事に、このシステムはマニュアルやチュートリアル等では目立って説明されていない。私がこのシステムに気付いたのがゲーム終盤で、序盤でレベルを上げすぎ、事実上クリア不能になってしまった(まあこれは私自身の落ち度がある点も認めるが)。

 前述の通り、本作でキャラクターを強くする為には、ジャンクションシステムやドローシステムを活用しなければならない。主に戦闘で敵から魔法をひたすらドローする必要があるのだが、全部溜めるのはかなりの手間が掛かり、1回の戦闘が非常に間延びする事が多く、テンポを完全に壊している(そうでなくても『FF8』のバトルシーンは開始時やGF召還時のエフェクトが長すぎていらいらするのに)。斬新ではあるがあまりにも煩わしく、完全に退屈な作業と成り果てているのも大きなマイナス点である。しかもレベル上げという逃げ道すら本作には無く、攻略する際にこの面倒極まりないシステムに頼らざるを得ないというのが実に痛い。
 その上で、むやみにバトルに勝利してレベルを上げてしまうと敵も強くなるなどという問題もある為、カード変化や逃走等、経験値を取得しない方法を必要に応じて取る必要まである(一般的に、そこまで神経質になる必要があるのかは知らないが)など、何でここまで苦労しなければならないのだろうと本気で悩んだ事もあるくらいである。
 その他にも、ギルがバトルではなく、一定の歩数に応じて給料として支給されたり、防具が存在せず、武器は買ったり手に入れたりする事が無く、手持ちのものを改造する事で強化するなど、それまでの『FF』シリーズと比較しても、斬新なシステムが本作では散見する。しかしそのほとんどが、楽しむというより余計な作業を押し付けられたような気分になってしまうのは私だけだろうか?

 結論として、本作のゲームシステムは、斬新ではあるが、人によってあきらかに好みが分かれる点や、RPGの基本戦略とも言えるレベル上げという手法が使えない点から、RPG初心者や、システムよりストーリーを楽しみたいと思うライトユーザーには、難易度が高すぎるように感じてしまうのである(そもそも「敵が強い」ため難易度が高いのでは無く、「味方を強くしにくい」ため難易度が高いというゲームは珍しいのではないだろうか?)。というより、もはやこれは難しいというより苦痛といった方が適切かも知れない。とてもではないが、本作のゲームシステムが万人受けするとは思えない。


2. 魅力の無いキャラクターと稚拙なストーリー

 さて、インターネット上での評価では、『FF8』のストーリーには凄まじい批判が上がっている。特に、主人公のスコールとヒロインのリノアのラブロマンスに対するユーザーの反響はものすごいものがあった。

 私も本作のストーリーには不満がある。
 まずキャラクターについてであるが、外見ばかり着飾って、中身が空っぽというキャラクターが実に多いように感じた(現代の日本の若者を象徴しているような気もする)。
 特に酷いと思ったのがキスティスで、冷静沈着で、メンバーを上手くまとめるリーダー的な存在という役割が元教官という立場からもふさわしいと思うのだが、実際には緊急時にも他のメンバーと同じようなリアクションしか出来ず、ろくな意思決定もせずに右往左往するだけという、何とも情けないキャラクターに成り下がった。またこれは主観だが、本作では彼女が担うべきリーダーという立場を、必ずしも適切とは言えないスコールに強引に押し付けているようにも見える
 また、サイファーというキャラクターについても疑問が残る。彼はいわゆる裏切りキャラで、序盤は味方として主人公達と共に行動し、途中で裏切り、強力なライバルとして主人公達の前に立ちはだかるという役割を持つキャラクターであり、サイファーも確かにこの部類に属するのだが、はっきり言って失敗している。そもそもこのキャラクター、最初から最後まで結局何がしたかったのかいまいち分からないのだ。彼の行動には一貫性が無く、自分が取った言動を覆してしまう行動を別場面で取る事もあるなど、矛盾だらけである。おそらくスコールのライバルとしての位置づけに彼はいるのだろうが、ゲーム中での彼とのバトルで、さほど手強いと感じた事も無く、しつこい敵キャラ以外の感慨が彼からは湧かなかった。『FF7』の裏切りキャラ(?)であるセフィロスのように、サイファーはメインキャラを殺したり、大量虐殺などの許しがたい悪事を働いている訳でもなく、彼に打ち勝った所で大した達成感もカタルシスも味わえない。悪役としても明らかに扱いが中途半端で、何の為にいるのかすら良く分からないキャラクターである。
 本作のラスボスである魔女アルティミシアにしても、中途半端な気がする。こいつもサイファーと同様、結局何がしたかったのか良く分からないキャラクターである。時間圧縮という事象を引き起こして何がしたかったのか、そもそも何の意図でそんな事を企んだのか、いまいち掴めないのである。ゲーム中での強さはともかくとして、前作のセフィロスと比較しても、ラスボスとしての魅力は明らかに劣っている。アルティミシア自身が登場するのは本当に最後の最後だけで、それまでに主人公達との間に因果らしいものも無く、主人公達がアルティミシアと戦わなくてはならない必然性すらあまり感じられない。当然こいつを倒しても、カタルシスはほとんど生まれない。行動原理やその動機も不明瞭な為、一概に悪者と決め付けていいのかすら良く分からない。
 『FF8』は、主人公達も含め悪役に至るまで、キャラクターの描写が完全に失敗していると言わざると得ないのである。キャラクターの魅力はストーリーを楽しむ為の重要な要素であるにも関わらず、この点は実に大きなマイナス点になっていると言わざるを得ない。

 加えてストーリー自体もかなり稚拙である。『FF7』のアンチテーゼのつもりか、本作では敵味方を問わず、人の死というものを極力遠ざけているように思える。それゆえに重苦しい雰囲気にはならないものの、物語としての質は低くなると言わざると得ないだろう。
 その他にも、実はリノアを除くメインキャラクター達が全員顔見知りだったなどという稚拙な展開を見せ付けられたり、ディスク3枚目に入ってからいきなり主人公がリノア一筋に心変わりしたり、シナリオ展開、演出共に「これは駄目だ・・・」と思う部分が非常に多く、とてもではないが好意的に評価するのが難しいのである。
 少なくともストーリーにおいて、『FF7』と本作を比較した場合、目も当てられないくらい差がついている事は断言出来る。


<終わりに>

 私はゲームのレビューをする際には、なるべく好意的に評価をするように心がけているのだが、初心者を無視した難解で面倒なゲームシステムと、稚拙なストーリー(キャラクター描写)という最悪の組み合わせを持つ本作を好意的に受け止める事はさすがに出来ない。
 私は、RPGというジャンルのゲームに置いて重要なのは、「ゲームシステム」と「ストーリー」であると思っている。たとえばどんなにシステムが悪くても、プレイヤーが先に進めたくなるような魅力的なストーリーであれば、何とかそのゲームをプレイしようという気にもなるのだが、『FF8』の場合どちらも駄目ぶりを存分に発揮している為、救いようがない。
 ネット上で本作の好意的な意見を探して見ると、グラフィックが良いという意見がほとんどを占めているように思える。確かにスクウェアが手がけただけの事はあり、クオリティが相当なものである事は私も認めるのだが、それもゲームとして楽しめるか、ストーリーが良いかのどちらかを満たしていなければ意味を成さないのでは無いかと思うのだが・・・。
 また本作を「ファイナルファンタジー」として見なければ、そこそこ楽しめるという意見も良く聞くのだが、それなら最初から「ファイナルファンタジー」などというタイトルを付けるべきではないだろう。「ファイナルファンタジー」は、その名前がゲームのタイトルに付くだけでも購入する価値がある程の超人気シリーズである。その本筋のシリーズに、このような作品を位置づける事がそもそもの間違いのようにも思える。

 完全に批判的なレビューとなってしまったが、あくまでも私の主観意見である事をご理解頂きたい。
 とは言え、ネット上の本作の評価や、この次に発売された『FF9』の売り上げの落ち込みようを見る限り、あながち私の意見はずれていないとは思うのだが。


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関連リンク

SQUARE-ENIX(旧SQUARE、『FINAL FANTASY VIII』製作元)


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