注意 本文章はSROM様から御投稿を頂いた『下級生2』(Windows)レビューです。ですので、背景が黄緑色となっている部分(レビュー本体)の著作権はSROM様にあります。予め、御了承下さい。 |
『下級生2』のレビューである。ネタばれにご注意頂きたい。 エルフの看板ゲームの一つとも言える『下級生』の続編である。主人公は頼津学園の3年生で、残り一年間の学生生活を送る。今作のヒロイン達と、会話やデートで関係を深めて行くゲームである。基本的には有名な『下級生』のゲームシステムを踏襲しているので、詳細は省く。 今作における攻略対象キャラクターは9人。原画は前作に引き続き門井亜矢氏が担当しており、文句なしの出来である。ビジュアル面で言えば、個人的には前作より今作のヒロイン達の方が気に入っている。 特徴として挙げておくと、メインヒロインの柴門たまきはじめ、今作のヒロインは妙に現実感があるというか今時の若者といった印象が強く感じられる。9人中5人が経験済みという設定もそれを示唆しているようだ。 <雑感> 全般的な評価をすると、正直前作には及ばないと思われる。 各ヒロインを進める上で、ライバルがほとんど現れず、ひたすら好感度を上げていけばいいというゲームの流れはかなり単調である。それでも、さすがにエルフと言うべきか、クオリティの高さは見事なものである。 やはりなんと言っても、本作で注目を集めたのは、メインヒロインの柴門たまき一人と言って良いだろう(それもかなり悪い意味で)。インターネット上での『下級生2』の評価を最悪にしたのも、彼女一人の功績と言っても過言ではない。サイト上での評価を見る限り、彼女の評価は散々である。 ゲーム開始当初から恋人がいる上、関係も深まっている。しかも基本的に主人公はこの2人の間に介入する事は出来ず、2人が別れた後にようやくたまきとの関係を深める事が可能になる。たまきの彼氏を見る限りでは、完全にたまきはだまされているように見えるのだが、それを止めさせるようなシナリオ展開も無く、全てが終わってしまった後で、ようやく主人公の出番があるという、プレイヤーにとっては、全くやるせない欝な気分になるシナリオである。しかも、彼女は『下級生2』のメインヒロインで、主人公の幼馴染という強力な設定を有しているキャラクターであり、そんな重要なキャラクターに、こんなシナリオをあてがうライターの勇気には脱帽せざるを得ない。 ネット上では、彼女の性格に問題があるという評論がかなり多い。処女・非処女かどうかなどどうでも良いが、彼氏がいる状態で、平然と主人公とデートしたり、晩御飯を作りに来たりする神経が理解出来ないと言ったものや、主人公と付き合いだした後でも前の彼氏の事をやたらと持ち出してむかつくという評論がほとんどを占めているようだ。 私の意見を言うなら、まず処女・非処女かは、柴門たまきのシナリオに限れば、極めて重要な問題であると言っておく。 卑猥な話になり申し訳ないが、主人公以外の人間の手によりたまきが傷物にされてしまったのは正直ショックだし、しかも奪った相手が遊び人風の男であるというのは最悪である。例えるなら『同級生2』のメインヒロイン鳴沢唯が、恋敵の西御寺に先に寝取られてしまうようなものである。このような寝取られ展開は、今までの作品でも見受けられているのだが、それはいわゆるバッドエンドで、ちゃんと主人公と結ばれる展開が別に用意されているものである。たまきシナリオで問題なのは、このようなバッドエンドの展開が、メインとして一本道で描かれている点である。確かに最終的にはたまきと主人公が結ばれるが、既にたまきは元彼氏と深い関係になった後であり、いくら親しくなってもそれが痛い出来事として残ってしまうのである。 せめて彼氏とたまきが結ばれる前に主人公が介入し、事が起こる前にたまきを奪い取れるような展開を取って欲しかった。 ネット上で槍玉に挙げられているたまきの性格だが、私はさほど問題ないと判断している。 彼氏がいながら主人公とデートしたり、晩御飯を作り来たりするのは確かに問題あるかも知れないが、たまきにとって主人公は手の掛かる弟のような存在であり、恋愛の対象ではない為、彼女に2股掛けなどという意識はない。まあ男を見る目は無いかも知れないが(玉の輿を狙っていたなら話は別だが)。 ゲーム中のたまきを見る限り、外見、性格共に、彼女はメインヒロインとしての素養は十分に持っている。むしろ、これまでのエルフゲームのヒロインの集大成とも言われるとおり、とても魅力的なヒロインであると言えるだろう(だからこそ彼女のシナリオがあんな展開を見せた事がショックなのである)。 柴門たまきシナリオは、たまき自身ではなくそのシナリオ展開に大きな問題があると考えられる。 ネット上では、「中古女」「尻軽女」「淫乱」「2股掛」など好き放題言われている。更に、「3P経験済み」「ダブり」などと、根も葉も無い事を書きたくられており、ここまで来ると誹謗中傷である。そしてこのような意見をプレイしていないユーザーが見て、買い控えるという事態も起こっているようで、エルフにとってはいい迷惑だろう。 第一、たまきが2股を掛けていたとしても、主人公やユーザーにそれを責める資格は無かろう。やろうと思えば、主人公は2股でも3股でも掛け放題なのだから(笑)。 そもそも私が疑問に思うのは、エルフスタッフがどのような意図でこのような作品をリリースしたのかという事である。 ネットでの評価を見れば分かるように、この作品はユーザーに受け入れられているとは到底言えない。たまきシナリオは、奇をてらったというより、露骨にユーザーに対し喧嘩を売っているように見えてしまう。このような作品が、売り上げにプラスすると思っていたとは正直思えない。エルフ程の大手ならば、自社の製品についての綿密なチェックは行っているはずで、その過程でたまきシナリオが問題に挙げられてもよさそうなのだが、そのままリリースされている所を見る限りでは、この作品はエルフの総意であると考えるべきなのだろうか? 『下級生2』を商品として考えた場合、製作者側の意図がさっぱり分からないのだ。 上記で挙げたような現実的な設定のヒロインを見る限り、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の製作者のように「幻想に逃げ込むな。現実に戻れ」とでも言いたかったのだろうか? しかしそれは、このジャンルのゲーム全てを否定するようなもので、ましてその頂点の位置にいるエルフが、そんな事を主張しても説得力が無い。第一何の得にもならない。 『下級生2』はこれから、アニメ、ドラマCDなどメディアミックスに展開していくらしいが、そちらの売り上げに今作が悪影響を及ぼす事は確実である。ますますエルフの行動に疑問を覚えてしまう。 更に『下級生2』には、HDDやOSを破壊してしまうような致命的なバグがあるとの報告もある(参考:1、2、3)。この点もエルフには信じられないミスである(私のPCは無事だが、『下級生2』をやっていると動作が重いと感じられてしまう)。 <結論> 前作には及ばないが、このジャンルのゲームとしては良作。 ただし、商業的見地からすると、完全な失敗作。 上記が私の結論である。 ネット上での誹謗中傷はともかくとして、『下級生2』に怒りを覚えるユーザーの気持ちも正直十分に分かるというのも本音である。 エルフにアドバイスをするとすれば、一刻も早くこの作品をユーザーの記憶から消し去るべく、次回作の製作に取り組むべきという所である。 |