-

刀和祥子様による『School Days』レビュー

注意

 本文章は刀和祥子様から御投稿を頂いた『School Days』(Windows98SE以降)レビューです。背景が黄緑色となっている部分(レビュー本体)の著作権は刀和祥子様にあります。予め、御了承下さい。


刀和祥子様による『School Days』レビュー
項目評価
操作性9
音楽7
画像9
システム6
設定10
人物10
脚本10+
主観評価30
合計91


 ストーリーとしては主人公、伊藤誠が電車内で見かけた桂言葉に一目惚れする所から始る。それを知った誠の隣席の西園寺世界は何故か2人の仲を取り持とうとし晴れて誠と言葉は付き合う事となる・・・これが体験版の内容である。それ以降誠の2人への 対応によってシナリオは分岐する事となる。
 先に書いておくと本作品に登場するキャラはお世辞にも誉められた行動を取らない。よく言えば若さ故の過ち、悪く言えば考えなしで行動し泥沼にはまっている。唯一まともなのは刹那くらいなものか?

 以後言葉と世界に的を絞ってレビューしてみたい。

<桂言葉>
 誠が電車内で一目惚れし、付き合う事になった少女。家は金持ち、美人で頭もよく、気立てがいい・・・一見してみると死角の無いパーフェクトなお嬢様である。普通のギャルゲーなら高嶺の花として君臨していたであろう、ただ不幸にも本作は彼女の長所ではなく短所をもろに浮き彫りにしてしまった。
 上記に示した長所の反面、彼女は世間知らずであり、挫折を知らない。お嬢様故空気が読めず周囲から浮き、気を許せる友人もいない。よって友人達と苦しみや悩みを分かち合う事が出来ずに溜め込んでしまう。そしてその溜め込んだものが限界を越えた時・・・彼女は暴発してしまう。

「誠くんが好きになった人なんて生かしておきたくないし、そんな人を殺して誠くんに嫌われた自分はもっと生きていくべきじゃないと思ったし」

 このシーンはギャグタッチで描かれていたが言葉の性格そのものを表している。
 プレイしていた当初何故言葉が誠のような男と付き合う事になったのか不思議で仕方なかったのだが、要するに彼女は孤独を紛らわせる存在が欲しかったのだ。
 おそらく最初に告白したのが誠ではなく澤永でも彼女は受け入れていたのではないだろうか? シナリオ途中、誠に振られ自暴自棄になって澤永と付き合う事になるのも孤独と挫折から心の均衡を保てなくなったための防衛反応だろう。
 私の知り合いに精神科医がいるのだが、恋愛絡みで精神を患う人間は金持ちでそこそこ美人が多いらしい。純粋培養された故、挫折を知らないため精神面が弱く恋愛につきものの感情の上下についていけない・・・
 勿論全員が全員そうではないのだが桂言葉のケースそのまま当てはまる。歩道橋の上で鋸で世界を惨殺し狂ったように笑う彼女を見て私は驚きよりもただ憐れみを感じた。

<西園寺世界>
 誠の隣に座る少女。何故か誠と言葉の仲を取り持とうとし、2人が晴れて付き合いだし誠から何か礼をしたいと告げられた時、彼女は誠にキスをする。そう、彼女も誠の事が好きだったのだ。
 彼女はある意味言葉とは対極の存在である。庶民で友人も多く孤独とは無関係であり、バイトをしてることから世間の事も多少は知っている。
 彼女はまあ何と言うかWeb上では『下級生2』のヒロインたまきと1・2を争うくらい嫌われている存在である。その気持ちは分らないでもない、実際私も嫌いだし。
 彼女は何かにつけて消極的である。それはもう犯罪的に。そしてつらい事があるとすぐ現実逃避してしまう。誠と言葉が付き合う事になるとすぐに引き篭もってしまう。
 誠と世界が付き合っていると思っている友人達の誤解を解こうとしない、ルートによっては友人達に言葉の妨害を頼むことまでやっている。一番唖然としたシーンは「我が子へ」。誠が自分を見捨てたと思い込み彼を刺殺するのだが、実は誠が世界のことを思っている事が分ると何をとち狂ったのかその場から逃げ出してしまう。要は彼女は自分だけが可愛いのだ。誠のことは好きだけど自分は傷つきたくない、だから誠と逢瀬を重ねても言葉に謝罪の一つもしないし逆にそれを言葉にとがめられると逆切れする始末。「鮮血の結末」で彼女が言葉に惨殺されても言葉に哀れみの感情は湧いても世界には何の感慨も湧かなかったのもそのためである。

 このゲームは登場人物の青臭さ、未熟さといった欠点をリアルに表現しているという点ではまさしく名作の域に達している。ショッキングなシーンに多少耐性のある方にならお勧めの作品といえるだろう。
 ただ欠点が無いわけではない。インストールに8GBを要求するHDDの問題他、フルアニメ故ミドルクラス以上のグラフィックボードがないと動作が不安定になる。またバグも豊富でサイトでパッチを落とさないとろくに動いてくれない等システム面でマイナスを食っている。
 また主人公の伊藤誠、これがまたろくでもない男で言葉と別れた理由が「Hさせてくれないから」ってもうアフォかと。言葉一筋の選択を選んでてもいきなり世界に告白しだしたりと始末に終えない。感情移入出来ない主人公としては私が知る限り誠がトップなのではないのだろうか(笑

 何にせよ色々と考えさせられる作品であった。次の『Summer Days』はサブキャラの刹那が主人公だそうだが修羅場やどぎついシーン等は無いのでちょっとがっかりである。



-

関連リンク

Overflow(『School Days』製作元)


-

トップページ玄関(トップページ)  レビュー社会情報研究所のトップページ  レビュー電脳研究室のトップページ

PSレビューPlayStation用ソフトレビュー  WinレビューWindows用ソフトレビュー