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2002年9月18日 22時07分07秒
マスコミではあれこれ叩かれているけど
「13人中、死者8人に生存者4人、行方不明者が1人」
昨日の日本国内は、この数字に様々な意味で翻弄されていました。
日本から北朝鮮に拉致されていた11人の安否情報が明らかにされたのは、
昨日の日本と北朝鮮の史上初の首脳会談での話。
この席上、追加で2人の安否情報が公開されると共に、金正日総書記が拉致問題に関して公式に謝罪。 これを受ける形で、「平壌宣言」という文書が発表され、 今年10月頃から両国の国交正常化交渉が再開されることになったわけですが、 日本国内の空気は祝賀ムードからは大きくかけ離れている様子。 その様子はニュースや新聞を御覧になれば一目瞭然です。
詳しい論評は抜きにして、まず最初に、 死亡した8人の遺族の方々に対する哀悼の念と、 5人の生存が確認された事実に対する喜びの気持ちを表明したいと思います。
で、今回の会談と宣言を評価すべきかどうかなんですが……これが実に難しい。
北朝鮮側が「今まで存在しなかった」と語っていた拉致問題が公式に認められたことや、
財産請求権を相互に放棄し韓国と国交正常化を果たした時と同じように
経済支援で金銭的な清算を完了しようという方針が固まったことなど、
評価可能な点が多いのは事実なんですが、後味が悪い部分があることもまた事実。
その際たる物が拉致問題。謝罪の言葉が出たのは良いものの、
拉致被害者の過半数が死亡していた事実には、多くの人々がショックを受けていた様子。
特に、拉致被害者の年齢が事件当時若かったことを考えると、
北朝鮮側が「全員病死か事故死」と死因を説明したとしても、素直に信じられないのが正直なところ。 拉致被害者の親族の間からは「実際には銃殺でもされたんじゃないか」との指摘の声が上がるほどです (もっとも、「強制収容所の中で病死」というのならあり得そうな話ですが……)。
また、現在及び未来の問題である核開発疑惑や化学兵器所有に関して、 北朝鮮側の回答が日本側の意向に沿っていたとはいえ その表現が若干曖昧なものとなっており、不安を残す結果となってしまっていることも見逃せません。 もしも北朝鮮に核ミサイルが存在するとなれば、それは日本にとって 早急に排除すべきである安全保障上の脅威以外の何物でもありませんから、 この問題に関してもう少し突っ込んだ議論をやって欲しかったと思います。
だからと言って、今回の階段を失敗と断じるつもりはありません。 私が考える限り、北朝鮮が示した今回の譲歩は、北朝鮮が行い得る譲歩としては最大級の物だと思います。 これ以上の譲歩を行えば、国家としての面子が保てなりますし、核開発問題などのカードを失うことにもなりかねません。 その譲歩を拒んだとなったら、北朝鮮側が態度を一変させて交渉が頓挫することだって十分あり得ます。 こうなってしまったら、国交正常化交渉を再開させるのはもはや不可能。 数十年単位の長い時間が経過するか、どちらかの国が「地図から消滅する」ようなことにならない限り 問題は解決しなくなるでしょうし、それが本質的な解決からは程遠い結末であることは言うまでもありません。 それに、交渉を決裂させるとなったら、(若干オーバーですが)北朝鮮と一戦交えることぐらいは 覚悟する必要があったのですが、その選択が賢明なものだとは到底思えません。
そんなことを考えると、今回の交渉結果は 「ベストかどうかはともかくワーストではないのは確か」と 評するのが適切ではないかなと思えてきます。
日本側にとっては不満点や不安感が複数残る今回の交渉結果。 不満点の解消は今後の実務レベル交渉で地道に進めて行くしかなさそうです。 その中で、平壌宣言で表明された問題について北朝鮮がどれだけ具体的な行動を示してくれるのかが、 国交正常化や経済支援の可否を左右することになるでしょう。
ついでに言いますけど、日本国内のメディアが拉致疑惑ばかりに目を向けてしまい、
他の懸案事項が交渉でどのように取り上げられたのかを等閑にしている状況は決して好ましい物ではありません。 拉致問題が国民の最大の関心事であることは理解できますけど、 両国の懸案事項はこの他にも大量に存在することはどうかお忘れ無きよう……。
それにしても、小泉首相の総書記へのプレゼントって一体何だったんだろう? 日本のアニメのDVDだったってオチは無いよなあ……
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