それは、誰もが手にするコイノカケラ(後編)

アリサ・ハウンド・フォックスバット

「アリサ嬢ちゃん、居んけ?」
ノックの音、そして翔三郎の声が聞こえた。アリサは慌てて立ち上がった。
「あ・・・は、はい、すぐに開けます」
アリサは鍵を外し、ドアを開いて翔三郎を迎える。
「ん、邪魔すんよー」
「ごめんなさい・・・突然呼んじゃって・・・」
赤面しながら、アリサはドアを閉め、鍵をかける。
「いや、そら構わんけどの。」
「ショウさん・・・あの・・・あ、とりあえず、お茶を入れますね。ええと、そこにどうぞ」
「お、あんがとさん」
椅子を翔三郎に勧めて、アリサはお茶を入れる。そして湯飲みを二つ持って、翔三郎の反対側の椅子へ座る。

ずずず・・・

2人とも、静かに茶を飲んでいたが、先に口を開いたのはアリサだった。
「私・・・明日、出撃します・・・」
「ん、そうね。オレも部隊の編成終わったらすぐ向かわんと」
「ショウさんも、明日部隊を編成してすぐにいらっしゃるでしょうけど・・・お互い、帰ってくる保証なんてありません。
 だからこそ・・・今、言いたいんです・・・ショウさん・・・」
アリサは、顔を赤くしながら立ち上がった。
「わ、わ、わ・・・私・・・私・・・・・・・・・ショ・・・・ショウさんのこと、好きなんですっ・・・・・・」
告白を終えるや否や、アリサは顔を真っ赤にして椅子にへたり込んだ。
「そらぁーまた、いきなりな話やねぇ・・・」
翔三郎は、思わず苦笑する。
「うぐぅ・・・わ、笑わないで下さい・・・・・・・・・本気・・・なんです・・・」
アリサは、そっとうつむいた。
「と、済まんの。別に冗談や気まぐれで言うたとかは思うてへんよ、アリサ嬢ちゃんはそういう子や無いしな」
翔三郎は手を伸ばし、頭をそっと撫でる
「ショウさん・・・私・・・怖いんです・・・明日の出撃が・・・3年間、私は生きていられました。
 特に、部隊壊滅の危機もありませんでした・・・」
翔三郎は、だまって話を聞いていた。
「でも、この前・・・私、始めて死にそうになりました・・・水菜さんと一騎打ちした法術隊に攻撃をかけましたけど、
 そのときのことなんです。こちらは700騎、向こうは300人ちょっと。あっという間に敵部隊は壊滅しました・・・
 でも、私・・・生き残っていた兵士に法撃を受けて・・・フガクがとっさに避けなかったら・・・私、死んでいたでしょう・・・
 私は、そのあと震えて何もできなかったんです・・・フガクがその兵士をすぐに踏み殺したから私は無事でいられたんです。
 私・・・怖い・・・でも・・・前線じゃ、まだみんな怖い思いして戦ってます。私は、怖いけど行きます・・・
 今も、凄く怖い・・・・・・・・・だから・・・お願いがあるんです・・・」
「よい、何かの?」
「今晩・・・今晩だけ・・・一緒にいて欲しいんです・・・」
アリサは赤面しながら、声を振り絞って言った。
「一緒に、ねぇ・・・そらぁー別に構わんがの」
「あ、ありがとうございます・・・」
「いや、別に礼言われるようなこっちゃ無いしよ」
「グスン・・・どうして・・・ショウさんが一緒にてくれるのに・・・やっぱり・・・怖い・・・」
「ま、死ぬかしれんってのはそう慣れるもんや無いしの。怖いんが普通よ」
翔三郎は、再びアリサの頭を撫でる。
「今もきっと・・・前線では死の恐怖に戦ってる人がいる・・・ショウさん、この戦争、終わるんでしょうか・・・?」
アリサは立ち上がると、窓の方へゆっくりと歩く。
「クレアと共和国、この2つの首都が落ちれば大きいのは終わるんやないかの。完全に戦いが無くなるってこた無いやろけど」
「人の死がなるべく少なくてすむように・・・終わるのは無理なんでしょうか・・・?」
「んー、どうすんのがそれに繋がるんかは分からんが、とりあえずオレらのやるこた軍を率いてとっとと敵を壊滅させることやの」
「それしかないのなら・・・私は、そうします・・・それで戦争が終わるならと信じます・・・」
目頭を押さえながらアリサは言った。
「ふん・・・やっぱアリサ嬢ちゃんは人を殺めるにゃあ優し過ぎるかもの」
翔三郎も、ゆっくり立ち上がる。
「私、軍人に向いてないんでしょうか? 帝国ほどの軍事力があれば、戦争にならないと思ってましたけど・・・甘かったですね。」
「戦争はいつ起きるか分からんからのう。軍人ってのは優しい子には向かんよ」
アリサは、思わず翔三郎に抱きついた。抱きついて、泣いた。
「・・・ひっく・・・優しい子は・・・人を殺したりしないです・・・」
「優しくない子は人を殺しても泣いたりせんよ。アリサ嬢ちゃんは、優しい子やよ・・・」
やさしく、翔三郎もアリサを抱き返す。
「ショウさん・・・私・・・その・・・・・・ショウさんと・・・一緒になりたい・・・」
アリサは、力いっぱい翔三郎に抱きついていた。
「ふん・・・そらぁーつまり、オレに抱かれたいってことなん?」
アリサは、ゆっくりと頷いた。この言葉を言うのが恥ずかしかったらしく、顔を真っ赤にしてうつむいてしまっている。
「一つ、言うといたんけどオレは抱いたけえいうて責任取るとか言わんよ。
 こういう状況でオレみたいなんに抱かれたら、きっと後悔する・・・それでも?」
「後悔は・・・迷ったものの負け惜しみなんですから・・・私は、決断したんです・・・後悔なんてしないです・・・」
「そけ・・・・・・ほな、少し顔上げてんか」
「・・・はい」
「これが始まり、後はもう終わりまで止まらんよ・・・」
アリサの頬に手を当てた翔三郎は、ゆっくりと顔を近づける。アリサは、そんな翔三郎を緊張した面持ちで見つめていた。
「こういう時は目を閉じるんが礼儀ぞ?」
翔三郎はふっと笑い、アリサにキスをする。アリサは、一瞬戸惑ったが、すぐに目を閉じて翔三郎を迎える。
一方、翔三郎はキスしたまま、手を背中からお尻の方まで撫で下ろしていく。
撫でるだけでなく掴むように揉んだりしてみながら胸の方にも手を這わせる。
「あっ・・・あうっ・・・・・・」
アリサは、思わず口を離してしまう。翔三郎は、アリサを抱いてベッドへと移動する。
アリサの体をベッドに横たわらせると、翔三郎がその上にかぶさった。
そして、翔三郎はゆっくりとアリサの服を1枚脱がせる。
アリサは恥ずかしそうにしていたが、自ら腕を袖から引き抜いていった。
「ふふ、まだ1枚目やで?」
翔三郎は、アリサの次の服に手をかける。キャミソールのような服を、するすると首近くまで脱がせる。
「ふん、アリサ嬢ちゃんこげなんしてんのな」
下着の上から、翔三郎が胸に手をかける。大きくも小さくもない胸は、きれいだった。
下着の上から添えられていた手は、やがてそれでは足りなくなったのか下着をずり上げ直接アリサの胸を刺激し始める。
「ん・・・・・・んん・・・・・・・・・」
アリサは、恥ずかしくて必死に声を殺した。まぶたをしっかりと閉じ、歯を食いしばった。
「その反応がまた可愛いやね」
翔三郎は胸を弄る手を止めずに額、頬、まぶたと顔のあちこちにキスを繰り返す。
「んんっ・・・・・・ふわぁぁ・・・・・・」
アリサは、わずかに目を開ける。声を殺していられるのも限界に近づいていた。
「そんな我慢することないんやで? 殴られりゃ痛いのが当たり前なように、こういう事されっと感じるもんなんやから」
「で、でもっ・・・ふわあああっ・・・」
いつのまにか、翔三郎の手がアリサのスカートに潜り込んでいた。
「ん? もう濡れとんのけ、早いのぅ」
「んんんっ・・・そ、そんなこと・・・あううっ・・・」
実際のところ・・・翔三郎に抱かれる前にアリサのショーツはほんのり湿っていた。
待っている間・・・最後、こうなることも考えてはいたし、何より翔三郎と話しているだけでアリサの感情は自然に高ぶっていた。
そして、勇気を出して抱きつき・・・抱き返してもらったことで、アリサは外的刺激なしに神経が興奮していた。
「あっ・・・んっ・・・あっあっ・・・あああああっ・・・」
胸と秘所を同時に刺激され、アリサは大きく上半身をそらせた。
朝の自慰と同じ状況だが、アリサの初めての自慰と翔三郎の愛撫とでは技術が全然違うのだ。
「ふん、体の方は準備できとるようやし・・・そろそろいこうか?」
「ハァ・・ハァ・・・だ、大丈夫です・・・あ、あの、お願い・・・します・・・」
まだ翔三郎の愛撫を受けていたかったのが本音ではあるが、アリサは翔三郎の言うことにノーと言いたくなかった。
「よい、ほいじゃあ・・・」
翔三郎の手がアリサのショーツにかかり、するすると脱がせていく。アリサは、目を閉じて足をショーツからそっと引き抜いた。
そして、翔三郎も1枚1枚服を脱いでいく。
「アリサ嬢ちゃん・・・・・・男に抱かれるってんは、こういうことなんよ」
そう言うなり、翔三郎は一気にアリサの秘所へと自らのものを突き入れた。
「あああっ・・・・い、痛っ・・・んわぁあっ・・・」
翔三郎の激しい突き入れで、アリサの処女膜は一気に引き裂かれた。血が皮膚をつたい、スカートを黒く濡らす。
激しい痛みに耐えようと、アリサは翔三郎の胸を力いっぱい抱きしめて食いしばった。
「ん・・・思うた通り、アリサ嬢ちゃん締まりがええの・・・」
アリサにのしかかりつつ、翔三郎は腰を振りつづける。
「あうっ・・・あっつ・・・あああああっ・・・」
痛みはだんだんと消え、かわりに快楽がやってくる。アリサの、翔三郎を抱きしめていた手が緩んでくる。
翔三郎は、ずんずんとアリサの中を突いてくる。アリサは、翔三郎の鼓動を感じているような気分だった。
「はっ・・・アリサ嬢ちゃん、やっぱええで。もうこっちが我慢できんごとなってきとるけぇの・・・」
「あんっ、んんっ、ショ、ショウさんッ・・・んん〜〜っ、んわあああああっ」
翔三郎は、アリサの中に自らの精を発射する。
「あっ・・・あああっ・・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
アリサの手が、ぱたりとベッドに落ちる。それをみて、翔三郎はゆっくりと自分のものを引き抜く。
「なかなかよかったの。そいじゃ、次行くとしようか 」
「えっ・・・?」
アリサが、驚いたような声を漏らす。
「ん? やけえ、次行こうかっての」
「ショ、ショウさん・・・ゴメンなさい、ちょっと疲れちゃいました・・・少し、休ませてもらえませんか・・・?」
アリサが、ベッドから上半身を起こしてへたり込む。
「始める前に言うたやろ? 『終わりまで止まらん』ってな」
そう言うと、翔三郎はアリサの後ろに回りこみ、アリサの腰を抱く。
「あ、あの・・・ショウ・・さん?」
アリサが、不安そうに振り返る。だが、翔三郎は腰を抱いた手をスカートにもぐらせてくる。
「あんっ・・・ショ、ショウさん、私・・・んんーーっ・・・」
「よぉ聞こえんの・・・もっとはっきり言うてみいや。」
「わ、わ、私・・・あんっ、ショウさ・・・や、やめてくだ・・・あんっ・・・」
思わず上半身をよじらせるアリサ。
「次いく前に、溜まってるの出しとかんとの。次のが入りきれんけえ」
アリサのスカートを捲り上げ、翔三郎はアリサの小さな秘所を指で大きく広げる。
とたんに、中から翔三郎の濃い白濁液がトロリと流れ出してくる。
翔三郎は、指を入れて残った白濁液をかき出していく。その過程で、わざと翔三郎は指をアリサのクリトリスにぶつけていた。
「あうっ・・・あんっ、・・・ダ、ダメッ、んわぁう・・・ショ、ショウさん、や、やめて・・・」
喘ぎながら懇願するアリサ。翔三郎はアリサの秘所から指を抜き、アリサから手を離す。
「ハァッ・・・ショ、ショウさん、次もいいけど、少し休ませ・・・きゃあっ」
突然、翔三郎は後ろからアリサを押し倒す。そしてアリサの腰を抱え、スカートを捲り上げると再びアリサへ挿入する。
「ショ、ショウさん、待って・・・あああああっ・・・」
「ほ、まったく緩んどらん。アリサ嬢ちゃん、やるのぉ」
「あああっつ、そ、そんな・・・あああっ、はんっ、んんっ・・・」 
後背位から挿入された物は、さっきより激しくアリサを突き続ける。
「あんっ、いやっ、ふわあっ、だっ、だめぇ、ショウさん、やめて・・・ああん」
「ふふ・・・そげん言うても、アリサ嬢ちゃん後悔せんのやろ?」
「あっ・・・後悔・・・なんか・・・し、して・・・あああんっ・・・んんっ・・・」
「ほなアリサ嬢ちゃん、ちょっと自分でしてみいな。できるやろ?」
ベッドのシーツを握り締めるアリサに、翔三郎は突然腰を止めて言う。
「んんっ・・・え・・・? そ、それは・・・」
アリサは、顔を赤らめて言った。翔三郎の前で・・・自分で腰を振るのは正直恥ずかしかった。
「あら、出来んのかの? アリサ嬢ちゃん、やっぱホントは迷っとったんけ?」
「そ・・・そんなこと、ないです・・・・・・・・・やります・・・」
アリサは、本当にゆっくりと腰を振り始める。
「大人しいもんやねぇ・・・嫌なんやったらもう止めてもええよ?」
「うっ・・・んんんっ・・・」
翔三郎のその一言で、アリサのスピードが急に上がった。アリサは今、本当に決断したのだろう。
「よい、そんならこっちもいこうかねぇ」
アリサの腰を掴み、下がってきたスカートを再び捲り上げると、翔三郎も再び激しく腰を振り始める。
「あんっ、はあぁぁんっ、ショ、ショウさん、んあっ、あああっ」
「ほ、自分で動くごとなったらさっきより締まりがようなったの・・・こっちがいきそうやで」
「ふあぁん、あっ、ショウさんだって、はんっ、ショウさんだって、こんなにも上手なくせに、んんわっ」
「ふふ、言うてくれんの。んッ、そいじゃアリサ嬢ちゃん、行くでッ、くっ」
「ああっ、んわああああああああっ・・・」
翔三郎は、再びアリサの中に発射した。ほぼ同時に、アリサも絶頂を迎えた。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ショウさんの意地悪・・・」
アリサは、息を切らしながらつぶやいた。
「は、すまんかったの。けどな、アリサ嬢ちゃんはこういう事すんのについて甘く考えすぎなんとちゃうけ?」
「え・・・?」
アリサは、不思議そうな顔をして、翔三郎を見上げる。
「2回目はちぃと乱暴にやらせてもろうた。けどな、敵に捕まって犯される時は今の比や無いで?
 それこそ、いきなり突き立ててくるかしれんし、こげなええベッドやのうして、地面の上で犯されっかしれん。
 回数かて2回なんてもんや無いやろし、一度に何人もの男によってたかられるってんもありえるしの。
 アリサ嬢ちゃん、耐えられるけ? どこの誰とも知れんヤツにそげんことされてよ 」
「あう・・・・・・・・・そ、それは・・・」
アリサは、翔三郎から目をそらす。・・・翔三郎以外の男にされるなど、とても考えたくなかった。
「まあ、男と女がするってのは色々あっからよ。思うとった程ええことばっかや無いってんはわかったかの?」
「わ、私は・・・ショウさんに私を見て欲しくて・・・構って欲しくて・・・それで・・・・・・ごめんなさい・・・」
「いや、別に謝ることでも無いしな。気にせんとええよ」
翔三郎は、ベッドに大の字になって倒れこむ。
「ショウさん・・・あの・・・今日は、ありがとうございました・・・」
アリサは、ゆっくりと翔三郎に毛布をかけた。
「お、すまんの・・・・・・一緒に寝るけ?」
「・・・は、はいっ」
アリサの顔がぱっとほころび、いそいそと毛布に潜り込んでくる。
そして、恥ずかしそうに翔三郎に寄り添ってくる。翔三郎は、アリサをそっと抱いてやった。
「ショウさん・・・あったかいね・・・・・・私・・・とっても・・・・・・・・・うれしい・・・・・・・・・」
やがて・・・静かなアリサの寝息が聞こえてきた。翔三郎は、ふと横を見る。
「うれしい、ね・・・オレみたいなん相手にしたんに、ええ顔で寝るの・・・・・・」
ゆっくりと・・・翔三郎も、眠りへと落ちていった。


そして・・・朝・・・
翔三郎は目を覚まし、目を開ける。隣に、アリサはいなかった。
「んしょ、んしょ・・・」
アリサの声が聞こえ、翔三郎はふと横を見る。先に起きていたアリサは部屋の掃除をしていたのだった。
背中をこちらに向け、テーブルを一生懸命に拭いている。
奥のほうを拭くため体を乗り出すたびに、短いスカートの後ろが持ち上がり、かわいい腿が見え隠れする。
(やれやれ・・・アリサ嬢ちゃん、その気はないんやろうけど・・・もちっと男にどう見えとるか考えた方がいいと思うがの)
翔三郎は、毛布の中で苦笑した。そして、ゆっくりと、体を起こす。
「あ、ショウさん、おはようございます」
まぶしい笑顔で、アリサが朝の挨拶をする。アリサが、こんな笑顔を人に見せることが果たしてあっただろうか?
「ん、おはようさん。すっかり寝過ごしてもうたわ」
「早く食堂に行かないと。朝御飯片付けられちゃいますよ?」
「そけ、ほんなら飯食いにでてくるかの。アリサ嬢ちゃん、まだ出発までは時間あるんけ?」
「・・・・・・30分後には、出発するんです」
悲しそうな顔で、アリサはポツリと言った。
外には、今日クレアへと向かう「WINGS」と「Schwalbe」の兵士たちが集合をはじめている。
「そう悲しそうな顔せんと。オレも、明日には追いつくけえの」
翔三郎は、アリサの頭を撫でる。少しずつ、アリサの顔に笑顔が戻ってくる。
「はい・・・一足先に行って、待ってますね・・・・・・ショウさんっ・・・」
アリサは、翔三郎に抱きつき・・・言った。
「ショウさん・・・キス・・・してもらえませんか・・・?」
アリサは、目を細めて、翔三郎を見上げる。翔三郎が、そっとアリサの頬に手を当てた。
ゆっくりと目を閉じ、アリサは翔三郎を待つ。そして、無言で翔三郎がアリサへとキスをする。
・・・そのまま、時が過ぎた。2人とも、どれだけの時がたったのか・・・そしてどちらが離したのかすらわからなかった。
「ショウさん・・・ありがとう・・・行ってきます・・・」
ゆっくりと、アリサが翔三郎から離れた。
「私、やってみます・・・どこまで人の死に耐えられるかわからないけど・・・平和な世界、ショウさんと迎えたいから・・・」
アリサが、ほろりと涙を流す。
翔三郎は、じっとそんなアリサを見ていた。
「・・・じゃ、クレアで待ってます。遅れないで下さいねッ」
涙を残したまま、アリサは微笑んで見せた。
「あん、了解。そいじゃオレは飯食って来るわ」
翔三郎は、食堂へと歩き出す。が、ふと振り返って言った。
「アリサ嬢ちゃん・・・フガクとは、ちゃんと話しときぃな」
「あっ・・・・・・わ、私・・・フガクに・・・あんな酷いこと・・・」
アリサが、うつむく。目には、再び涙が滲み出していた。
「大丈夫やろ、アリサ嬢ちゃんとフガクなら・・・言うべきことを言やぁーよ」
「はい・・・絶対、フガクには謝ります・・・ショウさん・・・私・・・行ってきます・・・」
「よい、ほなクレアで会おうな 」
翔三郎は、再び食堂へと歩き出した。アリサは、そんな翔三郎の後姿を涙と笑顔の混じった表情で見つめていたが、
翔三郎が見えなくなると、さっと馬小屋へと歩き出した。
馬小屋は、すでに馬の大半が出ていた。クレア攻略部隊で騎馬隊はアリサの「Schwalbe」だけなのだ。
アリサは、おそるおそるフガクの小屋を覗き込む。
「フガク・・・いる・・・?」
フガクは、首を下げてじっとしていたが、アリサの姿を認めると、ゆっくり怯えるようにアリサに近寄ってきた。
「フガク・・・ゴメンなさいっ・・・」
アリサは、フガクの首に飛びついた。怯えるようにしていたフガクも、とたんにアリサに顔を摺り寄せてきた。
「フガク・・・ゴメンね・・・ゴメンね・・・」
泣きながら、アリサはフガクの顔を撫でた。
そして、フガクが顔を縦に振る。フガクの「乗ってくれ」のサインである。
「フガク・・・さぁ、行こっ」
アリサは、フガクに飛び乗った。とたんに、フガクが勢いよく外へと駆け出す。
フガクの馬上で、アリサは一度振り返った。シチルの補給基地では、今ごろ翔三郎が職員にせかされながら朝食を取っているだろう。
そんな姿を思い浮かべ、アリサはクスリと笑いそして涙をこぼす。

それは、誰もが手にするコイノカケラ

(2002.11.29)


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