怪人と少女
カーチャ・ボルジア
アメラ(注1)は首都のウェスト・ストリートをダクト川を平行に歩いていた。
既に秋の短い日が落ちて、夕刻が近づいて来ている。ひと筋の風が付近の枯れた夏草を
なびかせた。ちょっと寒いな。まだ半袖を着ている肩をすくめてアメラはふと思った。
戦争中であるため、共和国内の帝国大使館は閉鎖されている。それでも、共和国内にラグライナ人はいた。それは密偵、不穏分子、反政府派の扇動員といった連中である。
アメラはこの日、共和国内に潜伏しているラグライナの不穏分子の集会があるという情報を聞き、探索に出かけていた。共和国の諜報では、今夜中に首都北部のスーヤ邸で集会が行われると言う。そこで、部隊内の暗殺隊に出動準備をさせてアメラは一人でまずはスーヤ邸を探ることにした。探索は大人数では上手くいかないからである。
まだ15才とはいえ、これまでに何人もの人を暗殺しているアメラである。部下を連れるよりは一人の方が確実だと判断していた。
しかし、この日に限って勝手が違っていたのは前方から酔った男が三人でやって来たことであった。どうやら、ならず者のようである。
「はぁ・・・・酒臭いオヤジが3人も・・・・・・・・・最悪・・」
想像した通りだった。何しろ、暗くなった時刻の人手がいない場所での女の一人歩きである。それも相手はまっとうな仕事についているとは思えない風体の輩であった。そのままやり過ごしてくれるはずがない。すぐに取り囲まれると卑猥な言葉を浴びせられた。
普段のアメラなら、すぐに龍を出して燃やすか凍らしていただろう。だが、今日は重大な探索任務の途中である。ここで騒ぎを起こせばすべては無になってしまう。ここは逃げるしかなかった。
目の前の男の股間に膝蹴りを入れると、河原に駆け下りた。後は一目散に駈ける。
しかし、男達も追いかけてきた。これは失敗したか。アメラは少し後悔した。
夜の河原を小石に時々躓きながら走る。しかし追ってくる男は酔っているためか、血気付いている。諦めることなく血走った眼つきで歩幅をつめて来た。
このままでは、追いつかれる。捕まれば、間違いなくレイプされるだろう。まだ純潔を守っているアメラにとってはそれだけは避けたかった。
「どこかに隠れることが出来たら・・・・・・あっ」
そんな刹那に目の前にダクト川にかかる橋げたが見えた。その脇には船着場があり、一艘の舟が横付けされていた。渡りに舟とはこの事である。咄嗟に櫂の影に飛び込む。時刻は丁度夕暮れで人と物の区別が付かない頃である。男達にはアメラが消えたように思えたらしい。しばらくは付近を捜していたが、やがて諦めて去っていった。
「ふぅ〜・・・やっと撒けたみたいね・・っと・・・ん?そういえば此処って・・・たしか・・」
河原から橋の上へ登って、ウェスト・ストリートへ戻ろうとして気が付いた。
ここはファイブ・ストリートとダクト川が交差する場所。先日、アメリアが襲われた所ではないか。
「我が名はフライアー・ベンケー。ドラゴン修道院の僧兵、女性1000人の下着を奪う修行をする者なり。」
突然、背後から低い声が響いた。
そこに現れたのは身の丈2mはある、灰色の法衣を頭から被った大男であった。
「これが、ベンケー・・・ アメリアが言っていた通りの馬鹿の上に変態がついた人だわ・・・」
哀れむような目で見ながら身構えるアメラ。それも全く意にも会することもなくベンケーはゆっくりと近づいてきた。
「ふむ? 999人目よりも手ごたえがあるとは思えないな。見逃すか?」
どうやら記念すべき1000人目の得物は手間をかけて仕留めたいというのがベンケー意向だったらしい。ここでアメラは逃げれば良かった。しかし、ベンケーの一言にムッとしたアメラはベンケーに脇に隠し持っていた短剣を投げつけた。軽く短剣を払い落とすベンケー。しかし、これでベンケーの気が変わった。
「中々いい腕だ。お主で我が修行を成就することにする。」
「うっ!? ・・・・・そんな事絶対にやらせない!!」
踵を返して逃げようとするアメラ。その背中に棒が延びた。しかし、ブラジャーのホックが外れた形跡はない。
初めてベンケーが不信そうな顔をして見せた。
「アメリアから聞いて一応傾向と対策は練っておいたのよ! 残念ね!!」
「なるほど、読めた。スポーツブラか?」
「悪い? だけど貴方にはこれを奪う事は絶対に無理!!」
「はっはっは。やはり1000人目はお主だ。最後にふさわしく、骨のある相手のようだな!」
またもベンケーを挑発してしまったアメラであった。こうなったら、簡単に逃がしてくれるはずもない。投げ縄が投げかけられるとあっという間にアメラの首が締め上げられた。
「くっ! 諦めなさい。スポーツブラをあたしのの服の下から脱がせられる訳ないでしょう!!」
剣を新たに引き抜き、縄を切ろうとするアメラだった・・・・・が。
その手を目掛けて鉄の分銅が飛んできた。剣を持った右小手に命中する。
「きゃっ!? ・・・・・っく・・」
あっと剣を落としてしまうアメラ。更に右手目掛けてまたも分銅が投げられた。分銅には鎖がついている。右手首に鎖が巻きつき、アメラの右手は絡め取られてしまった。
ここぞとばかりに首縄が締まられる。アメラは呼吸を確保するために左手で縄を緩めようと必死になった。この機を待ってベンケーはアメラの右手に繋がっている鎖を左側に思いっきり投げてきた。えっと思った時には鎖はアメラの右手を左脇腹へと引っ張り、更にアメラの身体を一回転すると下腹部に巻きついて来た。これでアメラの右手はL字型に身体の前に固定されてしまったのである。
「なっ! い・・・一体何をする気なの?!」
「スポーツブラをもらうと言ったはずだが?」
「きゃっ!? ・・・・・・や・・・やめなさい・・・いやっ!?」
不適な笑いを浮かべたベンケーは鳶口をアメラの右袖から差し入れた。右手が鎖で絡め取られており、右手は首縄で手一杯のアメラにとっては鳶口を防ぐ術は無い。易々と鳶口がブラジャーの肩紐が袖から引き出されて肘を通されるのを見ているしかなかった。
肩紐が肘から抜けるのを見届けたベンケーはそのまま鳶口でアメラの右手の縛めを解いた。これは肩紐を腕から抜くためである。縛めが解かれても今度はブラジャーに固定されていて、右手はL字型になったままである。これでは抵抗も出来ない。ベンケーは焦ることも無く、鳶口を使って肩紐を腕から抜いた。あっと思ってブラの紐を掴もうとするアメラであったが、肩紐は無残にもそれ自体の弾力で袖の中に消えていった。
「これでも対策を練っていたつもりかな?」
嘲笑うベンケーである。なんとかしなくては危ない。自由になった右手で地面に落ちた剣を拾おうとするとまたも右手に鎖が投げつけられた。今度も右小手に鎖が巻きつく。これでは剣は使えない。
「無駄だ。」
「あ・・・・っぐぅ・・・」
またも首縄を締め上げて、アメラの左手を使わせないようにすると、今度は鎖を右の樹木目掛けて投げつける。鎖は木の幹を巻いて固定された。これでアメラの右手は今度が肩の高さで水平に固定されてしまったのであった。左手は首輪の縛めから逃れるために縄を掴まなくてはいけない。左腕はU字型に曲がった状態に結果としてなっている。この状態ならば先ほど同様に肩紐を引き出せば楽々と肘を抜く事が出来る。左袖に鳶口が差し入れられた時にはアメラは覚悟するしかなかった。今度も易々と左の肩紐は外に引き出されて、左肘を抜けていった。アメラはこれを見ているしかなかった。
でも、この縄を掴んでいる左手さえ離さなければ、肩紐は腕を抜けるはずはない。
そう信じたかったが、実は縄と首の間に入っているのは中指を中心とした3本の指の第一関節に過ぎない。アメラの思いを知ってか知らずか、ベンケーは肩紐を左手の第二関節の位置まで引き釣り上げてきた。
「・・・そんなことをしても無駄よ・・・・・あっ?!」
縄を持つ手に力がはいる。だか、その時を待っていたかのように鳶口は左手を離れ、アメラのスカートの中に差し入れられた。鳶の先端がそっと、アメラの秘所を撫でた。
「ひぃ?! い・・・・いやぁぁぁああ!!」
まだ純潔の身である以上、その場所は誰にも触られたことがない。ソフトタッチの一撫ででさえ身体が嫌悪感を感じた。鳶口の動きを止めよう。それだけに頭を支配されたアメラは左手を縄から離してしまった。
パチッ!
軽い音が聞こえた。しまったと思った時には遅かった。肩紐は腕先をその弾力ですり抜け、袖の中に収容されていった。
まだブラジャーはアメラの胸を覆ってはいる。しかし、肩紐はどちらも肩から外されてしまい、今ではカップが乳房の上に乗っているだけになってしまった。またしても首縄を引き締められたので、左手は防戦のために使用出来ない。右腕は樹木に水平に縛られたままである。
ベンケーには余裕が出来たのだろうか? 鳶口で右腕を拘束するのに使用した鎖を解き始めた。この鎖は左の肩紐が抜かれる間はアメラの下腹部を巻いたままになっていたのである。
鎖が解けると、それを今度は左手首に投げつけて来た。抵抗は出来ない。ベンケーは必ず動作をする時に首縄を締め上げて左手で縄を掴むように仕向けている。今回もアメラは投げられた鎖が自分の左手首の周りをクルクルと回って、縛り上げていく様子を見ているしかなかった。
ここでやっと投げ縄をベンケーが手放した。首が楽になる。ほっと息を吐こうとすると、いきなり左手の鎖が引っ張られた。抵抗するアメラ。しかし、身長145cmのアメラが2mの巨体のベンケーに力でかなうはずがない。簡単に左腕が身体から離され、またも肩の高さで近くの樹木に固定されてしまった。これで丁度、十字架に磔にされるのと同じ格好でアメラは両腕を拘束されることになったのである。
「っく・・・・・殺す・・・・絶対に殺してやる・・・・・・・・・」
この姿勢からブラジャーが上からは取れるはずが無い。だがベンケーは落ち着いていた。まずはアメラの首縄を解いた。もう首縄でアメラの腕の自由を奪う必要はないからである。今度は鳶口をお腹に近づけると、スカートの中からシャツを引き釣り出した。シャツを手前に引っ張れば、アメラの可愛いオヘソが丸見えになる。
「っ!・・・・・・ひっ!? ・・・い・・・いやっ・・・・・」
そのまま、鳶口がシャツの中に差し入れられた。お腹が突付かれる。肩が突付かれる。乳房も突付かれる。アメラはまたも嫌悪感を感じて、呻く程度だが声を出した。しかし、その次の行動にはより大きい叫び声を上げてしまった。
鳶口がブラのカップを下へ引き降ろそうとし始めたのである。
「い・・・いやああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
アメラの乳は決して大きい方ではない。しかし、乳房に密着したブラのカップとは簡単に外れるものではない。ベンケーは鳶口をカップの上、谷間、脇などに架け代えてジリシリとカップを乳房から外していった。この間はアメラは絶えるしかなかった。段々と自分の胸が秋風に晒されるのを感じていた。
ついにブラジャーはオヘソの位置まで下ろされてしまった。シャツのすぐ下は乳首である。シャツを押し上げている突起が場所を教えていた。自分の胸を直視出来なくなったアメラは横を向いた。そこに見えたものは、スカートのホックを狙っている棒であった。
「えっ! ふ・・・・服は脱がさないのがポリシーじゃなかったの?!・・・」
アメリアは着衣のままで下着を取られている。自分もそうされるのだろうと思っていた。しかし、棒はスカートのホックを易々と外し、ファスナーも引き降ろした。
(脱がされる!!?)
ファスナーが途中まで降ろされた所で棒は作業をやめてしまった。だが、これでスカートは腰骨に引っかかっているおかげで落ちないだけの状態である。ウェストの周りには大きな余裕が出来た。
(た・・・・たすか・・・・ひっ?!)
またもベンケーはブラジャーを降ろし始めた。スカートの上まで降ろしてしまうと、今度は上からブラジャーを突付いてスカートの中に押し込もうとし出したのである。
この時、アメラは気が付いた。ベンケーはブラジャーを足元から抜こうとしているのである。
だが、両腕を固定されたままでは何も抵抗は出来ない。ブラは段々とスカートの淵に潜っていく。アメラは自分のウェストが細いことを後悔しなくてはいけなかった。スカートは軽く掴み上げればウェストとの間に大きな隙間をつくってしまった。作業の時々でスカートは持ち上げられ、また下ろされ、ついにブラジャーはパンティーの上まで移動させれてしまったのであった。
今度が鳶口が下に下げられた。そこから一気にアメラのスカートが捲られた。
「!!? ダ・・・・ダメエエェェェェェ!!!?」
水色のチェックが入ったパンティが丸見えになった。正面に小さなリボンがアクセントで付いているのがアメラらしくて可愛いパンティである。その上には淡いピンクのスポーツブラが重なっている。まずはブラのみを脱がすことにしたらしい。鳶口をカップの間にかけると一気に太股まで引き降ろされた。
「ひっ!? い・・・いや! いや!! いや!!! や・・やめてぇぇ!!」
頭を懸命に振るアメラ。本当にブラジャーを下ろす作業が終わった。
(いやぁ・・・・・助けてよぉ・・・・・・・・・・・・・・)
不審に感じるアメラである。しかし、ここでベンケーの攻撃が終わるはずがない。鳶口がアメラの両胸に向けられた。チョコンと頭を出した突起を鳶の先が突付いてきた。今度は乳房が救われる。脇の下を擽れば、秘所へも攻撃が加えられた。
「ダ・・・・ダメ! そこだけは・・・! そこだけはダメ!! い・・いやあぁぁぁぁぁ!!」
拘束されている両腕が外れるのではないかというくらいアメラは暴れた。それでもベンケーの攻撃は止まらない。いつの間にかシャツがぐっしょりと汗ばんでいた。
「ふっふっふ。己の胸元に注目してみよ。」
「え・・・・? 何・・・・? 何なの・・・・?・・・ひっ!?」
冷静なベンケーの声に我に返ったアメラは自分の胸をみて息を呑んだ。汗で濡れた胸元からすっかり胸先が透けて見えていたのである。小ぶりだが、形のいい乳房にバランスの取れた乳輪。そしてまだ汚れをしらないピンク色の乳首がはっきりとシャツ越しに浮かび上がっていた。
「い・・・・・いやっ!! ダメ! 見ないでぇ!!」
そんな言葉に耳を貸すはずも無いベンケーである。今度はアメラの後ろに回りこむと、両手でアメラの乳を揉み始めた。
「ひっ!!? ・・・・・い・・・いやぁっ!! くぅ・・だめぇ!! ぁ・・・・は・・・放してぇ!!!」
先ほどよりも更に激しく身を捩るアメラ。そんなことにはお構いなく大きな両手で乳房をすくい上げ、揉みほぐし、時には乳首を指で摘み上げた。今のアメラは猫に捕られらたネズミがオモチャにされているのと同じ状態である。決して逃げる事は許されず、弄られるがままになっていた。
だが、忘れてはいけないことがある。ベンケーの真の目的は下着を奪うことにある。こうして、時間をかけてアメラを弄っているのはその肉体だけに興味があったのではない。アメラが身を捩って悶えるために、段々と太股にへばりついていたはずのブラジャーは落下して来ていた。アメラに胸元を注目させた時点で既に膝頭までブラジャーは落ちていた。更に胸を責められたのだから、ブラジャーがいつまでも膝の上に乗っているはずがない。ヨガリ続ける間にいつしか、ポトリと足元にブラジャーは落下してしまった。
「くぅ・・・・あ・・・・・・・・し・・・しまった?!」
足元の異変に気がついた時にはベンケーがアメラの右足を鳶口で持ち上げて、ブラを取り外した後であった。残りは左足にかかっている。この程度のことは造作もなくベンケーは片付けた。あっさりと左足からもブラジャーを抜き取るとベンケーは高笑いを始めた。
「はっはっは! 我が大願が成就するまで、残りはパンティ一枚! ブラジャー千枚を集まる荒修行は只今修了したものなり!」
少女特有の甘酸っぱい香りを堪能すると、アメラから取り上げたスポーツブラを頭に被る。残りはアメラの秘所を覆うパンティのみである。しかし、スポーツブラすら着衣の上から抜き取ったベンケーである。磔状態で腕を拘束されて、しかもミニスカート姿ではパンティを抜き取られることなど、あっという間にされてしまうに決まっていた。しかも下着にしか興味がないとは言え、大願成就の記念に犯される可能性すらある。それらを今のアメラには耐えて待つことしか出来ないのか。
「・・・・いや・・・イヤ・・・・嫌!! ロン・・・ロン! 助けて!! ロン! お願い・・・出てきて!」
突然アメラは何者かの名前を叫びだした。その時である。なんとしたことだろうか?アメラの腕に龍の刺青が怪しく浮き出たと思うと周囲は紅蓮の炎に包まれたのであった。(注2)
(・・・・・熱い・・・ロン・・・?)
閉じた目蓋を開いてみると炎を象った龍がベンケーに襲いかかっていた。さすがの怪人もこの異形の物を前にしては防戦一方である。龍の灼熱の炎に七つ道具を駆使して立ちはだかろうとするベンケー。しかし、宿主を襲われて怒り荒れ狂う龍を前にして次第に橋の袂へと押されていった。
やがて炎の彼方からアメラを捜し求める声が聞こえて来た。
「アメラさーん!」「アメラ将軍、無事ですかー!」「アメラーー!」
新手が来たと察知したベンケーは身を翻して河原へ飛び降り逃げ去った。
「た・・・・助かったぁ・・・・」
アメラは寸でのところで純潔を守ったのであった。
縛めを解かれて抱き合うアメラとラスケート。ほっとした表情の暗殺隊士達。事件はこれで終わったかに見える。だが、闇の向こうではまだ、この様子を怪人は覗い続けていたのであった。
「共和国正規軍将軍アメラか。我が修行最後の一枚、必ず頂きに参上する・・・」
(注1)共和国第9部隊アメージュ・ラズリ将軍のこと
(注2)アメージュ・ラズリさん作SS「楽しい一夜」参照
アメージュ・ラズリさんの協力に感謝します!
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