ベンケー再び

カーチャ・ボルジア

「お、お前はガイ・アヴェリで下着泥棒をしていたのではなかったのか?」
「帝国軍が首都へ侵攻したのでな。修行がやりにくくなった。それに拙者が取り残したパンティーは共和国軍の女性将軍のものだ。こっちへ向かった女将軍がいると聞いて跡をつけて参った。」
「それはアメラだ。アタシではない。」
「価値は同じ物であると存じ上げる。それに戦闘中の部隊からはパンティーを取れぬのでな。」
「几帳面そうで、大雑把な男だな・・・ 第一、この男を殺した理由がそれでは判らぬぞ。」
「理由はそなたなら判るであろう。口封じのためだ。」
「ドラゴン修道院にいったい何が関係するというのだ?」
「それを語れば口封じの意味がなかろう?」
「もっともだ・・・」
「では、そなたのパンティーを頂戴致す。既に1000枚のブラジャーは集め申した。パンティーは999枚。そなたのパンティー1枚で我が修行は成就致す。覚悟されたし!」
「こんな時にそんな事に付き合えるか! この変態坊主!!!」

 カーチャの服装はボルジア家に忍び込んだ時のビキニ水着姿ではない。皮の乗馬服にブーツを身につけている。しかも、乗馬服は上下が一体化しているので、完全に服を脱がさない限りはパンティーを抜き取れないはずであった。ともかくは、この場を脱出しよう。カーチャがナイフをベンケーに投げようとした瞬間にベンケーの手から何かが放たれた。鎖である。弧を描くようにしてカーチャの胸に投げられたそれは、あっという間に両腕を絡めとってしまった。これではナイフは投げられない。逃げようとして踏み出した足が掬われた。アメリアにもアメラにも使われたあの鳶口である。
 無残にも尻餅をついたカーチャの右のブーツに鳶口が忍び寄る。脱がされる!と思い、ブーツを守ろうとしては見たが、鎖で縛られた腕はブーツまで届かなかった。易々とブーツを脱がした鳶口が今度は裾から腿へと侵入してきた。冷たい感触に思わずカーチャは身震いをする。
「な、何をする!」
「ふっふっふ。そなたは今日は紐付きパンティーを着用しておるな。」
「何故分かる!」
 流石に999人ものパンティーを奪ってきたベンケーである。着衣の上からでも下着の種類を見透かしていたのであった。足を曲げて鳶口の侵入を食い止めようとするカーチャであったが、太股までの進入を許してしまえば、足を曲げる事さえままならない。ついに鳶口は腰骨まで到達した。恐るべきベンケーの妙技である。なんと、今度は蝶結びにしている紐を器用に解きだしたのである。
 身を捩って抵抗するカーチャであるが、鳶口にはまるで目でも付いている様に正確に結び目を捉えると、紐先を絡めて引き出した。蝶結びなので引く場所さえ間違わなければ、簡単に結び目は解ける。軽々とズボンの下のパンティーを解かれてしまったことにカーチャは唖然とするしかなかった。
 パンティーの紐を解き終わった鳶口は左のブーツを脱がしにかかった。逃げよう。立ち上がろうとしたカーチャの首に投げ縄がかけられた。首が締め付けられる。身体を前に出して、気管を確保しようとした刹那に今度は左足に足払いがかけられた。再び尻餅をつく間に左のブーツが抜き取られる。もう、どうしようもなかった。これで、左の裾からパンティーを引き出せばズボンを穿いたまま下着が奪われてしまうのである。だが、カーチャにはもう下着を守る術がない。
「お前はいったい下着を1000枚も集めてどうする気なのだ!」
 左の裾から侵入した鳶口がパンティーに達するのを少しでも食い止めようと足をバタつかせながらベンケーに尋ねて見る。
「よかろう。最後に教えて進ぜよう。ドラゴンでは修行を終えた者には大陸での政治への介入が許される。つまり謀略をしようと思えば、ドラゴンの権威と財力が後ろ盾をしてくれると言う訳だ。」
「どういう事だ?」
「例えばお主が忍び込んだボルジアの娘婿はドラゴンから出られたお方。」
「何だと!」
「お主は娘婿のアワー様がボルジアの当主になるために協力させられたという事だ。」
「では、サーネ暗殺の差し金はユリネーツではなくアワーだと言うのか!」
「アワー様はこれで、ボルジアを乗っ取る事が出来たと言う訳だ。おまけに反対派も合法的に抹殺してな。」
「反対派とはクギョーの事だな。殺したのはお前ではないか。」
「言った筈だぞ。お主のパンティーを奪えば、拙者も謀略家になるとな。」
「?」
「お主をこのまま帝国憲兵に差し出せばサーネ暗殺犯として処刑される。ついでにクギョー殺しの罪も増えると言う寸法だ。お前の申し開きなどに耳を貸すものはいないだろう。」
「き、貴様!」

 カーチャとしてはたまったものではなかった。このままでは下着を奪われた上に公開処刑されるのである。しかし、鳶口は徐々に腰へと近づきつつある。もうパンティーが奪われるのは時間の問題であった。ともかく、無駄であっても抵抗するしかない。腕を縛られ、首輪をかけられた状態であっても必死で逃げようともがいた。スカーフや肩当が身体から外れて床に落ちる。ベンケーはそんなカーチャの様子を冷ややかに見つめていた。
 ついに鳶口がパンティーを捕えた。後は引き下ろすだけである。ベンケーの腕に力が入る。一気に膝までパンティーが降ろされた。裾からは赤くて正面部分がシースルーになっている下着が見え隠れしている。膝を越えればあっという間に下着は裾から抜き取られるであろう。無我夢中でカーチャは暴れた。暴れた所で拘束から逃れられるはずもない。頭から緑色の髪飾りが床に落ちた。黒い刺繍があるカーチャがいつも身に付けている髪飾りである。だが、それを見た途端にベンケーの顔色が変わった事はカーチャには意外だった。

「お主、これを何処で手に入れた? これはノーザン家の紋章だぞ・・・」

(2002.12.14)


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