〜教官〜
アザゼル+鴉
「あそこだ」
俺はパンドラを連れCALCM教官の家に向かった。
「・・・・・・・・・何あれ?」
パンドラは恐らく仮面の下で呆然とした顔をしているだろう。
無理も無い.....教官の家は......
「実家が資産家なんだよ.......だから、これほどの敷地、アレほどの家が建っているんだ」
「マジ?」
「大マジだ」
教官宅の敷地は牧場がゆうに3つほど入る大きさ。
ま、これには色々訳がある。
「・・・・・・・・・・・・・」
俺も初めそうだったと言いたかった。が、カルコム・パール・ストリームと言う人物は想像以上の存在だった。
「パンドラ......何も聞かず走れ」
「ほえ?なんで?」
「良いから走れ!」
「えっ!? ちょ待って!」
俺とパンドラは全力疾走で牧場が3つほど入るほどの広さを持つ庭(ぉ を駆けた。
後方で.........爆音。
「え!? え!? 何!? 何なのぉ!?」
パンドラが疾走しながら聞く。
「だから、屋敷の中に入ったら教えるってぇ!」
爆音がだんだん接近して来た。
そして.........
「うっわーーーーーーーーーーーーー!」
すぐ隣で爆発。
「パンドラぁ! もう少しだぁ!」
「何処までよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「あのラインだ!」
俺の言葉に反応して目をこらすパンドラ。
パンドラの視線に赤い線らしき物が見えた。
「あれって........」
「単純にゴールライン!」
「なんじゃそりゃ!?」
「とにかく走れぇ!」
噴煙などで正面が遮られ超えた時。
すぐ目の前で爆発!
「ぬおおおおおおおおおおおおお!」
「うわああああああああああああ!」
跳びこむ姿勢でゴールラインを超える。
そして転げまわる。
多分、今まで走って来た道は穴ぼこ。
何時でも人を試す.....やれやれな上官だ。
「ぜー.....ぜー.....ぜー....」
「はぁ....はぁ......はぁ....」
お互い全力疾走で疲れ果てる。
すると
「は〜いお疲れ〜」
真剣に走って来た...いや、命がけで走って来た俺とパンドラの雰囲気を消す気の抜けた声がした。
「はぁ...はぁ....はぁ...誰?」
寝そべっているパンドラが聞く。
「こんな.....トラップを......作った....ちょう.....本人.....で.....会う....予定の.....カルコム....パール....ストリーム教官だ....」
流石の俺も途切れ途切れで言う。
「マジ?」
「大マジよ〜」
「教官......前よりヘヴィです....」
「そお? いやぁね、威力を確かめる為には色々やらなきゃならないし....それに、そのちっこいの誰?」
あ.....ある意味で禁句を....
「うっさいわぁ!」
パンドラが気力を振り絞って叫ぶ+立ちあがる。
「あっそ...言いたい事はそれだけ?」
簡単に流す。
「・・・・・・・・・・・【怒】」
切れた。パンドラが切れると俺だって手を焼くのに....
「はい、そこまで〜」
「あっ!?」
教官がパンドラの心臓部分にデコピンをし、パンドラを失神させる。
「教官....今日は真面目な話です。こいつ、パンドラにもクレア、俺自身にも関係のある事です」
俺も難とか立ち上がり教官に簡単な説明をした。
「そ....じゃあ、はこびましょうかね」
教官はパンドラを片手で持ち上げた。
俺より腕力は上かもしれない。
上には上が居ると言う事。
痩せ型の体なんだがな。
それから約一時間後。
「う〜ん」
パンドラは教官の豪邸の一室で目覚めた。
「ここは.....?」
「教官の豪邸の一室」
教官と言う単語に反応して
「はっ! アイツは何処!?」
普段くちにしそうも無い言葉を言いそうなので一言。
「パンドラ、言葉使いに気を付けろ。クレアの将軍になったら上官になる人だ。憶えておけ」
「う.....」
流石のパンドラも静まる。
「お目覚めかしら? お嬢ちゃん」
紅いコートに白いスーツと言うミスマッチな服装で現れる教官。
「私はお嬢ちゃんでは有りません! パンドラと言う名前があります!」
仮面を付けて表情が解からないが、多分我慢をしているだろう。
「威勢の良い事....ま、大方話は鴉将軍から聞いているわ。履歴書も無しに動ける?」
教官から将軍へ......滅多に無い事だ。
「肩書きなんて必要ない。戦場で戦えるかどうかと言う事が問題」
あえて冷静な口調で応じるパンドラ。
「正論ね。顔ぐらい見せても良いんじゃ無い?」
「嫌です」
即答。
自分が完全に信頼を置ける人では顔は見せない。それがパンドラ。
「別に見せる見せないは自由か....まぁ、良いわ」
将軍が腕を組み少々考え込む。
「決意は認めましょう。しかし、貴方の実力が知りたい。私と手合わせをしなさい」
「本気ですか!? カルコム将軍!」
カルコム将軍には戦場に出向かない理由がある。
それは人の血で激しく反応してしまうのである。
ただ単に狂気乱舞をするのでは無く、血の量で戦闘能力が大きく変わるのだ。
その力は人の領域を越えかねない。だが、それはあくまで昔の話。
今は血を見ても反応は普通の人並み。
だが、その潜在能力は高く、確かな実力を持つ。
それゆえ付けられた通り名は『奈落の死者』。
無論、これを知る者は数少ない。
過去に俺と手合わせをした時があったが正直苦戦を強いられた。
そんな将軍が親友であるパンドラと手合わせ。
正直、俺に止める権限は無いのだが.....
「鴉将軍、私は本気です。彼女の判断に委ねます」
「試合方式は?」
パンドラなら受けかね無い。それを周知で俺は審判役として対決を見守ることにした。
教官の自宅の裏庭は広い庭とは違い、薄暗く横に範囲が有る。
「試合方式は貴方が私に一つの傷でも負わせたら勝ち。負けは貴方が認めるまで」
「私は審判として判断を下す! 武器の選択は自由、試合....初め!」
パンドラの武器はスローイングタガー。カルコム将軍は素手。
素人から見ればパンドラが有利。だが、将軍は一撃で俺を仕留めれるほどの実力が有る。
ブランクはあるが.......
パンドラに再会したのが朝。
そして教官、将軍の元へ向かったのは昼過ぎ。
そして今.......
「はぁ....はぁ.....はぁ...はぁ....」
パンドラは片手を膝に置き、息を整える。
一方教官は汗を一つかかず悠然と立っていた。
パンドラはかなりのタガーを投げたが将軍の手刀によって斬り払いされていた。
人間には気と言う物がある。
一点に気を集め鋼を打ち砕くものにもなり、鋼鉄のような硬度も得る事が可能。
カルコム将軍は気を操る事が出来、鋼鉄の手刀でタガーを斬り払いしていた。
故に手には一切傷が無い。
「如何したの? 貴方の決意はそれだけのものだったの?」
「うっさい」
パンドラの言葉には力が無かった。
「そう、それで終りなのね.....残念だわ」
将軍が一気に距離を縮めパンドラに手刀を繰り出す。
「とどめ!」
もう駄目かと思った瞬間、俺の予想は大きく超えたものになった。
「なっ!?」
将軍の目の前には哀れみ満ちた仮面が現れた。
「こんな時に仮面が役に立つなんて......」
パンドラは仮面で将軍の視界を遮り、高い己の身体能力を生かし将軍の背後に周りこんだのだ。
「しまっ!」
慌てて振りかえる将軍。
だが、タガーはすぐ前まで来ていた。
「勝負有り!」
俺が叫ぶ。
将軍はタガーをやむを得ず掴み手から血を流していた。
すなわち、パンドラの勝ちであった.......
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