潤いと言う名の口論
アザゼル+鴉
俺はしばらく様子を見ていた。
口論をしている女性(約一名微妙)二人の様子を茶を飲みながら見ていた。
一人はカルコム・パール・ストリーム将軍。
もう一人はパンドラ。
パンドラは相変わらず仮面を付けての格好。
口論の理由は履歴書。
パンドラを正式にクレアの将軍にする為にはやはり履歴書は必要。
が、あのパンドラにまともな履歴書が出来るはずがない。
カルコム将軍は取り敢えず履歴書が必要の為何かと言って居るがパンドラは仮面に唾が付くのが嫌な為か前もって化粧(変装の)のしてある顔で再び口論を開始する。
んで俺が好い加減に言いたい事があったから言い放った。
「あのさぁ」
「なんですか!?」
「なに!?」
二人とも.........この顔は絶対に忘れん。
「口論する元気があるなら大人しくしてくれないか?」
二人が口論していた場所はカルコム将軍自宅の医務室。
人間二人が寝るのには丁度良い大きさのベット二つ間に挟まれて俺は読み終わってない普通の人が読まないような本を読んでいた。
「だって〜暇なんだもん」
既に将軍から教官に戻ってるし.......
「あまり眠たく無いし......」
ハァ.........どうして親友+上官なんだろうか........
「あの、ご主人様」
一人のメイド服を着た蒼い髪の女性が来た。
かなり広い屋敷のメイド十人衆の長のダナエさんが様子を見に来た。
「お夕食はいかがなさいますか?」
「そうね〜うん。まかせる」
「かしこまりました」
ダナエさんが背を向ける。
彼女の背中から黒い、漆黒の翼が生えていた。
「え........」
パンドラが驚いた表情で見る。
「さてと........ダナエさん。私も手伝います。ここに居たら鼓膜が破れますから」
遠回しにここに居るのが嫌と言う俺。
「では、お願いします」
実は今日はこの広い屋敷で働いている人達(ダナエさん以外)休暇を取っていた。
ので、事実上この屋敷に居るのは俺と教官とパンドラとダナエさんの4人。
見ての通り両手に華状態(パンドラ抜き)。
俺にはそんなつもりはない。最も両手にじゃない。片手(無論、ダナエさん)にが正しい。
俺の耳に再びパンドラと教官の口論の声が聞こえ始めた。
「全く..........少しは体を休めれば良いものを........」
「別に良いじゃないですか。ご主人様も御久方振りに話相手が出来たのですから」
「言われて見ればそうですね」
教官は一人の場合が多かった。
何も考えず外の世界に出たのだから。
例え家が資産家であっても、鳥かごで育てられたも同然なのだ。
故に時々外に冒険に出たりもしていたのだ。
だから表の顔と裏の顔が出来てしまった。
だが、教官はそれを包み隠さず実の親ではない両親に伝えた。
両親は束縛をしなかった。あえて、鳥かごから出したのだ。
そして再び外の世界へ出た。
そしてクレアに来て独りとなってしまった。
だが、翼在りし人族の黒き翼を持つダナエさんと知り合い、そして打ち溶け合った。だが、それでも彼女の心に潤いが無かった。
しかし、今パンドラと口論をしている。
それが彼女にとって何よりの心の潤いとなった。
今、カルコム・パール・ストリームと言う女性は満たされている。
束の間だと思うがそれでも少しでも長く満たされたいと思っている。
それが今の彼女の状態である。
「他人から見ればただの口喧嘩だけど、私にはとても楽しそうです」
「私からもそう....見えます」
ダナエさんもとても嬉しそうだ。
「好い加減疲れた..........」
「そうですね........」
長く続いた口論に終止符が打たれた。
「ふう.......楽しかった♪」
「え!? 楽しかった!?」
「だって.......ずーと、ずーと、一人ぼっちだったモン」
少女みたいな声で嬉しそうに言うカルコム。
「一人って........」
パンドラはいまいち意味を理解していない。
「あれ? カルコムさん?」
本当に疲れたのか無邪気な子供のような表情で眠っているカルコム。
「全く.......」
パンドラも横になり眠る。
「お食事を持ってまいりました」
ダナエさんと俺が料理を作って戻って見ると........
「如何しますか?」
「別に.........起こさないほうが良いかと」
偶然なのか二人は寝ながら手を握っていた。
そして、子供のような寝顔で........
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