将軍採用〜続・潤いと言う名の口論〜
語り手エリー
パンドラと鴉は執務室といった感じの所に通されていた。
簡素な作りの部屋で、壁の棚を書類と書物が埋め尽くしている。
今2人が座っているソファーや目前のテーブルも来客を迎える事より
多人数で仕事をする際に便利な事を重視してありそうな代物である。
それで何故、執務室と言い切らないのかというと
明らかに執務に関係なさそうな物がちらほらと見受けられるからである。
鎧・長剣を始めに様々な武装がある。全て実戦用といった風情がある。
あちこちに暗器を仕込んである鎧やら重心を細かく調整してある長剣が
ただの部屋の装飾と言い切るには無理があるだろう。
更には如何にも爆薬が大量に詰まってそうな爆弾が放置してある。
さすがに誤爆には注意してある事が分かるが、それでも異色過ぎる。
まあ、これらが全て装飾と言い切れそうな人であるのも事実なのだが。
あの試合(試験?)の後、(不覚にも)寝込んでしまった。
結局、その日(昨日)は教官宅に泊まった。
そして今日、長々と居ても悪いという口実で帰ろうとしたパンドラは、
鴉・教官の両名にしばき倒され、此処にいる。
パンドラの将軍就任の為に必要な作業をしなければならないからだ。
教官曰く、「今日中に終わるから明日には正式に将軍」とのことだが、
履歴もはっきりせず、素顔も見せない怪しい風来坊を如何にしたら
今日中に正式に将軍に出来るのだろうか?しかも独断で………
そんな事を考えながらパンドラは首を捻っていた。
隣では鴉さんがくつろいでいる。試しに質問してみる事にした。
それによると、
「教官には、独断で新規に将軍を採用する権利がある。
単純に権力も強いし、上からの信用もあるからな。」
「今まで何か問題にならなかったのですか? そんな事を認めてて」
「んー、まるっきり無かった訳じゃないが大事は無かったな。
将軍に採用するとは言っても書類上で他の将軍と同列になるだけで
その後は教官の権限も及ば無いし、教官自身も特別扱いしない。
取りあえず将軍に成れるだけで他は何もないし、
それなのにやっかまれたりする事もあり得る。
教官に認められる課程を考えれば得って程でもない。
だが少なくとも将軍には確実且つ速攻で成れる。
後はお前次第だろうな。頑張れよ」
「む、頑張ります。ご期待に添えるかどうかは分かりませぬが」
「・・・・・・・・・・・・・・何故、急に固くなる?」
更に暇つぶしに話していると教官が書類を抱えてやってきた。
個人用としてはかなり大きな机に書類を置き、椅子に腰掛ける。
更に幾つかの書類を取り出して広げる。
「さて、それじゃあまず形式的な事から確認していきましょうか」
そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結果から言うと、作業は余り進まなかった。
パンドラもなるべく協力したが、話せる個人情報が少なすぎた。
「手早く済ませましょう。時間を掛けても大して意味はないでしょうから」
少し口調や表情が厳しくなっている。
パンドラが個人情報を語らないのを少し非難しているらしい。
或いは、さっきの試験の事で拗ねているのか・・・・・・・・・・
ひょっとしたら偶然とはいえ昨日のアレで照れているのか・・・・・・・
「(だとしたら可愛いな)」ーとか、思っていると刃物が飛んできたりする。
ちょっと頭痛を起こしつつ説明を続ける。
|