邂逅(仮)〜続・『彼と彼女』〜II
猫狐
建物の中に入り、校長室へ向かう。何か妙なモノが偶に目に付く。
そもそもクレアの士官学校の制度についても奇妙な点があったので、
気になっていたのだが………………………質問してみる事にしよう。
……………………………………………………………………………
鴉さんから返ってきた答えを総合すると、この士官学校は、
「彼女が趣味で設立したモノであり、一般とはかけ離れた部分も多い」
との事だそうで、………………………………………説明の途中で、
怪しい単語(しかも危険な)を聞いた気がするので問い直す。
「鴉さん、今何て言いましたか?
最近耳が遠いのでもう一度仰って下さいませんか?」
「早々遠くなる様な耳かよ………………………まあ、いいや。
だからな、この学校は教官の趣味によるモノという噂があって………」
「いえ、其処では無くて、彼女(女性らしい)の趣味の部分…………」
「趣味」の部分で鴉さんがいきなり振り返る。こちらに顔を近づけて
「そんなに聞きたいのか、そーか、そーか、それじゃ仕方がない♪」
凄まじい『笑顔』(謎?)を浮かべながら、鴉さんが語り出す。
「教官の趣味はなぁ、昼寝と研究だ。研究の内容は様々だ。
爆薬を作って威力を試したりと危ない事も結構やってるようだな。
徹底した趣味人だから近寄り難かったりするが、お前と似てそうだし
すぐに気が合うと思うんだが、何か気になることでもあるのか?」
「確かに其処も気になりますが、私が言ったのは最後の所でして」
鴉さんが「停止」する。引き攣りまくった笑みを浮かべて思案している。
(もはや笑みといえないモノだったが〉・・・・・待つこと数十秒。
「…………………………………………………童貞狩り(ぽそり)」
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場が、凍りつく事、約数分…………………私たちは再び歩き始めた。
先程より空気が重い。鴉さんもやたら憔悴した感じがする。
「童貞狩り」という言葉の意味を幾つか考えたが、
やはりこの場合そのままに受け取るしかないだろう。
しかし、そうだとすると、………………………横の鴉さんを覗き込む。
前と雰囲気が少し違う。しばらく経っているので当然なのだが、
何より「初々しさ」なるモノが、無くなっている様な気がする。
「…………………………(振り向いて)………どうかしたのか?」
「………………いえ、………別に何でも……………先を急ぎましょう」
きっと色々あったのだろう。多分想像通りなら鴉さんは………………
「念の為に聞いておきますが、…………女性は大丈夫ですよね?」
「ああ、心配無い。教官の趣味はあくまで、童貞狩りだから」
ちょっと安心。さすがに両刀では無いらしい。
歩きながら仮面を付け、いつもの黒のローブと外套を羽織る。
暑いので他の装備は省略していつもより薄手のを着用する。
面倒臭いので、下は変装時の服装のまま表面だけ取り繕う。
「おい、…………その格好で行くのか?」「勿論♪」
鴉さんは身繕いをする私を呆れたような目で眺めていた。
「なんで、最初からその格好で来なかったんだ?」
「天下の往来を歩くには目立つでしょうこの格好は、
時期が時期だけに揉め事になりやすいかと」
「………………………………………まあ、正論か」
イマイチ納得していなそうな鴉さんと歩いていく。てか、広すぎ。
結局、今日は教官は不在だった。しかも、サボリ・・・・・・・・・・・・・・
「…………………………類は友を呼ぶって言いますしねぇ【嘆】」
「誰が友だ、誰が! 俺は変じゃないぞ」
「鴉さんが類ですよ」
直後、襟首を捕まれて投げられる。
昔から鴉さんは、私相手だと容赦が無い。痛い事は痛いのになぁ。
「よし、教官の家に向かうぞ。昼までには着くはずだ。」
「いきなり自宅に押し掛けるのは失礼では?」
「構うか!ほれ、行くぞ」「はぁ…………………」
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