シチルにて〜お萩戦争〜 前編

パンドラ

某日 シチル戦線 聖蓮2野営地にて

今日は晴れていた。何処までも澄み渡る様な空、白い雲
しかし、聖蓮の兵士達は沈んでいる。先日の一騎打ちの所為であろう。
一騎打ちにおいて、軍師である丙さんが挑まれ、これに破れた。
彼女が負傷した為、聖都に送り返さねばならなかった。
彼女に頼っていた部分は大きい。結果として聖蓮2の作戦遂行能力は激減した。
このままなら遠からず、壊滅か撤退だろう。何の成果も上げぬまま

・・・・・・・・・・正直悔しさでいっぱいだ。


私は何故此処に居るのだろう。
戦争に参加してまで・・・・・・・




何故・・・

                         ―――――――――――パンドラの手記

指揮官たるパンドラは野営地を留守にしていた。
他部隊との打合せに自ら赴く事にしたのである。
兵士達には、待機が言い渡されている。
暫くは敵襲の心配もない為、最低限の警戒だけしていれば問題無かった。
兵士達はそれぞれ自由に過ごしていた。

天幕の中で部隊長級の兵士達が話し合っている。その顔は一様に暗い。
「どうなるんだろうなぁ、俺たち」
「さあな」
「生きて帰りてえけど、…………ただやられっぱなしもなあ」
「言うな、皆同じなんだから、特にパンドラ将軍には絶対言うなよ。
一番突撃したくてウズウズしてるんだから。後々を考えて黙って耐えてるけど、
俺たちも同じ気持ちだって知ったら、作戦無視して丙様の敵討ちに行くだろうから」
「パンドラ将軍かあ(空を仰いでしばし沈黙)あの人本当に将軍か?謎ばっかりで」
「指揮も苦手だしなぁ…………………そもそも嫌いみたいだし。人を率いるの」
「何故かやたら料理好きだし、仮面付けてるし、外したと思ったら素顔じゃないし、
冷静かと思ったら何かとボケるの好きだし、ふらっと消えたら国外に遊びに行ったり」
「何だかなぁ」


そのしばらく後、伝達兼補給部隊に同行していたパンドラが帰ってくる。
パンドラは数十人の兵士と一緒に大荷物を広げる。中身はお萩だった。

「(口を開けてただただ、呆然としている。)どうしたんですか、それは?」
「結城さんが皆に御馳走しようと大量に作ったそうです。配るので手伝って下さい。」
テキパキとお萩を分けていく。あっという間に全ての兵士達にお萩が配られる。


その後、天幕の中に部隊長とパンドラが集う。目前の机には彼らの取り分がある。
受け取ったお萩が多すぎたので、かなりの量をクレアに送って置いたのだが、
(民間人にも配る事になっている。それでも余りそうだが)かなりの数が残っていた。
当然、割り振られた量も半端では無い。一日お萩で過ごせる位はあった。
様々なお萩が此処にいる二十数名の分だけで、合計千はあるのだから

「じゃあ、頂きましょうか……(両手を合わせて軽く礼)頂きます。」「頂きます。」
何人かが速攻で口に入れる。何人かがそのまま動かなくなる。
彼らは少し停止した後、我に返って周りと取り合いを始める。
「むう、じゃあ私も一つ…………〔ぱく〕………〔ぴき〕」
パンドラが音を立てて停止する。その様に兵士達は取り合いを止めて何事かと見守る。

{ちなみに今のパンドラの変装は、「20代後半位の女性」(肩までの黒髪)
首から下はいつもと同じ黒のローブ+外套}

(2002.09.23 / 2002.09.28)


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