パンドラの一日 〜早朝〜
語り手エリー
宿舎に戻って来た。
パンドラは兵士達と同じ宿舎で暮らしている。
そこそこ広い部屋だがさほど上等ではない。
さすがに下級兵よりはマシではあるが、
広さとしっかりした作り以外には何も特徴がない。
強いて言うなら火気の使用が許可されている位。
兵士達に示しが付かないとの意見もあるが無視。
代わりに大部屋を一つ借り切っている。
建前上、「執務室」と「寝室」と言う事になっている。
実際は違うが、一応上層部は丸め込んだ。
「寝室」に入る。中は家を凝縮した様な感じだった。
目立つのは部屋の3割を占領する調理場・・・・・・
仕込んでおいた食材の山を端から調理していく。
さっきまでの鍛錬よりこっちの方が真剣な気がする。
何か間違っている気がするが楽しいので良し。
料理が全て完成する。
手はそこそこ込んでいるがどれも「粗い」感じがする。
だが手抜きはなく、味はそれなり以上になっている。
野菜を中心に沢山の食材を使った料理の数々。
特筆すべきはその量である。20人分は軽いだろう。
「まあ、日頃世話になっている人にも分けても良いし」
パンドラは気楽に構えていた。
そして食事を始める。
パンドラの前には作った内のほんの僅か。
「いただきます。」
半ば条件反射で頭を下げ、食べ始める。
そして十数分後。
パンドラが作った朝食は殆ど食べ尽くされていた。
「うーむ、やっぱり運動した後は食欲が違うな」
パンドラは基本的に小食である。
燃費効率が良いのか僅かな食事で普通に生きていける。
だが、偶に異常としか言いようのない食欲を発揮する。
既に残っている料理は、他人に分けられる程はなかった。
「まあ、しょうがない。
腹六分目が基本だったが、そんなに守ってる訳じゃないし」
そう言って、残りも食べ尽くす。
食後は、精神的にノンビリしながら過ごす。
ふにゃけた顔や思考を余所に身体はテキパキと動いている。
まるで脊椎反射の如く後かたづけを済ましていく。
日が完全に上りきった。
片づけを終えたパンドラは、昨日制作したデザートを食べていた。
新しい味に挑戦した「羊羹」・・・・・・・・出来はなかなかの様だ。
「もうちっと甘い方が良かったかな?」
食べ終わった後、残りの羊羹を抱えて部屋を出る。
今日は人と会う予定が多い。手みやげ位にはなるだろう。
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