モンキー・ラヴ・ダンス(vi)

アオヌマシズマ

  【今、そこにある風景  続き】


彼とイワン、ほぼ同時にため息をつくようにコーラスで
「努力するしかないか・・・」

続いてイワンが
「な、何を」
と問い掛ける。
しばし訪れる沈黙。

KOされるように倒れ込む二人。

 「ケケケ・・・」
含み笑いをする「彼」。

イワン、自分を励ますように大きな声を出して言う。
 「士官学校入れば何とかなると思ってたけどダメだよ。甘かったよ。
  なんとなくやってりゃ、その内有名武将の首取って人生一発逆転・・・
  とか考えてたけど。
  このままじゃ卒業すらできないよ」

 「イャイャイャ、イィヤイヤイヤ、今更悩んだって遅かろー・・・
  タイムオォバァなんじゃ・・・
  齢17、人間もう変われないよ・・
・   成し遂げている人間というものは、相応の時期から
  相応の努力を積み重ねているものなのだ。
  勝利とは偶然ではなく、必然の積み重ねの先にあるもんなんだよ。
  世の中を見てみなさい。自分より年下の人達が大活躍中じゃ・・・
  お主はいくつじゃ・・・
  もうちょいでグッバイティーンじゃろう・・・ゴホゴホ・・・」

 「大丈夫かい、爺さん。先はまだまだ長いらしいよ」
イワン、咳き込みながら返す。

 「でも今からやり始めるしかないんじゃないのかなぁ」
 「よ、養蚕?」
 「虫、触れる?」
 「む、無理・・・」
 「ダメじゃん」

彼、思いきり畳に手を突き叫ぶ。
 「だ、ダメだぁー」

たまらず嗚咽を漏らす。
 「エ、エグ、ウウウゥゥ・・・」

イワンが合いの手を入れる。
 「お手上げだね」

 「四面楚歌の最中に自分も楚歌歌って五面楚歌にしちまいたいっていう気分だねハヒフヘヘヘ・・・」
 「もう儚むしかないのかねぇ」
 「かねぇ・・・」


2人を映しながら
画面、フェードアウト


つづく

(2002.09.15)


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