モンキー・ラヴ・ダンス（xi）『あれは事故だったので』

アオヌマシズマ

少年イワンは、ある違和感を感じていた。

スケキヨの様子がおかしい。

友人・・・と言うより
お互い他に拠り所が無い。
だから仕方なく手を組んでいる。
ただそれだけの腐れ縁。言うなれば負の運命共同体。
彼は彼なりに、その歪んだレンズでもって
スケキヨを『信頼』していたわけだ。（悪い意味で）

「こ、ここ、このところ、アイツの動向がおかしい！！明らかにオカシイ！！
　そもそも、引き篭もりの分際で外出が多すぎる。
　お、おとなしく家ん中でウジウジ自己嫌悪してりゃいいんだよ、お前は！！
　きょ、今日こそ問いただして真実を突き止めてやるぞ」

仕官学校生専門アパート。
１階の一番左がスケキヨの部屋だ。
イワンが、ドアノブに手を掛けたその瞬間・・・
ジャ、ジャ、ジャーン、ジャッジャッ、ジャジャーン
耳を突くディストーションのかかった音。
　　　　もしやあああ！！！！
イワンが思い慌てて入ってみるとそこには・・・
　「・・・なんだおめーか。久しぶり」
　「キキキキキ、君！！！！それはなななな何だね！！！！」
動揺を隠せないままイワンが問いただす。

　　　もんきー・らぶ・だんす（サルの求愛ダンス）　其の壱拾壱
　　　　　　　　　『あれは事故だったので』

スケキヨ「あ？見ての通りギターだけど」
イワン　「な、なんでそんな身分不相応なモノ買ったりしたんだい」
スケキヨ「俺もあれから色々考えたんだよ。
　　　　　今やれる事をやろう…ってな。なんちて」
イワン　「い・・・いくらぐらいしたぁ」
スケキヨ「全部で４・５万ぐらいかな。
　　　　　ま、ちょい高めのオモチャ買ったと思えばいいんじゃねぇ？」
イワン　「・・・・・・・・！！！！！！！！！！！（。□。）
　　　　【追い越されたという巨大な文字が、背景に出現】
　　　　　ふ、ふぅーん、もったいないねぇー。金をドブに棄てたねぇ」
スケキヨ「あ？　いきなり何だよその言い草。ヒガんでんのか？
　　　　　もうダメだの今更手遅れだの、負け惜しみ言い続けてるよか
　　　　　よーーーーっぽど前向きだと思うけどな」
イワン　「な、なにを！！！
　　　　　だ、大体なんだい。よく見たら君！！
　　　　　服装も随分オカシナ事になってるじゃないか。
　　　　　なんだい！？そのツンツンした髪は。
　　　　　なんだい、そのジャラジャラした物体は！！」
スケキヨ「何って・・別に？」【煙草に火を付ける】
イワン　「ああああ！！煙草なんぞ吸いやがって！！？
　　　　　そ、そんなの身体に悪いだけなんだぞ！！！
　　　　　肺がんになってしまうぞ！！
　　　　　進んで体内に毒物取り込みやがって！！
　　　　　馬鹿のやるもんだ、そんなのは！！
　　　　　オレは吸わない！！　絶対吸わないぞ！！
　　　　　オレは貴様等凡愚共とは違うんだ！！　特別な存在なんだ！！
　　　　　うきーーーーー！！！
スケキヨ「あー・・・ちと静かに喋ってくんね？
　　　　　隣から苦情来るだろ？ここボロっちいんだからさ」
イワン　「なんだいなんだいなんだい！！
　　　　　手始めに人気バンドをコピーですか。
　　　　　で、あと３年ぐらいでインディーズデビューですか。
　　　　　そんでもうモテまくりですか。肉棒何本あっても足りませんか！
　　　　　キャー、ＳＵＫＥＫＩＹＯよー　ハメてハメてーですか！！
　　　　　あんた、ファッションがマズってただけであって
　　　　　顔はまぁ、元々他の人よりいいかも知れないからね！！」
スケキヨ「盛り上ってるところ悪いけどさ
　　　　　俺ぁ別にそんな大それた事考えちゃいないよ。
　　　　　せっかくの学生生活だ。
　　　　　ただ、楽しくやりたい。そう思ってるだけだよ」
イワン　「ホントカナー、もう色々考えちゃって妄想がハチキレそうなんじゃないのォー
　　　　　あ！！　ひょっとしたらボキみたいな珍種を
　　　　　もの珍しそうに観察して観察日記でもつけてるんじゃないの？
　　　　　ナナナナなぁーいの？」
スケキヨ「・・・コラ。あんま調子コいてんじゃねーぞ」
イワン　「うひぃっ！！

立ち上がって肩を掴むスケキヨ。
怯えたイワンは後ろにつんのめってしまう。
と同時にリュックの中身（エロ美少女漫画）が飛び出す。

スケキヨ「・・・・・」
イワン　「み、み、見るなよぉ〜
　　　　　ぼ、ぼぼぼぼ、ボキの宝だぞぉ〜」

畳の上に散らばったエロ本を掻き集めるイワン・・・
その様子を複雑な表情で見守るスケキヨ・・・
天国と地獄を具現化したかの様な両者が、其処に。

つづく