モンキー・ラヴ・ダンス(xiii)『小麦畑の見える丘で』

アオヌマシズマ

帝都の夕暮れ −−イワンの場合−−


スケキヨの家を飛び出す時にぶつけたのだろうか。
膝の辺りが擦り切れている。
帰り道。
泥に塗れた制服を見て、イワンは惨めさの余り涙も出なかった。

 「・・・愛、なのかねぇ。やっぱり」
最早、彼の口癖であった。

 「ヒトを変えるのは何時だって異性だよ。
  ・・・こ、これがあいつにとってもいい転機なんじゃないかね。
  このままオレみたいのと居ても腐って行くだけだし
  実はあいつ、ルックス自体はそんなに悪くなかったもんな。
  ふ、雰囲気やファッションがマズってたってだけで…
  カッコよけりゃどんな趣味もまかり通る、それが現実さ。
  ちゃんと元の世界に帰してあげないと」

・・・以外に寛大?
否。
こうやって悲劇の主人公を気取る事で、悦に浸っているだけ。
まぁ、精々その程度のオトコっちゅー事です。

 「ぼかぁ、一旦『離れた』人間でも非難はしないよ。
  ただ、もしも、もしもだよ。
  君にその気があるならいつでも歓迎するよ・・・。
  その、今持ってるクダラナイ怒りやら疑問やらも捨てちまいなよ。
  楽に・・・なれるよ・・・」

イワンは再びとぼとぼと歩き出した。
負け惜しみだけは言いたくなかったから。

         ・
         ・
         ・

「齢17、人間そう簡単には変われない」
スケキヨの持論だ。(だった)
しかし彼の、あの変貌振りはいくらなんでも『異常』。
あれほど大きな発想転換に至ったのは?
何故?
キッカケは?
何?
何が起こった?
エ・ラヴェールと遊びまわっていただけでああなった?
否。
それだけではない。
何か、何かがあった筈だ。
彼の身に、決定的な何かが起こったのだ。
それは一体?

・・・話は再び『エ・ラヴェールとの出会い編』に遡る。



つづく

(2002.09.25)


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