モンキー・ラヴ・ダンス(xxi)『Punk meet punks』

アオヌマシズマ

此処、アレシア大陸においても
音楽界にはカリスマ、天才と言われる人間が数多く存在する。
ライヴハウスに集う人々は、盲目的に『彼等』を信奉した。
だが実際のところ『彼等』の多くは、なんのこたぁ無い普通のヒト。
情報量の少なさが、返ってイメージ肥大の要因を作り
演出された人物像が等身大以上に拡大、伝達され続ける。
言ってみれば、妄想の産物に過ぎなかった。
ライヴハウスというのは、束の間、そうした
『単なる石ころ共』が『至高の宝石』へ化けていられる空間。
どんな糞人間だろうと輝ける場所なのかもしれない。

      
   〜(・ω・〜)   ACT 21   (〜・ω・)〜
       ж PUNK MEET PUNKs ж

少年イワンの、ライヴ【Monkey LOve Dance】レポート

ライヴ会場『カルカシアGARAGE』に到着したのはPM6:40。
ロッキン兄ちゃん、姉ちゃんがわんさか群れていやがる。
「・・・コスプレイベント?」
この発想・・・彼の育った環境を考えれば、致仕方なし。
言うまでもなく少年イワンは、おもいっきり浮いていた。

意を決し、薄暗い階段を下りて扉を開ける…。
        もわっ・・・
煙草やらヘアスプレーやらが入り混じった臭い。
低い天井。独特の空気が漂う。
『うわ。に、逃げたい!!この場にボキは相応しくない!!
 い、いい、イジメを受けてしまう!!』

すぐに危機感を感じたイワン。だがしかし!!彼は誓ったのだ。
スケキヨの晴れ姿を見届け、こう言ってやるのさ。
「ふふん、大したことないね。これが君の新世界ってわけかい?」

スケキヨらの出番が近づく頃には
ライヴハウスはほぼ満員の客で埋まり始めていた。
そんな中での少年イワンの肩身の狭さ・・・想像するに余りある。
「おのれスケキヨ・・・!!」
被害妄想は膨らむ一方ですな。
と、その時。客席が更にざわついた!!
見ると暗闇の中、ステージに現われて楽器を手に取るスケキヨ達の姿が!!
照明が灯され、ギター(スケキヨ)とベース(謎の兄ちゃん)が
ユニゾンでイントロを爪弾く中、エ・ラヴェール(ヴォーカル)が
マイク(あるかどうか知らんが)を握り、唄い始める。

「・・・レッツパーティ?」

「YEAAAHHHHHHHHHH!!!!!」

ステージ上から、暗い客席はほとんど確認できまい。
『ボキの姿など、スケキヨの眼中には無いと?
 この状況は、アイツとボキのレベル差を表してるってのか?馬鹿な!!』
ダメ思考が派生する。
『ウケケケ。こ、こ、こいつらこんなに興奮しちゃって。ばかじゃないの。
 あ、あいつはな、元オタク野郎なんだよ。ボキと同じ底辺出身者なんだよ!!
 まんまと騙されやがってロッキン馬鹿共。ザマーミロ!!』
・・・と、無駄な抵抗(脳内で)を試みるが、やはりというか、ソッコー鎮圧。
『あぁ、すごいね。努力してたんだね。
 悔しいけど、アンタカッコイイよ。輝いてるよ。
 本当に・・・君は・・・
 い、いっちゃったんだな。別世界に・・・さ』

生ライヴの圧倒的な迫力の前に、少年イワンはなす術もなく・・・
愕然と、立ち尽くしていた。
スケキヨやエラヴェだからこそ出来る、儚く、咽び泣く様な、それでいて力強い演奏。
客席は興奮の渦に包まれる。
ライヴ『モンキー・ラヴ・ダンス』の盛り上がりは、今、最高潮に達していた!!

  俺にとって音楽は、コンプレックスの表現手段。
  駄目さ加減を訴えてナンボなんだよ。内に溜め込んだ毒素をぶちまけるのさ!!
  あの四年間は無駄じゃない。準備期間、だったんだ。
  もうそれぐらいしか言えねーっての。

 
  結局この後活動は行き詰まり、バンドはあっけなく解散。 
  それがキッカケでスケキヨとエ・ラヴェールの仲も悪化する。
  「もう・・・あたし、君の事わかんない」
  彼女の別れ際の言葉だ。
  それでも、人生は続く。
  曲がりなりにも士官学校卒のスケキヨだ。
  気が付けば出世コース、副官着任。そして現在に至る。
  彼は今も独り、ギターを続けている。
  あの日々を思い描きながら・・・
            
           ・
           ・
           ・          

ライヴ会場を後にする1人の少年。

   「・・・・・・・・・・( ==)」

ふらふらとした足取りの
『彼』の虚ろな瞳には
確かに、何かが、宿っていたと言う。

つづく

(2002.10.15 / 2002.10.21)


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