モンキー・ラヴ・ダンス(xxiii)『イワンの馬鹿』

アオヌマシズマ

自分が傷つくのは嫌。
だけど相手を傷つけるのは平気。
それが女という生き物。



        完結編『イワンの馬鹿』
          肉無き君
                 
少年イワンは考える。
デートってぇもんは
好きな娘と一緒に『退屈でツマラナイ現実世界』から離れ
そりゃあ楽しい『桃源郷』の様な一時を過ごせるイベント
・・・の筈。
だが、実際、案外あっけないもんだ。普通にツマラないな。
何ゆえに『その他大勢の皆様方』は、こんなモンを好き好んでやりたがる?
理解不能だね。まったくYO。


喫茶店を出た頃、辺りは既に夕闇に包まれていた。
カノジョが「公園へ行こう」と言ってくる。
特にアテも無いのでそうする事にした。
その道すがら、少年イワンはある事に気付く。
『・・・顔が、薄れ始めている・・・?』

程なくして、2人は公園にたどり着いた。
小奇麗なベンチに並んで腰掛ける…。
他のベンチでも数組のカップルが談笑していた。

 「きょ、今日は楽しかったね・・・」
 「そう、まぁ楽しいことは楽しかったけど、私達表面上のことしか話してないよね」
 「え。・・・いいんじゃなのかな。せっかくのデートで
  糞真面目に人生論語り合ったってしょうがないし。」
 「ううん、そうかもしれないけど、あたしはあなたのことが知りたいと思う」
 「でも・・・ボキは君のこと全然知らないんだ。
  君のその姿しか・・・さ。
  ねぇ、しなくてもいいじゃないか。こんな話。」
 「・・・出来る時にしときたいから。」
 「そう言われても何を話したらいいか・・・」
 「じゃああたしが質問してあげる」
 「うん」
 「あなたは今、あたしが好き?」
 「まあ、うん・・・そりゃあ・・・ねぇ?」
 「それはあたしもうれしい。けどね?」


 「あたしね、存在しないの。」


 「え、えと。あの、なんだ・・・」
 「あたし、名前無いよ。」
 「あ。そうだったね。うん。ゴメン。
  それじゃあ・・・ええと、マヤなんてどうかな?
  ボキの大好きなギャルゲーのキャラクターから取ってみたんだ。す、素敵だろ?」
 「そういうツマンナイモノから引用した名前は、欲しくないな」
 「そ、そぅ・・・」
 「まぁ、それはいいけど・・・許してあげる。
  あなたさ、いい歳して恋愛経験ゼロでしょ。
  理由わかる?そう、あらゆる意味で弱いから。
  例えば、周りのせいにしてみても、そんなの言い訳にしかならない。
  自分でもうすうす気が付いてる。ねぇ、そうでしょ?」
 「う、うん・・・まぁ・・・」
 「そりゃそうよねぇ。あたしはあなたが創ってんだから。」
 「う・・・」
 「・・・なんかイジメてるみたいでごめんね」
 「ねぇ。やっぱこういう話はヤメにしない?」
 「ごめん、つらいかもしれないけど、ここで聞かなきゃ・・・
  もうそろそろさ、あたし、消えちゃうの。
  あなたのイメージもおぼろげになってきてる。
  だからさ、今のうちに話しておきたいことがあるの。だからガマンして、ね?」

24へつづく

(2002.10.27)


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