モンキー・ラヴ・ダンス(xxvi)『イワンの馬鹿』

アオヌマシズマ

        完結編・イワンの馬鹿
         それが、君の望んだ世界(続き)

イワン 「うん、うん。すまなかったね。途中で寝たりしてさ。」
スケキヨ「イヤ、もういいよ、気にしなくても。
     それにしてもさ。今、周りで青春を謳歌している青年達に比べて
     ウチらのこの有り様は何なんだろうねぇ。
     毎日引き篭もって、惰性で時間を浪費する生活・・・。
     こんなんじゃあ泣いても笑っても、三流止まりは目に見えてるよ。
     思い返せば、これだけの時間がありゃ何かしら成し遂げられたのかもしれないねぇ・・・
イワン 「あぁ、またいきなりネガティブシンキンだねぇ。
     そりゃあ自分らは来年卒業だけど、まだまだ時間はあるじゃないか。先は分からないよ。
     それに『あの人達』は『あの人達』で大変なんだよ、色々と。」
スケキヨ「色々?」
イワン 「あぁ、色々さ。
     そりゃあ自分も、士官学校入りたての頃はさ・・・
     ガクセイってのは『彼女』ってオプションが標準で付いてきて
     まんざらでもないパラダイスを過ごせるモンだ、そう思ってたけど…今となっちゃあねぇ。
     あぁ、でも、もしも。もしもだよ?この学生時代にさ・・・
     自分の『半身』とも言えるぐらい、イイ娘に出会えてたら
     とても充実した数年間になってたんじゃないかなぁ・・・って。しみじみ思うね」
スケキヨ「半身?? プッ。んなの居るわけねーじゃん。貴方、虚構と現実の区別ツイテマスカー?
     人間、生きるも死ぬもただ独り!! それが真理さ。
     そもそも、オンナノコと知り合える『チャンス』自体与えちゃ貰えないんだぜ。ウチラは。
     神サマに嫌われちまったのさ・・・。
     それにだ。仮にオンナが出来たとしよう・・・一体ナニをどうしようってんだい?
     今流行りの癒しか。あ?
     それに関しちゃ、もうアニメの中のカワイコちゃんとヨロシクしてるからもういいじゃないか!」
イワン 「あぁ、そうだね。ボキ達には
     『ロリロリフェイス』に『ムチムチボディ』
     『コッチが何もしなくたって無償の愛を捧げ続けてくれる』エンジェルたんがたくさんいるね。
     も、萌え〜〜。ウケケケケケ。」
スケキヨ「昔からさぁ、運命の人と繋がってる赤い糸なんて話があんでしょ。
     んなもんあったらこんなとこでこんなクソ話なんかしてないっつーの!!!
     オンナと風呂入ってなんかモジモジしてるね!」【体をモジモジくねらす】
イワン 「んんん? ・・・まぁ、ああ、うん、そうだよ、そうとも、その通りだよ。
     な、なーにが赤い糸だよ!ンなもんあったら戦争なんか起きないっつぅの!
     ファッキンだね。えひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

下品な笑い声を上げる二人・・・と、その時。
少年イワンは、左腕が何かに引っ張られるような感触を覚えた。

イワン 「んん? な、何だ・・・」

左腕を見ると・・・なんと!!
赤く、細長い糸が結びついているではないか!

イワン 「ウンンンンン!? イト、イトイト、糸が、糸が・・・」
スケキヨ「え、『イトガ』?
     なんだいそれ? 新しいオタク用語かい? それともなんかの差別用語?」

・・・どうやらスケキヨに糸は見えてないらしい。
先っぽを見ると、玄関の外へと続いているようだ。

イワン 「アァ・・・その、なんだ。ちょ、ちょっと用事を思い出したからこれにて失礼するよ。」
スケキヨ「・・・どうしたんだい?そんなに慌てて」
イワン 「イ、イヤ、どうってコトは無いよ。それじゃあまた今度ね・・・」

言い終わるやいなや。
少年イワンは、リュックをガバッと鷲づかみにし、赤い糸の先を追うのであった・・・


つづく

(2002.11.04)


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