本編(15)
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本編(17)
(16)
4999年3月17日 10:40
シルクス帝国首都シルクス、2番街、シルクス警視庁4階、警視総監秘書室
キロス・ラマンの執務室に集められた3人の男達は、一様に落胆した表情を顔に浮かべていた。ザールと思われる人物を逃がしたことよりも、シルクス帝国下での活動では初めての殉職者が出てしまったことが、彼らの心に大きな痛手として残されていた。また、注意力と冷静さが備わっていれば回避が可能な悲劇であったことが、自責の念を更に強めていた。
「これを受け取って下さい」殉職者の直属の上司であったニベル・カルナス警部補が前へ歩み出て、ラマンの机の上に羊皮紙の書類を置いた。その冒頭には赤インクで「辞職願」と書かれていた。
「どういう意味だ?」ラマンは辞職願に一瞥した。
「そこに書かれている通りです」
ラマンは辞職願を手に取ると両手で丸め、机の上に置かれていた「棄却」の箱の中に放り投げた。「辞職は認めない」
「ですが、部下に殉職者を出してしまったことは私のミスです。どのような処分──」
ラマン秘書官は手を上げてカルナスの言葉を止めさせた。「謝罪の言葉は聞きたくない。それに、謝罪の意味で辞職したいのならば、それは絶対に認めないぞ」
サーレントが横から口添えした。「しかし、彼は自分の責任を償おう──」
「黙れ!」ラマンは拳を机に振り下ろした。口を開こうとしたカルナスとサーレントは硬直したように動かなくなる。「同じことを何度も言わせるな! 謝罪や弁明をする暇があるなら、もっと有意義なことに時間を使え! 『誰が悪い』よりも『何が悪い』を考えねばならんだろうが! 謝罪だけして辞表を出せば全てが片付くとでも勘違いしたのか!? お前達2人はそんなことも理解できないほど無能で愚鈍だったのか!?」
ラマン秘書官からの激しい叱責を聞き、サーレントとカルナスは心の底から震え上がっていた。中間管理職である2人にとって、上司から怒られることは日常茶飯事であり既に慣れていたが、組織の最高位に近い人間から露骨な叱責と非難を浴びることは、何度経験していても慣れることはだけは絶対に無かったのである。一種の恐怖に慄いていたのはデニムも一緒であったが、彼自身がラマンの叱責の対象になっていなかったために、その心の中にはまだ余裕が残されていた。
「繰り返し言うぞ」ラマンは普段よりも低い声で言った。「辞表は受理しない。殉職者に対して責任を感じることは人間として理解できることだし、私も心を強く痛めている。しかし、辞職では責任を取ったことにはならないぞ。責任を感じているのなら、最低でもザールの逮捕までは警視庁で働いてもらうぞ。それが本当の責任の取り方であるし、亡くなった捜査官への供養にもなる。とにかく、辞表は絶対に受理しないぞ。分かったな?」
「はい」サーレントは小さな声で答えた。
「…………承知致しました」カルナスは不承不承といった表情浮かべながら頷いた。
「……さっきは無能呼ばわりしてしまいすまなかった。捜査には君達の能力と怒りが必要不可欠なんだ。亡くなったリデル・ベント捜査官に対する責任は、ザールの逮捕という形で果たしてくれ。頼むぞ」
「今の御言葉、心に刻み付けておきましょう」サーレントが応えた。
「では……やっと本題に入れるな」ラマンの顔に事務官としての冷静さが蘇った。「君達3人がザールと思われる人物を追跡した一部始終を説明してくれないかね?」
説明を行ったのは、3人の中で最も冷静さを保っていたデニムであった。ザール(仮)との最初の遭遇や殉職者が出た場面など、デニムが居合せなかったところは2人の警部補が代わりに説明を行った。デニムと警部補達による説明は約30分間続き、その最後はデニムが締めくくった。「──以上が事実関係の全てです。これでよろしいでしょうか?」
「ありがとう。……で、イングラス事務官はこの悲劇の原因をどう考える?」
「完全な私見ですが、よろしいのでしょうか?」デニムは躊躇いがちに訊ねた。
「ああ。構わん」
デニムは一息入れてから言った。「最大の原因なのは、言うまでも無いことですが、警視庁の捜査員に攻撃を加えたザールらしき人物の行動です。彼が我々を避けたがる理由は、現時点では全くの不明です」
「これは捜査を待たないといけないな」ラマンが言った。
「はい。続いて、警視庁側の犯したミスについて述べたいのですが……よろしいですか?」
「そうだ。『何が悪いか』が重要なのでな」
「分かりました」デニムは3人の顔を見回してから言った。「複数のミスが存在します」
「どういう意味だ?」サーレントが訊ねた。
「順に行きましょう。まず僕の場合、相手がポケットの中に凶器を忍ばせている可能性を無視し、不用意にザールらしき人物に近付いたことが最大のミスです。あの時は、彼が手に持っていたのが携帯用のダガーだったので事無きを得たのですが、他の凶器を忍ばせていたり刃に毒が塗られていたりしたら、僕は間違い無くあそこで殺されていたはずです。それから、ザールらしき人物を挟み撃ちした時、サーレントさん達4人は加勢を呼ぶだけの余裕があったと思います。少なくても、集まりつつあった野次馬に警告を発し、警視庁から増援を呼ぶよう野次馬に頼めたはずです。失礼ですが、それをなさいましたか?」
「……いや」サーレントが声を出して答えた。カルナスは無言で首を横に振る。
「それからラマン秘書官、ザールを取り逃がしたことに関しては、閣下にも責任があります。失礼を承知で申し上げますが、ザール発見の第1報を受けた時点で、直ちに警視庁内の残余人員を8番街に投入すべきではなかったのですか? こうすれば、殉職者のほうはともかく、ザールを取り逃がす可能性はそれなりに減っていたはずです」
「様子見を決断されたのは警視総監閣下だ」ラマンはそう言って事実関係を話した。
「……それならば、警視総監閣下の御判断も誤っていたことになりますね」
「…………」ラマンは返答しなかった。
「最後になりますが、亡くなられたリデル・ベント捜査官──彼もミスを犯しています」
「何がミスになるんだ?」カルナスが訊ねる。
「サーレントさんが2回警告したにもかかわらず、ベント捜査官は現在地から離れずに呪文の詠唱に固執したようですね? もし、呪文の詠唱を中断して道の脇に退いていれば、命だけは助かっていたでしょうし、ザール・シュレーダーが犯罪者になることもなかったと思います。この世に、呪文詠唱中の魔術師ほど無防備な存在は存在しないのに、ベントさんはそのことを忘れて無防備な体をシミターを構えて突撃してくる人物の前に晒した……『殺して下さい』と言わんばかりの状況ですよ、これ……」
デニムが言い終わると、秘書室は静けさに包まれた。3人はデニムの分析の正否を判断する為に頭を働かせ始めており、デニムは先輩達や殉職者に対する容赦無い批判が果たして良かったのかどうか悩み始めていた。ラマン秘書官からのお墨付きで始めた分析であったが、気が付いた時には、殉職者や警視総監まで遠慮無く批判してしまったのである。
──遠慮無い意見は述べてしまったが……これで良かったのだろうか……?
「話は大体分かった」ラマンは頷いた。「警視総監へは私から報告しておく。君達は仕事に戻ってくれ」
「同じ職場ですか?」サーレントが訊ねる。
「今日のところはな。ただ、近い内に、両チームとも7番街での殺人事件を手伝うことになるかもしれん。どうなるかは未定だが、そうなる可能性はあるので留意してくれ」
「了解しました」サーレントは頷いた。
「では、仕事を再開しよう」
4人は敬礼を交わした。そして、2人の警部補は早足で秘書室を後にして、地下にある捜査本部へと早足で向かった。デニムは2人に少しだけ遅れてドアから出ようとしたが、その時にラマン秘書官から呼び止められた。「イングラス事務官」
「何か?」デニムはラマンの机の側に戻ってから訊ねた。
「フローズン巡査のことを頼む。彼女が最もショックを受けているからな」
「分かりました」デニムは頷いた。
4999年3月17日 12:45
シルクス帝国首都シルクス、2番街、シルクス警視庁1階、ロビー
ラマン秘書官への事情説明に続いて行われた捜査会議を終えたデニム・イングラスは、人影まばらなロビーへと現れた。勤務時間中は職員と訪問客で賑わっているこの空間も、昼休み中である現在は静まり返っており、数人の職員の姿が見られるだけだった。セントラーザは虚ろな表情を顔に浮かべたまま、ロビーの長椅子にただ1人椅子に腰掛けている。
──何とか彼女を元気付けないと……。
デニムは彼女の肩に手を置いて話し掛けた。「隣……座ってもいい?」
セントラーザは無言で頷いた。顔からは表情が失われたままである。
──しかし、何と言えばいいのか……。どうしよう……。
デニムは腰を下ろすと、セントラーザの顔を見つめた。そして、優しい声で語り掛けた。「その……僕がどう言えばいいのか、正直言って分からない。……ごめん。こういう時に言うべきことが分からないなんて、男として失格かな……」
彼女は俯いた様子を変えなかった。
──何はともあれ……彼女の感情を「爆発」させておかないと……。
「でも……無理して感情を殺すことは無いと思うよ。君だって普通の人間だし……その……とにかく、今は無理しないで。もしも泣きたいのなら思い切り泣けばいい。誰も文句は言わないよ。僕だって──」
デニムの言葉が終わらないうちに、セントラーザの喉の奥から言葉にならない声が漏れ出した。そして、彼女はデニムに抱き付くと、声を上げて泣き始めた。デニムは両腕を彼女の背中に回し、自分の服が彼女の涙で濡れるのも構わずに、彼女が泣き止むまでこのまま放置することにした。
セントラーザが泣き止んだ頃には、既に時計の針は午後1時を過ぎていた。デニムはセントラーザの肩に手を回したまま、彼女が血の付いたハンカチで涙を拭う姿を眺めていた。普段の快活でにぎやかな姿からは想像もできないほどの落ち込みようであった。デニムの配慮で彼女は悲しみを表に出すことができたが、そこから立ち直れるのかどうかはまだ分からなかった。
──彼女……捜査に復帰できるだろうか……。
デニムが心配そうにセントラーザを見ていた時、彼女が不意に口を開いた。「……あの人……私の幼馴染だったの……」
「話には聞いてたよ……」
「父さんが外務省に勤めてて……家も近かったし……良く遊んでたわ。私より1つ年上で……先に警視庁に入ったの。その時には、もう奥さんもらって……産まれたばかりの赤ちゃんがいた……。本当に幸せそうだったのよ……」彼女はハンカチで鼻水を拭ってから言葉を続けた。「宝石盗難事件で一緒に働いたけど……仕事も一生懸命だった……。でも……家族のこともちゃんと気にしてて……性格も……デニムみたいに優しくて……頼りになったわ……。本当にいい人だったの……。本当に幸せそうでで楽しい毎日を送ってる……そんな感じだったの」
「うん……」
「……でも、どうしてあんなことになったの……? デニム……教えて……」彼女の声は再び涙声になった。
「僕には分からない……」
実際には、デニムは死んだリデル・ベントの死を悼み悲しむ一方で、その死の原因を冷静に分析しており、ラマン達に対しては包み隠さず説明していた。無論、ここでセントラーザの求めに応じて同じことを説明することも可能であったが、彼の頭の中ではそうすることは不適切だという判断も下していた。リデル・ベント自身の判断ミスが死を招いたことは(デニムの見た限りにおいては)真実であったが、このことを述べても彼女の心を癒すことにはならないことは十分に理解していた。
──今の彼女には詳しく説明しても意味が無いし、逆効果になるだろうな……。
「神様って不公平ね……」セントラーザは涙を拭いながら言った。
デニムはすすり泣き始めた彼女を抱き寄せた。「しばらく家で休みなさい。僕が家まで送ってあげる」
「うん……ありがとう」セントラーザは弱々しく頷いた。
「さあ、行こう」デニムは彼女を抱き寄せたまま立ち上がった。
4999年3月17日 14:10
シルクス帝国首都シルクス、2番街、シルクス警視庁4階、警視総監執務室
「そうか……」在任中に初めての殉職者が出たことを聞き、ティヴェンスは深々と溜息を吐いた。「それはすまないことをしてしまったな……。ベント捜査官の葬儀はどうする?」
「午前11時に遺族の方と話し合ったところ、『3月19日に行いたい』とのことでした」
「明後日だな。君に出てもらうことにするが構わないか?」
「はい」ラマンは頷いた後、溜息を吐いた。「それにしても、今回のザール追跡戦は完全な失敗に終わりました。部下に対しては引責辞任を思い留まるよう説得しておいたのですが、彼らが辞任したくなる気持ちも分からないではありませんね……」
「そうだな。ルテナエア事件当時の混乱を除けば、殉職者が出たのは20年ぶりだからな……。何が間違っていたのだろう?」
「追跡中に負傷したデニム・イングラス事務官から意見を聞いたのですが、色々と厳しいことを言われましたね。『警視総監の判断も誤っていた』と、閣下のこともはっきりと批判していました」ラマンはデニムが秘書室で約2時間前に述べたことを繰り返して聞かせた。
「耳が痛い話だな」話を聞き終わったティヴェンスは苦笑いした。「しかし、彼のような人間が警視庁にいるということ自体は、歓迎すべきことなのだろうな……。組織や官僚主義に慣らされてしまうと、彼がしたようなストレートな上司批判はできなくなるしな。そのイングラス事務官とか言う人物、かなり若いのだろう?」
「ええ。去年に入庁したばかりの新人です」
「彼が官僚主義に毒されないことを祈らねばな」警視総監の顔から悲しみの色が消えた。その表情は冷徹な警察官僚のそれに戻っている。「さて、今回の悲劇から何が学び取れるかね? 殉職者が出た理由の中に我々警視庁の者のミスが存在する以上、それを改善せねばならんし、内務大臣への報告でも改善策の提出を要求されることは目に見えている。私の在任中にこれ以上の殉職者を出すことだけは御免蒙りたいからな」
「どうでしょう……」ラマンを腕を組んで考えながら言った。「戦術的ミスの積み重ねというのがイングラス事務官の意見ですからねぇ……。次にこのような事態が発生した時に、我々の判断力が向上していることを期待するしかありません」
「消極的な意見だな」警視総監は不満げに言った。
「ただし……」
「何だ?」
「戦闘訓練の強化は必要になるでしょう。それも、個人の戦闘技術よりもチームプレーのほうが重要になります。今回の戦闘での戦術的ミスも、各個人間での連携が上手く運ばなかったからだと思います。外部から専門家──エブラーナ盗賊ギルドか皇帝直属軍の人間を招いて、捜査官達を中心に戦闘訓練を行わせることが必要になるでしょう」
「悪くない意見だ」ティヴェンスは机を指で叩きながら言った。「内務大臣への報告で話を出しておこう。ただ、実行できるのは事件解決後になるぞ」
「ええ。その通りですね」ラマンは頷いた。「それはそうとして、ザールはどうします?」
「奴をリベル・ベント殺害犯として帝国全土に指名手配しろ。懸賞金も掛けるんだ。……それから、奴をダルクレント・パロス及びエドバルト・ガートゥーン殺害の重要参考人としても手配するんだ」
「しかし、大蔵大臣が──」
「そんなの知ったことか」ティヴェンスはラマンの言葉を遮った。「ザールは犯罪者なんだぞ。昔はそうだったのかどうか分からないが、少なくても今は警官殺しの罪人になっている。それを忘れるな」
4999年3月19日 13:30
シルクス帝国首都シルクス郊外、第2公営墓地
ザール・シュレーダーによって殺害されたリデル・ベントの葬儀は、小雨が降る中で行われた。葬儀にはリデル自身の遺族の他に、警視庁を代表する形でキロス・ラマン、デニム・イングラス、セントラーザ・フローズンの3人が参加することとなった。遺族の中には「もっと多数の参列者がいても良いのではないか」と考えラマンに詰問する者も存在したが、ラマンはそれに対し、ザールの逮捕によってリデルを供養するべきだと考える捜査官達の数が多く、彼らの気持ちを代弁する形で3人だけが派遣されたのだと説明していた。
葬儀は遺族達の家族が所属していたタンカード神殿の司祭が執り行った。6番街のタンカード神殿で簡単な儀式を済ませた後、黒い服に身を包んだ参列者と聖職者達は黙々と行進を続け、目的地である第2公営墓地に到着した。既に、リデルの遺体が収められた棺は地中の穴に下ろされ、上から土を被せられていた。この世界で彼がかつて生存していたことを示す証は、穴のすぐ隣に建てられた大理石で作られた墓標だけとなっていた。
リデル・ベント
4979年5月20日 生誕
4999年3月17日 逝去
家庭を守った良き父親、ここに眠る。
「──我らが親愛なるリデル・ベントの御霊が救われ、安らかな平和を得られんことを祈る。
フェル・ヴィラーニ
(魂よ、安らかに)」
「フェル・ヴィラーニ」
司祭の声に合わせて、参列者達が唱和した。
一時の沈黙を置いてから、司祭が側に立っていたリデル・ベントの妻に声をかけた。「最後の御挨拶をお願い致します」
直前まで泣き腫らしていた反動なのかは不明であるが、彼女の声は落ち着いていた。黒い喪服の胸には、3月15日に誕生日プレゼントとして亡き夫からもらった銀のブローチが鈍い光を放っていた。
「皆さん……本日は、夫リデル・ベントの葬儀に参列して頂きありがとうございました。これで、夫の魂も天国で安らかな一時を迎えることができるでしょう……。最後になりましたが、夫が働いておりました警視庁の皆様が、夫の遺志を継いで捜査に邁進されることを心より期待致しまして、最後の挨拶に代えさせて頂きます。本日は本当にありがとうございました」
夫人が深々と黙礼する。参列者も深々と頭を下げた。
こうして、リデル・ベントの葬儀は終了した。参列者達は知人の姿を見つけ、故人の思い出話などを語り合い始めた。良き家庭人として知られていたリデルの死はどの人物にとっても大きなショックであり、彼らは思い出話が1つ終わる度に「なぜこんなにも早く死んだんだ」と付け加えるように言った。そして、リデルの死後に残された1歳になる娘──第2公営墓地には連れて来なかった──と未亡人のことを想い、彼に死を命じた運命という存在に対して呪いの言葉を何度も吐いていた。
警視庁の代表として訪れた3人にとっては、リデルの死は単なる悲劇以上の重大事──警視庁の敗北を意味しており、リデルの妻の言葉が3人の心に重く圧し掛かっていた。
「今からが大変だな……」傘を右手に持ったラマンが言った。
「ええ」デニムは頷いた。その横ではセントラーザがデニムの左手を握っていた。2人は傘を指していないため、その髪と喪服は雨で濡れてしまっていた。
「連続女性誘拐事件の犯人、7番街での殺人事件の犯人、そしてザール・シュレーダー……。彼らを全て逮捕せねばならん。《7番街の楽園》の8人を陥れた連中も残っている」
「でも……どうすればいいのでしょうか……?」セントラーザが訊ねた。彼女は葬儀の最中も泣いており、目は赤く腫れていた。
「正直言って分からん……」ラマンはそう言って溜息を吐いた。
「ええ……」デニムも頷いた。「とりあえず、戻りませんか?」
「そうだな」
3人は小雨が降る中を、他の参列者達に混ざって歩き始めた。
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