(1)Part2突入にあたって このページの存在意義などに関しては、Part1を参照されたし。 さて、正直申し上げると、このコーナーにPart2が登場してしまうなどとは夢想だにしなかった。だが、私自身の感性に合ったゲームソフトというものは、捜せば見つかるものである。見つかった以上は紹介せねばなるまい。もっとも、今回最初に紹介されるソフトは、元はと言えば同じ大学の法学部の後輩でALICESOFTの熱烈なファンである某人物から「こいつは中々いいですよ」と貸してもらった品物であり、私が自力で掘り起こしたソフトではないのだが。 今回紹介するのは以下の作品である。 (1)『LOE』 (2)『忘れな草』 |
(2-1)「昔ながら」の遺産争奪戦 ──『LOE』 1999年10月にAaruが発表したADV。Windows98向けの18禁ソフトである。正式名は『LEGEND OF ENOMOTO』。 西暦1986年、東京都奥多摩町に住む大富豪・榎本頴一郎が孤独な死を迎えた。 彼は自分の屋敷のどこかに遺言書を隠し、それを見つけだした者に全財産を譲与するという言葉を残していた。 そして、彼が死去してから1年後、新聞に以下のような懸賞広告が掲載された。
この広告こそが、榎本頴一郎の遺言書探しの大会への誘いであった。 幾多の難関を突破した先に手に入れられる物は、彼が残した莫大な遺産。 主人公である伊集院拓也(変更可能)は、ふと目にしたこの広告に応募し、榎本頴一郎の遺産を巡る冒険に加わることになる。 本作品の最大の特色は、探偵物ADVを彷彿とさせるようなゲームシステムである。 遺言書を捜す為に屋敷などを歩き回る時、プレーヤーはコマンドを入力して主人公を動かさねばならないのだが、このコマンドの入力が [動詞]を選択→[名詞](目的語・補語)を選択 というように、一昔前のコマンド入力式ADV(特に探偵物に多かった)を再現したシステムを採っているのである。具体的には──
──という感じになる。 とにかく、プレーヤーが能動的に動かないことにはストーリーが全く進まないのである。このようなゲームシステムは、探偵物ADVや一昔前の一般的なADVならば標準的に用意されていた。しかし、今日では、ヴィジュアルノベル形式のADVが数多く出まわり、受動的に選択肢を選ぶだけ──ゲーム性としてはゲームブックと同内容──の作品が主流になっている。5年か10年前に本作品が発表されていたとしたら、「ごくありふれたアドヴェンチャーゲーム」という評価で終わっていたはずであるが、ヴィジュアルノベルがADV(特に恋愛ADV)の中心を占めている今日では、ゲームシステムにおいて「独自性」を発揮している本作品は、他の諸作品とは異なった色彩を放っている。 また、ストーリーの性格上、頭を使わねば解決できないトラップとリドルが多数配置されているのも本作品の特色である。しかも、選択するとゲームオーバーになるトラップの選択肢や、「調査するだけ時間の無駄」というダミーのアイテムも用意されている。更に、当然のように時間制限(コマンド入力回数で判定)が存在する。用意されているリドルも難易度が高く、攻略サイトの情報無しでクリアできたプレーヤーの数は少ないと言われている(かく言う私も一番最後に攻略サイトの情報に頼らざるを得なかった)。 つまり、本作品では、一般的なADV攻略の鉄則である「コマンド総当り」が通用しないのである。 しかも、一部のCGはわざと攻略に失敗しないと閲覧できないらしい。 ゲーム性という観点から言えば、本当に手が込んでいる作品である。遺産争奪戦というストーリーの展開が必ずしも十分ではない点(ストーリー面では落第ぎりぎりの内容である)や、18禁CGの背景が天体ショーだった点など、本作品には細部において問題点が見られる。しかし、本作品ではADVというゲームシステムが本来持っている魅力が十分に引き出されている。その意味では、本作品は真の意味で「近頃のマンネリなギャルゲーに飽きた人向けの作品」であると言うことができるだろう。 追記1:9月に秋葉原で本作品が2000円以下で販売されているのを見た。この値段でこの内容ならば、実はお買い得品なのかもしれない。 追記2:冒頭に書いた問題の答えはアルファベットのE。 |
(2-2)廃村で待ち受けるものは──『忘れな草』 2000年にProject-μ(ギリシャ文字の「mew」)が発表したジタルノベルシアター第1弾。プレー時にはDirectX7.1以上が必要。 元々はこちらにてS.N.様から御紹介があった作品なので、その追記としてコメントすべきだったのかもしれないのだが、「謎解き」という要素がゲーム中に占める割合も大きく、「VNとしてではなくADVとして評価すべきかも」と思い至ったため、敢えて別コーナーにて紹介の運びとなった。 この『忘れな草』という作品は、一見すると典型的なVN形式のゲームである。プレーヤーがゲーム中でやることと言えば、2〜3個の選択肢に答えてストーリーを先に進めていくだけ。プレー時間は1シナリオあたり1時間半程度である。 ただし、本作品ではゲームが進展するにしたがい、次々と新しいシナリオが次々と登場する。そして、以前のシナリオで発生した問題点や謎を順次解決し、場合によっては新しい謎が出現するという構造を採っている。ゲーム中で扱われている謎は、主人公達の故郷となっている寒村(廃村?)に伝わる民間伝承と、忘れてしまっている主人公自身の子供時代の記憶の2つに大きく分かれており、この2つの謎が密接に絡み合うことによって、ストーリーと世界観に奥行きと複雑さを与えている。これによって、プレーヤーは「あれ? この物語の設定ってどうなっているんだろう?」というゲームの内容に対する好奇心・興味を抱えたままゲームを続けていくことが可能になっている。作品中にはゲーム内で登場した語句を簡単に説明するコーナーや、ちょっとしたクイズゲーム(特定のエンディングを複数閲覧することによって「付録」内に出現)など、ユーザーの手による「謎解き」を支援する機能も揃えられている。しかも、説明コーナーの文章が若干曖昧で、意味深なものに留まっている辺りがなかなか上手い。 ゲームシステムや設定以外にも、本作品には着目すべき点がいくつもある。 まず、テキストの表示に際して、文字のサイズや色(白〜灰〜黒)、出現位置などが変化する演出が施されている。特に、いわゆる「恐い」シーンでは、テキストによる演出と効果音が場を上手く盛り上げている。ただし、その代償として、メッセージスキップ速度は若干遅めとなっている。 次にBGM。寒村(廃村)のイメージに相応しく寂しい曲が主に用意されている。ただし、ゲーム中では音楽よりも効果音の方が頻繁に使われており、それが「自然に囲まれた」「神秘的な」村の雰囲気をプレーヤーに伝えるのに大きく貢献している。 そして登場人物と脚本。本作品中で同窓会に出席する同級生達(主人公も含む)は、程度の差はあれど心の中に「闇」を抱えている。また、ストーリーは全体的に重くて暗い内容となっている。「泣きゲー」としての要素はそれなりに含まれているものの、「萌えゲー」としての要素は極めて薄い(謎解きをしたりや主人公達の設定・人間関係を見たりしたら萌えどころじゃなくなる)ので、萌え転がりたい人間にはあまりお勧めできない。 ※「各ルート毎の女性達の描写に差がありすぎるのでは?」とお思いの方、大丈夫。CG回収率100%になればその疑問に対する「答え」が提示されるので。 世界設定や脚本の完成度は高く、謎解きの要素も詰められている。短いながらも手応えは十分にある作品なので、「溜飲が下がるような感動」(「感激」ではなく「感銘」「感心」)をPC向け18禁ゲームにお求めの方は、一度プレーされてみたらいかがであろう。 なお、本作品は仕様の関係上、マウスよりもキーボードでプレーしたほうが快適に遊べるようだ。 |
(3)最後に これ以上、ネタが続くのか怪しくなってきた今日この頃である。しかし、「ゲームとして楽しめる面白い作品を作りたい」と考えるゲームクリエイターがいる限り、いつかはPart3、Part4も続々登場するであろう……登場するといいなあ(^^;)。 『マンネリなギャルゲーに飽きた方へ』及び『面白いヴィジュアルノベル求む!』については、読者の皆様からの御意見も積極的に載せていきたい。 |