第1回座談会 4月1日の魔術師(以下「聞き手」):全国2000万人のゲームファンと1000万人のRPGファンの皆様、こんにちわ。新企画「隠しボス座談会」のお時間がやってまいりました。ここでは、過去のRPGに登場した「隠しボス」と呼ばれる方々にお集まり頂いて、隠しボスや戦闘システムについて自由で活発な論議をして頂こうというものです。で、記念すべき第1回目は『FINAL FANTASY』に登場した隠しボスがテーマとなります。そこで、こちらのお三方にお集まり頂きました。 ?:まずはわしからじゃな。 聞き手:ええと……どなたでしたっけ? エリディブス:ほほう……このエリディブス様を知らぬとは、異世界の者じゃな。失礼なことではないかね? 聞き手:(ぶるぶる)そ、そんなことはありませんよ。確か、ディープダンジョンからお越しのエリディブス様でしたね? エリディブス:うむ。普段は地下10階におるのじゃが、暗闇の中で召喚魔法の研究をするだけの毎日、というものも結構退屈でな。せっかくじゃし、ここにやって来たのじゃ。 聞き手:ありがとうございます。さて、残るゲストですが── プリンプリンセス:こんにちわ〜〜。 トンベリ:あ、お邪魔してます。 聞き手&エリディブス:…………。 エリディブス:そこの若いの。 聞き手:……何でしょうか? エリディブス:そんなに【ゾディアーク】をくらいたいのかね? 聞き手:そ、そんな! 滅相もございません! 私だって、この2匹が来てるってことは予想外だったんですから! トンベリ:でも、このシリーズに登場する隠しボスって、人間外生物が山ほどいますからね。僕達が唯一「人間臭い」連中なんですから。 プリンプリンセス:そうですよ。たとえ人間に近くたって、体が大きいんじゃ、ここには入りませんもの。それに、人間の言葉を喋れる隠しボスって案外と少ないんですよ。 エリディブス:創造神トライアとは大違いじゃ。あっちでは、みんな喋っていたからのう。『Valkyrie Profile』では生意気にも、隠しボスにまでCVがついたそうじゃないか。なんか羨ましいのう……。 聞き手:スクウェアって会社、声を入れることに抵抗でもあるのでしょうか? トンベリ:どうでしょうか? でも、声が入っているゲームが少ないことは事実ですね。『Xenogears』と『武蔵伝』には声も入ってたと思いますけど、前者は戦闘時のSEと全く変わらなかったし……。 プリンプリンセス:開発者の趣味ですか? エリディブス:グラフィックだけはとにかく凄いソフトばかりつくっておるから、声にまで頭が回らんのじゃろう。あとは、企画の人間の趣味。創造神トライアのほうに声がたくさん入ってるのも、元々は開発者の趣味らしいのう。 プリンプリンセス:羨ましい……。 聞き手:開始早々、隠しボスとは関係無い話から始まってしまいましたが、そろそろ本題に入りましょう。まず、隠しボスとして登場したことについて、皆様の御意見を伺いたいのですが? トンベリ:僕は『5』以降毎回顔を出していますが、『8』では一番出世できましたね。隠しボスの1体にもなりましたし、あの時はGFとしてスコールさん達と一緒に旅ができましたし……。 プリンプリンセス:出番があっていいですねえ……。私達の種族なんて、回を追うごとに出番が少なくなってるような気がするんですよ。一番目立ってたのが『4』でしたし。 エリディブス:それを言い出せば、1回きりの登場であるわしの立場はどうなるんじゃい? 人間の姿をしているのは僅かに30秒足らずで、すぐにわけのわからんモンスターの姿をさらしてしまうんじゃから……。せめて、人間の姿のままで戦いたかったのう……そっちのほうが不便じゃとは知っておるが……。 聞き手:人間の姿のほうがよろしいと? エリディブス:そりゃ当然じゃ。わし以外にも、ルカヴィになって醜態を晒した連中は山ほどおるぞ。グラフィッカーに文句を言っても始まらんが、もうちとキレイに描いてくれても良かったのではないのかね? プリンプリンセス:ええ……綺麗じゃなかったですね。あれは。 エリディブス:所詮、魔界なんてあんなものなのじゃろう……(嘆息)。 プリンプリンセス:それを言い出せば私もそうですよ……(嘆息)。あ〜あ、可愛い上にキャラクターグッズまで出してるトンベリ君が羨ましいなあ……(ジト目で隣を見る)。 トンベリ:…………(冷や汗を流している)。 聞き手:……ええと、じゃあ、皆さんのことはこのくらいにして、他の隠しボスのことを色々と考えてみたいと思います。 エリディブス:『5』以降の『FF』シリーズには必ずいたような気がするのう。 聞き手:まずはオメガですよね。 プリンプリンセス:『6』では恐竜の森というものもありましたよ。 エリディブス:でも、この時期まではまだ救いようがあったものじゃ。たとえ「隠しボス」でも、HPはせいぜい50000か60000程度じゃったからのう。ひどくなったのは次からじゃな。 トンベリ:『7』のアルテマウェポンは100000。インターナショナル版に登場したルビーウェポンとサファイアウェポンはHPが500000以上あったんじゃないですか? エリディブス:うむ。『8』のオメガウェポンのHP……下手すれば7桁になってたからのう……最高で1161000か。『9』のオズマになってようやくHPが100000程度に落ち着いたが、それまでは凄いものじゃ。 聞き手:話を聞くだけだと、HPがインフレを起こしているとしか考えられませんでしたよね。 プリンプリンセス:でも、主人公達の戦闘能力が常軌を逸しているとも考えられます。……だって、『7』の【ナイツオブラウンド】で最高129987(=9999×13)ダメージ、【オール7フィーバー】で497728(=7777×64)、クラウド君が一暴れするだけで100000以上のダメージは入りますし、『8』の【ウィッシュスター】で最高79992(=9999×8)、【エンドオブハート】では下手すると約220000(≒5000×8+9999×17)ダメージ……。『8』では5桁ダメージが出るようになりましたし。 聞き手:その点、『9』は抑制されていますね。最高ダメージは9999だし、【みだれうち】は無いし。召喚魔法は大分弱くなっているし。……まあ、今回の召喚魔法は【リジェネ】の為の時間稼ぎになりますけど。 トンベリ:あと、忘れてならないのは一発必殺技の存在ですね。『7』の【オールオーバー】に『8』の【ジエンド】。『6』の【ジョーカーデス】がケフカに効いたのかどうかは確認を取っていませんが。 エリディブス:それに、『8』ではラストエリクサーを楽に100個集められるそうじゃないか。トンベリ殿のお力を借りれば、ラストエリクサーを375000ギルで「買える」ようだし。 聞き手:ええ。確かに『8』は戦闘バランスが上方に振り切れていましたからねぇ……。 プリンプリンセス:これでは、いくら隠しボスがいたとしても、簡単に倒されてしまいますわ。現に、あなただってオメガウェポンは倒してらっしゃるんでしょ? 聞き手:まあ、【ジエンド】を使っただけですけどね。私の大学の後輩には、【エンドオブハート】5連発でオメガウェポンを沈めた猛者がいますよ。レベルが低いと逆に戦いやすいらしいですね。……それにしても、このままでは、座談会……というよりも、『7』と『8』の戦闘システムの批判会になってしまいますね。 エリディブス:しかし、『7』のマテリア、『8』のGFやドロー、ジャンクションのルールに穴があったことは事実じゃし、必殺技のパワーバランスを不自然に設定してしまったのも事実じゃ。少なくても、『5』や『6』ではここまでバランスは崩れていなかったぞい。 プリンプリンセス:【ナイツオブラウンド】あたりから変になったのでしょうねえ……。 エリディブス:まあ、作っている側が数値を巨大化すればプレーヤーに爽快感を与えられると思っているのかもしれんな。現に、創造神トライアのほうはその路線を完全に継承しておる。『VP』では普段からHPが5桁あるそうじゃし、『STAR OCEAN THE SECOND STORY』では、序盤にHP100以下の雑魚敵を出しておきながら、隠しボスのHPが3200000だという話じゃ。 聞き手:それを考えると、HPを2桁や3桁で調整している『DRAGON QUEST』シリーズの戦闘バランスって凄くありませんか? エリディブス:その通りじゃ。 トンベリ:ゲームシステムやバランス云々については、別の問題があるのかもしれませんね。 聞き手:……というと? トンベリ:これは前々から感じていたのですが、自由度がより高いシステムになればなるほど、ゲームシステムの虚を突いた禁断の裏技が増えていくような気がしてならないんです。『4』と『5』を比べた時や、『7』『8』と『9』を比べた時に強く感じることなんですけど……。例えば、『4』の最終ボスだったゼロムスや、『9』の最終ボスである永遠の闇を倒すのは、どれだけレベルが高くなったパーティーでもそれなりに苦労していたはずです。これはプレーヤーの害敵手段や戦闘能力増強法が限られているせいでした。でも、『5』『7』『8』のように、アビリティを自由に組み合わせられるようなゲームシステムでは、アビリティの組み合わせ次第で凄まじい外道コンボを発動させることもできたと思いますよ。そのおかげで、最終ボスを倒すのはかなり楽でしたし。 エリディブス:例えば? トンベリ:『5』では【れんぞくま・バハムート】→【ものまね】×3でネオエクスデスを瀕死の重傷にすることができますし、【まほうけん・フレア】+【みだれうち】で単体相手に30000近くのダメージを与えられたと思います。『7』では【ナイツオブラウンド】+【せんせいこうげき】&【ナイツオブラウンド】+【MPきゅうしゅう】で、MPを回収しながら敵をなぎ倒すこともできたはずです。『6』では【バニシュ】→【デス】で敵ボスの多くを葬れましたし、『8』では……何がありましたっけ? 聞き手:アビリティの組み合わせによる外道は少なくなったと思いますね。ただ、レベルを上げずにAPだけ稼がせれば、かなり簡単に戦闘バランスを崩壊させられたと思いますよ。 プリンプリンセス:でも、外道コンボを作るのは趣味と良心の問題じゃないかと思うんですけど……。 エリディブス:それは言えてるのう。 聞き手:ちなみに、皆さんはどうなのですか? 『4』や『9』のように、アビリティ取得を制限したゲームシステムが好きなのか、それとも『5』『7』『8』のように、アビリティの自由なカスタマイズが可能なゲームシステムのほうが好きなのか……。 プリンプリンセス:私は自由なほうが好きですね。戦術が限られているというのはあまり面白くないです。 トンベリ:でも、僕は自由過ぎるのにも問題があると思いますよ。ある程度の規制が掛けられているからこそゲームが面白くなるというきれいごともあるのですが、それよりも、『5』『7』『8』のような戦闘システムでは、各キャラクター間の戦略性の差別化が図られていない── プリンプリンセス:「せんりゃくせいのさべつか」? トンベリ:簡単に言ってしまえば、「別々の個性と経歴を持ったキャラを用意しているのに、ゲームシステム上で個性と経歴が反映されない」ということです。『7』では武器と能力値とリミット技に差異が現れていますからまだ良いほうですが、『8』では能力値の差異はジャンクションで簡単にカバーされてしまいますから、キャラの個性が出るのはリミット技だけになります。『5』に至っては、グラフィックが違うというだけで、4人の戦略的価値は全く同じなんです。それだったら、『3』のジョブシステムと一緒ですよ。むしろ、転職に制限をつけて各キャラクターに一定の質的差異を持たせようとしている分だけ、『3』のほうがましかもしれないんです。 エリディブス:手厳しいのう。 プリンプリンセス:『5』のファンが聞いたら激怒しますわよ。 聞き手:確かに。でも、『5』のシステムがあまり好きでないのは私も同意見です。せめて、就職不可能なジョブを設定するとか、能力値に大きな差を作るとかして、4人のキャラクターに「違い」を作って欲しかったですね。『FFT』のように固有ジョブを作るというアプローチもあったはずです。でも、こうすると今度は── エリディブス:「ジョブシステムなのに自由度が低いのは不便だ」という文句が出るわけか……。どちらが良いのか、難しいのう……。 プリンプリンセス:でも、質的差異を持たせる──言うなれば役割分担を持たせようって方向性も、結構反対意見が多いんですよ。これは『SaGa Frontier 2』での話になるんですけど、4人パーティーの戦闘でLPによるHP回復が導入されたのは、バトルプランナーの小泉さんの意向による部分が大きいらしいんですって。攻略本で話してくれたところでは、「2人が攻撃、2人が回復という役割分担ができてしまうのがあまり好きじゃない」とかいうことらしいですけど。 聞き手:まあ、『Romancing SaGa 2』以降のこのシリーズって、LPが本来の意味でのHPになっていますから、『FF』シリーズと単純に比較することは不可能ですけどね。 プリンプリンセス:それに、『5』以降の『FF』シリーズでは、人間が人外の力──クリスタルの破片とか魔石とかマテリアとかガーディアンフォースとかの力──を借りて戦うという形式が一般化していますから、各キャラクター間の質的差異はどうしても小さくならざるを得ないんじゃないでしょうか。『2』『4』『9』のように、魔法技術が完全に一般化していたり、主人公が人外の存在に力を発揮できたりする世界じゃないですし。 エリディブス:……ジョブシステムとクリスタルの関係で思い出したのじゃが、『9』のクリスタルは扱いがとても小さいのう。 聞き手:確か、Disc4で初登場でしたっけ? エリディブス:うむ。何せ、事前情報が殆ど外部に漏れ出しておらんかったから、ゲーマーの間には「クリスタル復活」という話だけが伝わっておって、それから「ジョブシステムが復活するんじゃないのか」という噂も出ていたそうじゃしな。 トンベリ:噂というよりも希望的観測ですね。 エリディブス:しかし、蓋を開けてみたところ、アクションアビリティは完全に各キャラ固有のものだけが揃えられておるし、クリスタルが登場するのはラストダンジョンの奥地でのみの話じゃ。だから、最終ボスがクジャの変形版ではなく永遠の闇という異界の者だと分かった時には、ゲーマーの間では賛否両論が出たそうじゃ。「どういう理由で永遠の闇という輩が登場するんだ?」とな。最終ボスの存在理由とストーリーが関連しておらんからのう。 プリンプリンセス:しかし、過去の『FF』シリーズでは、クリスタルを光の象徴と見なし、虚無を闇と見立てて最終ボスに据えるという手法が使われたことは何度かありましたよ。それを考えたら、最終ボスに永遠の闇という「虚無の象徴」が登場したことは別段不思議でも何でもないのですが……。 トンベリ:このノリは『3』や『5』に近いですね。 エリディブス:わしとしては、クジャをもう1段階変形させたほうが良かったのじゃないかと考えとる。……まあ、既にトランス状態になっておるから、「変形済み」と言えなくもないがな。今のままじゃと、最終ボスと戦う動機が完全に精神論・哲学の世界になってしまっとって、『6』のケフカや『7』のセフィロスのように、誰にでも納得できる「個人的」動機というものが見えなくなってしまっとる。 トンベリ:しかし、それを言い出したら、魔王のような分かりやすい敵が最終ボスに持ち出されていることの多い『DQ』ってどうなるんでしょう? エリディブス:向こうさんは「ストーリーの分かりやすさ」も同時に追求しておるからな、魔王のような分かりやすいボスでも別段問題にはならんと思うぞ。低年齢層に売り出したいのならば、下手に精神論や個人的動機を持ち出すよりも、むしろそっちのほうが望ましいとも言えるしのう……。 聞き手:さて、そろそろ容量が足りなくなってきたので、本日の「締め」といきたいのですが……。 エリディブス:「締め」が必要なほど統一性のある話をしたのかね? しかも、ギャグや落ちはないし。 プリンプリンセス:元々はギャグにするつもりだったんでしょ? 聞き手:まあ……そうなんですけど……。 トンベリ:色々な話をしたのですが……結局は、『FF』シリーズの戦闘の論議になりましたね。 聞き手:ギャグを混ぜるべきかどうかは後で考えるとして、次回は『FF』以外のスクウェア作品がテーマになりますね。で、ゲストとしてお呼びする隠しボスですが……ええと………… エリディブス:どうしたのかね? 聞き手:人間の言葉を話せそうな隠しボスが殆どいない……。 エリディブス・トンベリ・プリンプリンセス:…………。 トンベリ:……ということは? 聞き手:また皆さんにお越し頂くことになりそうです。 エリディブス:ふん……まあ、退屈凌ぎにはなるから、別に構わんぞい。 プリンプリンセス・トンベリ:(無言で首を縦に振る) 聞き手:ありがとうございます。では、第2回座談会でお会いしましょう。 聞き手:ふと思ったのですが、皆さんの中で最も強いのは誰なんでしょう? エリディブス:ほほう、これは興味深い命題じゃのう(杖を構える)。 トンベリ:ええ。では、試してみますか?(包丁を右手に持つ) プリンプリンセス:じゃあ、私と一緒に踊りましょう! (突然、室内に『サンバ・デ・チョコボ』のメロディーが流れ始める) (そして、10分後。室内にはトンベリと聞き手とエリディブスが気絶して倒れている) プリンプリンセス:もう終わりなの? つまんないわね……。 |