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『素晴らしいヴィジュアルノベル求む! Part1』

(1)この文章を用意した意義

 コンピュータゲームのジャンルの中に、「ヴィジュアルノベル」と呼ばれるソフトが存在する。
 私の記憶が確かならば、Leafが『痕』『雫』『ToHeart』といったソフトを発表したことによって、初めて確固とした1ジャンルとして成立し、ゲーマー達の間に認知されるようになったはずである。広義のゲーム分類ではアドヴェンチャーゲーム(ADV)に分類される。ゲームシステムとしては受動的に選択肢を選ぶことによって進行し、プレーヤーはウインドウに表示される物語を読むことによってゲームを楽しむことになる。そのため、文章力・脚本・音楽が他のジャンルのゲームよりも増して重要になっている。
 今日、ゲーム業界には多数のADV──ヴィジュアルノベルが出回っている。その中から、プレーヤーを十二分に満足させるであろうと考えられる傑作ソフトを見つけ出し、読者の方の目に留まるようにすることが、このコーナーの存在意義である。作品の紹介については、主として読者の皆様からの投稿を中心に進めて行きたい。
 読者の方からの投稿を中心に進める理由だが、私がゲームを購入したり自発的に借りたりする時、ヴィジュアルノベル形式のゲームに触れることが殆ど無いからである。RPGやSLGのように「『ゲーム』としても楽しめる」作品を嗜好し、同じADVならばゲームシステムや世界観が奇抜で面白く、ストーリーがしっかりとしていて整合性が取れている作品を優先して選ぶため、システムが単純なだけのヴィジュアルノベル形式のゲームは「後回し」になってしまうのである。それで、読者の皆様の御意見を頂戴したい──というわけである。

 ……というか、最初にプレーしたヴィジュアルノベルが『ONE』と『Kanon』という非常に癖が強いゲームだったので、それ以来敬遠しているのが本当のところである。明らかな「食わず嫌い」なのだが。

 現在紹介されているのは以下のソフト。

(1)『CAMPUS〜桜の舞う中で〜』
(2)『MoonLight〜おもいでのはじまり〜』
(3)『贖罪の教室』

『ファントム Phantom of Inferno』の紹介文は『Part2』に移動。


(2-1)指向性の爆弾を抱えた作品  ──『CAMPUS〜桜の舞う中で〜』

 1999年にエーテル/アセンブラージュが発表したADV。2000年にKIDから『Screen』というタイトルでPS移植版が発表された。
 本作品の制作に携わったエーテルは2000年5月に解散されている。

 あらすじは以下の通り。
 主人公・高坂隆景(変更不可)は、数年前に両親を事故で失った大学生。現在は東京に住み自由気ままな生活を送っている。そこに、病弱な義妹・舞子が同じ大学に合格したために引っ越してきて、同居することになる。そして、大学を舞台にした悪友と女性達とのストーリーが幕を開ける。

 ゲームシステムとしてはコマンド(選択肢)を選ぶことによってゲームが進行する形式である。ただし、選択肢を選ぶ時には時間制限が設けられており、時間制限オーバーにすることが正解(らしい)場合も存在するようだ。
 操作性が良くないらしく、他サイトのレビューでも問題点として取り上げられていた。

 では、本ソフトを紹介して下さったS.N.様の推薦文を御覧頂きたい。なお、黄緑色の背景が付いている部分の文章はS.N.様に著作権が属するものとする。

 地雷ゲーム。
 このゲームは厄介な代物である。
 うまくツボにはまれば素晴らしいゲームと感じられるが、外れた場合ただの駄作になってしまう。

 というのも…
 このゲームには爆弾が仕掛けられている。このゲームを楽しめるか否か、そしてこのゲームを「素晴らしい」と見なすか「駄作」と見なすかは、この爆弾がどのようにプレイヤーに接触し、爆発したかによって決まる。
 爆発した結果、感心するか、怒りを覚えるか…これはプレイヤー次第だが、うまく爆発するかどうかは偶然の要素も大きく、「この人なら必ずこのゲームを楽しんでくれる」とも言えないのが辛いところである。
 …とまあ、訳の分からないことを書いてきたが、要するに、「大いに堪能できる可能性がある」ということである。外した場合ただの駄作なので絶対のお薦めとはいかないが、うまくはまった場合本当に素晴らしいので、ここに紹介したい。

 ネタばれにならない範囲で、少し補足しておく。

  • 純愛系。ただし、18禁シーン描写は重め。
  • プログラムの出来がひどく悪い。
  • ヒロインは基本的に変人。過度に萌えるのは危険。(火傷するぞ!)
  • バッドエンドは重要。しっかり鑑賞しよう。(イタいのが多いけど…)
  • 「ネタばれ」と書かれた情報は絶対に見ない。(!!厳守!!)
S.N.様による評価:
操作性音楽画像システム設定人物脚本主観評価合計
488710++9103086



 本サイト運営者である私自身の感想・評価についてだが、ネタバレにならない範囲で説明したい。

操作性5本作品最大の問題点はおそらくこの項目になる。
通常インストールではゲームの進行が遅過ぎるので、快適にプレーしたければフルインストールが必要。
だが、フルインストール方法(CD-R内の「OpSetup.exe」を実行)がマニュアルに書かれていない。
この他にも、メッセージスキップ機能の記載漏れなど、マニュアルの不備が目立つ。
メッセージスキップにはF1キー/F2キーを使用。未読/既読は判別されない。
セーブはWindowsの機能を流用。セーブ個数は無制限(!)。
音楽8MIDI音源だが、雰囲気を壊さない仕上がりなので問題は無い。
CVについては聞いていなかったので省略(好評だったらしい)。
画像8画質そのものは綺麗であるが、背景画が少ないような気がした。
システム6基本的には受動性の強いADV。選択肢に時間制限があるらしい。
設定10+作品の舞台は東京都内の私立大学。モデルは特に無いらしい。
ここに「指向性の爆弾」が埋められている。
人物8基本的なキャラは全て揃えられており、特に問題とすべき点は無い。
脚本9ここにも「指向性の爆弾」が眠っている。
主観評価25ソフト面では決して悪くはない。操作性が悪いのがとにかく悔やまれる。
特定のキャラに対する萌えプレーを実践中の方は脚本面で注意が必要。
合計81操作性さえ良ければ、傑作としても評価され得る作品ではないだろうか。


 「指向性の爆弾」の正体についてはこちら(重度のネタバレ)を参照のこと。


(2-2)超常的ではない感動物ストーリー  ──『MoonLight〜おもいでのはじまり〜』

 2000年にClearが発表したADV。
 Clearブランドとしては記念すべき第1作となっている。

 作品の舞台となるのは冬。高校2年生の新貝光輝は3学期の始業式に出席すべく、通い慣れた道を学校へと向かう。しかし、彼がこの道を通い続けるのも後僅か。……というのも、彼の通う高校は今学期末で廃校となってしまうのだ。
 廃校に至るまでの残り僅かな冬、その中で展開される女性達との物語が作品の主題となっている。

 ゲームシステムてはコマンド選択式のADVを採用。前半部分での選択によって後半の展開がヒロインに応じて分岐する構造を取っている。

 では、本ソフトを紹介して下さったS.N.様の推薦文を御覧頂きたい。なお、黄緑色の背景が付いている部分の文章はS.N.様に著作権が属するものとする。

 このソフトを推す最大の理由は、「超常的な設定を持たないお涙頂戴系のソフトである」からである。

 お涙頂戴系のソフトとしては「Kanon」(Key作)が有名だが、超常現象による救済を行うKanonに現実感の乏しい面があるのに比べ、超常的な設定を持たない「MoonLight」はより万人向けである。
 ただ、設定を上手く使って(「メインヒロインをダシにして」とも言う)話が展開される氷沼悠理(=メインヒロイン)、奈々村沙祐璃、片瀬美姫の三人のシナリオに比べ、残りの二人のシナリオが大きく見劣りするのが難点。
 上に挙げた三ヒロインに限れば良い出来である。全体としては微妙な評価。新興ソフトハウスの最初の作品であり、今後期待したい。

補足。
1)正常なプレイにはHPからパッチを入手する必要がある。
2)ネタばれにより興ざめを起こす危険があるため、ネタばれ注意がある情報はプレイ前にアクセスしてはいけない。

S.N.様による評価:
操作性音楽画像システム設定人物脚本主観評価合計
798610882581



 本サイト運営者である私自身の感想・評価については、本作品クリア時に改めて紹介したい。


(2-3)人間の暗黒面を正面から捉えたサスペンス  ──『贖罪の教室 The seven stories of sin』

 2000年4月にWILLが発表したADV。ゲームの開発はFlyingShineが行っている。
 本作品はWILLのソフトの中で「ruf」ブランドとして発表されている。なお、この会社には他にも「Sweet Basil」「Guilty」という2つのブランドを抱えており、『螺旋回廊』(以上 ruf)『リトルMyメイド』『帝都のユリ』(以上 Sweet Basil)『お兄ちゃんへ』(以上 Guilty)などのソフトを発表している。

 ストーリーの中心となるのは平松七瀬。彼女はどこにでもいる普通の女の子だった。
 ところがある日、彼女の父親が殺人犯として捕まると、平穏無事だった彼女の生活が一変する。
「お前の親父、殺人犯だってな。そんな奴が平気な顔をして学校に来てもいいのか?」
 無抵抗の七瀬に群がる男達を前に、彼女は父親の罪を贖う為、自らの肉体を生贄として差し出した。
 そして、「贖罪」の名の下に、七瀬への果てしなき虐めが始まる。
 ──果たして、その先にあるものは一体何か?

 この作品は、18禁ゲームとしては陵辱系に分類される。

 では、本ソフトを紹介して下さったふりすきー様の推薦文を御覧頂きたい。なお、黄緑色の背景が付いている部分の文章はふりすきー様に著作権が属するものとする。

 このゲームは非常に惜しいゲームである。
 簡単に言うとシナリオは2000年度どころかここ数年でも最高レベルのすばらしいものなのだが、あまりにもシステムがダメすぎるため、かなりのプレイヤーが途中で投げ出し、また最後までやった人間も「シナリオはいいけどシステムはクソなゲーム」としか評価していないことが多い。(現在開発元のflying shineにて評価版プログラムというものが公開されており、それが動けばかなり快適にプレーできるのだが、どうも動かない機種もあるらしいのでとりあえず評価に含めない)
 ちなみにこのゲームをやるときには同じく開発元にある攻略情報を見ながらやることをお勧めする。というかそうしなければ下手をすれば一生クリアーできないこともありうる(ウィンドウズの時計が6時半から7時の間になっていないと正解選択肢のフラグがたたないところが1話にあるため)。自力攻略しても何ら楽しいことは無いし。
 さて本題のシナリオである。
 この物語は7話構成になっており、全7話をクリアすることにより「父親の犯した殺人の贖罪のためにクラスメイトからの輪姦を甘んじて受け入れる少女の話」という表層の裏にある壮大な罪の物語が明かされていくことになる。「なぜ父親が殺人を犯しただけで輪姦を甘んじて受け入れるのか」等のシナリオ上の疑問はゲーム終了時にはすべて解明され、また再プレイをすることによってあまりにも精密に張られた伏線に気づくことができるだろう。
 しかしそこまですばらしい作品であるにもかかわらず、この作品に対する評価はあまり高くない。これは前述のシステムの問題だけでなくシナリオ上の問題があるからだ。
 これはなにかというと「この物語には真の悪人がほとんど存在しないかわりに真の善人もまた皆無に近い」ということである。
 この物語において一見悪人と思える人間にも悲しみや葛藤が存在し、また善人に見える人間にも隠された闇の部分がある。
 ここは私がこの物語で最も評価する部分であるが、同時に世の中に受け入れられなかった理由の一つであると私は思う。しかしこの人間の暗黒面を書かなければこの物語は良くできたサスペンスでしかなかったであろう。
 事実この物語の次に出された「傀儡の教室」はそのような暗黒をほとんど書かず、また構成も雑だったため佳作レベルのゲームにとどまってしまった。

 たとえ一人でもこの文章を読んでこのゲームをやってみようと思った方がおられたら幸いである。

操作性音楽画像システム設定人物脚本主観評価合計
3651910++10++2872



 本サイト運営者である私自身の感想・評価については、本作品クリア時に改めて紹介したい。


(3)最後に

 ここでは、皆様から頂いた御推薦を中心にして、「素晴らしいヴィジュアルノベル」を御紹介してみた。お気に召したソフトはあるだろうか? 私が未プレーである作品や、私がプレーしていて気に入らなかったソフトの御推薦を受けることもあるが、ここではできる限り私情を挟まず、皆様から頂いた推薦文をそのまま御紹介していきたいと考えている。私情を挟む場合は別窓にて表示することにするつもりである。
 当初は「恋愛ADV(ただしヴィジュアルノベル中心)」となっていたが、「これでは推薦が集まらないのではないか(対象となるソフトが少な過ぎるから)」という御指摘を受けたので、募集対象をヴィジュアルノベル全般に拡張させたのでそのおつもりで。

 『マンネリなギャルゲーに飽きた方へ』及び『面白いヴィジュアルノベル求む!』については、読者の皆様からの御意見も積極的に載せていきたい。</td>


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関連リンク

-Clear(『MoonLight』製作元)

-WILL(『贖罪の教室 The seven stories of sin』販売元)

-FlyingShine(『贖罪の教室 The seven stories of sin』開発元)

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