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EZ-O-Zappar社の機密議事録(3)


[8]ヒロイン比較(?)・『ONE』vs『Kanon』

社長:さて、今までは専ら技術的な側面ばかりを論じていたが、ここからはソフト面の評価・分析を行なわなければならない。
総務:仰る通りです。
社長:しかし……今の私は、どれだけ正常な分析ができるのか自信が無い。
企画:と申しますと?
社長:今、私は強烈な「萌え」の感情に襲われている。

 部長達は社長の言葉を聞き思わず顔を見合わせていた。

総務:…………あ、あの……お相手は……?
社長:柚木詩子(キッパリ)。
営業:(^o^)
企画:これはまたマイナーな方を……。
社長:あのマイペースぶりは実に見事だった。悪いか?
企画:いいえいいえ(ぶるぶる)。
社長:そういう企画部長はどうだったのかね?
営業:どれも甲乙付け難いですが、1人を選ぶとなったら上月澪でしょう。
企画:私はななぴー(=七瀬留美)でしたね。
社長:愛称(*49)で呼ぶとは……かなり来ているな(^o^)。
企画:それはもう(^o^)。インターネットのファンクラブにも入っていますから(^o^)。ところで、総務部長は?
総務:う〜ん、特にこれといった人はいませんでしたな。ゲームを横で見ていた妻は氷上シュンと川名みさきを気に入っていたようでしたが。
社長:なるほど。では、結局、メインの長森瑞佳と里村茜(*50)は誰も好きにならなかったのか。
営業:そのようですね。まあ、「誰が誰のことを好きになったか」なんてことはどうでも良いでしょう。とにかく、これで社長も18禁ゲームにおける「萌え」の重要性は理解して頂けたのではないでしょうか?
社長:確かにな。自分のお気に入りの女性と恋仲になり、あまつさえ結ばれるというのは実に嬉しいことだ、うんうん。お気に入りキャラが脇役だった(*51)のがちょっと悔やまれるが。
企画:(微妙に違うような気がする……)
営業:要するに、18禁ゲーム──特に純愛系18禁ゲームは大好きな女性がいてこそ楽しめる(*52)ゲームなんです。たとえゲーム中に大好きな女性がいないとしても、最低限違和感を抱かせない程度の魅力・設定を持った女性は必要になります。そして、この作品の場合、キャラクターのイラストに癖があります故、キャラクターの魅力・差異は外見よりも性格・言動などで表現されることになります。
総務:それにしては、ちょっと極端な人間が揃っていましたね。身体障害者が2人(*53)知恵遅れが1人(*54)。他にも、異様なまでの大食漢(*55)大の甘党(*56)照り焼きバーガー大好き娘(*57)……とまあ、食品に対する嗜好も強く描写されていたような気がします。
企画:良し悪しは別にして、インパクトのある設定の持ち主が揃っていたことは確かですね。
総務:それは間違い無いですな。しかし……これは誉めるべきことなのでしょうかね?
営業:ユニークな設定を用意すること自体は他のゲームでもやっています。私が知る限りで最もユニークな設定を持っていたのは、『CAMPUS 〜桜の舞う中で〜』(*58)に登場した柊真由美と立花智里(*59)ですが、これはおいといて。……ただ、ユニークな設定を用意するにしても、「常識の範囲内で」という留保は当然付けるべきでしょうね。
総務:それは当然です。あまりに突拍子も無い設定を用意されてしまえば、ユーザーは「はあ、そうですか」と答えるしかありませんからな。
社長:その点から言えば……『ONE』は許容範囲内だな。身体障害者の書き込みが甘い(*60)とはいえ、あの描写ならば十分に許されるだろう。……まあ、人によっては「障害をキャラ識別と萌えの記号にしていないか」と怒るかもしれないが……。
営業:はい。しかし、そう言った声は少数派です。むしろ、逆に「障害を持っている女性達を多数登場させておきながら、彼女達を『強い人間』『障害に負けず前向きに生きようとする人々』として描こうとした」と、この作品を賞賛する声のほうが多数を占めています。これを考えれば、この作品で障害者を出したことは決して失敗にはならないはずです。
企画:『Kanon』で登場した奇々怪々な「不治の病」(*61)と比べれば、はるかにましでしょうね(^^;)。
営業:(^^;)ただ、販売戦略上、ヒロインの描写が「成功した」と考えた場合も、その効果は遅発性のものになるでしょう。前評判で「ヒロインの描写が良い」と噂されるのではなく、『ONE』をプレーしたことのある人間が口コミやインターネット、雑誌などで「これは良かった」と宣伝するような感じになりますね。特に、『ONE』の場合、イラストには賛否両論が、CGには批判中心の意見が寄せられていますから。
総務:食い物の好みの方はどうなのでしょうか?
企画:女性キャラクターの特徴付けには役立ったと思いますね。もっとも、『Kanon』の鯛焼き(*62)牛丼(*63)に比べれば描写を遠慮していますし、障害を持っているという設定に比べれば、商品としての『ONE』の価値に与えた影響は小さいと思われます。
社長:そう言えば、口癖はどうなのかね?
営業:口癖、ですか?
社長:そうだ。例えば里村茜の「嫌です」とか、長森瑞佳の「だよ」「もん」「うぐぅ」(*64)とか、椎名繭の「みゅ〜」とか……ざっとこんなものだ。
企画:社長はお気に召さなかったのですか?
社長:気に入らなかったわけではないのだが……。
総務:彼女達の精神年齢が本来の設定よりも低く感じられてしまう……?
社長:そういうことだ。特に、樋上氏の画風が「ぷに」絵である上に、女性達の性格が原則として無垢なものとして描かれているから、「精神年齢が低く見える」という印象が一層強く感じられてしまうのだ。
営業:これも女性キャラの人気の一因になっているのかもしれません。男性の「保護欲」(*65)や「年下・妹萌え」の感情を刺激するものですからね。
企画:しかし、これも『Kanon』と比べればまだ抑制されているほうだと思います。さっきから似たようなことばかり申し上げていますが、気になさらないで下さい。あの作品では、「うぐぅ」「もん」「あうぅ」などが連発されていましたからね。他にも、口癖ではないのですが、「はちみつクマさん/ぽんぽこタヌキさん」(*66)という2択まで登場していました。
総務:何ですか、その「なんたら熊さん」と「どーたら狸さん」の2択って──
企画:面倒なので説明はパスです(--;)。……で、話を戻しますが、口癖や嗜好、更には登場人物達の無垢な性格といった点の描写は、『ONE』よりも『Kanon』のほうが徹底していたと思います。月宮あゆはまさにその見本でしょう。そして、ここに列挙した一連の描写が、『Kanon』では男性ファンからの熱狂的な支持を得る一因になりました。その熱狂ぶりは『ONE』に登場した女性達の比ではないと思います。ゲーム雑誌のキャラ人気投票でも、『ONE』のキャラクターより『Kanon』のキャラクターのほうが上位に食い込んでいることを考えれば、御理解して頂けると思います。
社長:つまり、「キャラ単体の人気ならば『ONE』より『Kanon』のほうが上」ということだな?
企画:はい。では、話をまとめます。

 企画部長は立ち上がると、何も書かれていないホワイトボードに黒色のペンで字を書き始めた。

<『ONE』のヒロイン達の姿>
●『ONE』においては、女性キャラクターの差別化には、障害や嗜好・言動など、性格・外見以外の要素が大きな役割を果たしている。
●障害の描写については「現実性に欠ける部分がある」という批判が寄せられることもあるが、多くのプレーヤーには好意的に迎えられており、「許容範囲内」と考えることが可能である。
●『ONE』における女性キャラクターの描写は、同作品の売れ行き・人気に遅発的なプラスの作用を与えた。
●『ONE』には、女性キャラクターの精神年齢が実年齢よりも低く見られるような描写が存在し、樋上氏のイラストがその印象を増幅させている。
●女性キャラクターの書き分け・低年齢化は『Kanon』のほうが徹底しており、これが『Kanon』の爆発的なヒットの一因となっている。



企画:製作者達が女性キャラクターによる売上増進を狙わなかったはずはありませんが、一般的な18禁ゲーマーの多くのツボを突いたような設定が目白押しだった『Kanon』と比較すれば、『ONE』はまだまだ遠慮していた……という印象を持ちますね。女性キャラクターの描写が『ONE』よりも「低年齢」化した『Kanon』では逆に、「描写としてはやり過ぎである」「あざとい」「女性を一方的弱者としか描いていないのではないか」という批判を、「年上」属性保有者や女性から浴びることになってしまいました。Keyの作品に対する熱烈なファンである「鍵っ子」と、彼らによる萌えの「暴走」に対して生理的嫌悪感を抱く一部のゲーマー達の感情的対立は、この『Kanon』から始まったと思います。『ONE』の時期からそういった対立は既に存在していたのかもしれませんが、『Kanon』以降ほどひどくはなかったはずです。
営業:だから、女性キャラクターの描写が大きく変化した『AIR』(*67)では、逆に男性よりも女性達のほうから支持を集める結果(*68)になり、「2ちゃんねる」(*69)では「鍵っ子の萌え感情に冷や水を浴びせることになった」との賛辞が寄せられたわけですか(^o^)。
企画:(^o^)
社長:(オホン)……それでは、商品として『ONE』を見た場合、女性達の描写は良かったのだろうか?
営業:「悪い」と断罪する明白な根拠が特に無い上に、多数の特定キャラ専用ファンサイトが存在している現状を考えれば、ヒロインの存在は、商品としての『ONE』の価値を大きく引き上げていると判断すべきでしょうね。女性キャラの特徴が誇張されたため「やり過ぎ」と批判されることの多かった『Kanon』と比較した時には尚更です。ただ──
社長:ただ?
営業:女性キャラに対する論評や市場価値判断につきましては、彼女達が登場した各ストーリーに対する分析も不可欠です。それは忘れないで頂きたいですね。
社長:了解した。
総務:分かりました。……それにしても、女性キャラについては1つだけ謎があるのですが……。
企画:何でしょうか?
総務:「ツボを突いた設定」という話がございましたが、1つだけ重要な「属性」を忘れていませんか?
営業:え? それって一体……?
総務:「眼鏡」(*70)です。『MOON.』から『AIR』に至る作品の中で、眼鏡着用者が殆ど登場しなかったのはどうしてなんでしょうか?
残り3人:…………(返答できずに絶句)


[9]折原浩平という人間の正体

総務:ヒロインの論議をした以上、主人公・折原浩平の論議も欠かせませんな。
営業:はい。
社長:これはどう思う?
企画:間違い無く言えることですが、彼は本質的にギャグメーカーです。それも、体を張ったギャグの多い関西系の人間でしょう。
社長:しかし、彼の言動は物議を醸し出すことになるだろうな。この際だからはっきり言うが、私は彼の事が好きになれなかったのだ。
企画:ひょっとして、原因は──
社長:そう。長森瑞佳シナリオで発生したクリスマスのイベント。私はあそこでゲームを止めてしまったのだ。あそこでの主人公の言動は見るに耐えられなかったからな。いや、企画部長の友人が彼に「(削除)」と名付けた気持ちが実に良く分かる(^^;)。
総務:だから、それは禁句ですってば(^^;)。
社長:今のは冗談だ。しかし、あのシナリオを6人目に見た時、頭に血が上ってそこでプレーを止めてしまった。
企画:そうでしたね。
社長:彼の存在はシナリオ的にも販売戦略上も「諸刃の剣」になったはずだ。関西人を思わせるギャグの数々はユーザーを笑いの渦に巻き込む一方、一部のプレーヤーに嫌悪感を抱かせる結果になってしまっている。長森瑞佳シナリオで発生したイベントも、賛否両論があるはずだ。それはどう考える?
営業:難しいところですね。
企画:私としては「必要不可欠だった」と考えますね。あの性格とあの言動があればこそ、現在のスタイルでの『ONE』は成立したと思いますし、長森瑞佳シナリオのクリスマスイベントの「衝撃」(*71)も演出されたと思います。
総務:しかし、「観察対象」として楽しむには彼のような人間でも良いのでしょうが、感情移入する相手としては、個人によって差が出てしまうでしょうな。人によっては爆笑を誘った『ONE』のギャグも、人によっては「転校して来たばかりの七瀬留美を虐めているだけ」と受け取られかねない(*72)のです。現に、私もそういう印象を持ちました。続いて、長森瑞佳シナリオで発生した例のイベントですが……あの…………。
社長:どうしたのかね?
総務:申し訳ありません。実は、あのイベントに関する「総括」が、私の心の中では終わっていないのですよ。彼があのような行動に及ぶまでの心情を説明することは不可能ではないのですが、だからと言って擁護・弁護する気にもなれないのです。
営業:なるほど。
総務:第3者としてあの光景を観察していたとしたら、私もあのイベントをすんなりと受け入れていたのでしょうが、ゲーム中の光景は全て折原浩平による1人称で語られていますからねえ……。
企画:それは製作者の計画通りだったと思いますけどね。
総務:1人称で語ったことがですか?
企画:おそらく。
社長:説明してもらえるかね?
企画:分かりました。『ONE』で一連のクリスマスイベントが用意されたのは、プレーヤーに「自分の手で長森瑞佳をひどい目に遭わせてしまった」という罪悪感を味わわせるのが目的だと思うんです。言うなれば、プレーヤーを折原浩平の「共犯」にしてしまうようなものです。ゲーム冒頭で主人公の名前が変更可能になっていたのも、おそらくは「共犯」関係を強調するという目的(*73)で用意されたと思います。そして、プレーヤーがイベントに対して嫌悪感を抱いたとしても一向に構わない──というか、それこそがシナリオライターの目的ではなかったのか、という気さえするんです。
営業:でも、嫌悪感が募りに募ったら、ゲームから離脱する人も当然出てくるでしょうね。
企画:作った側としては、それでも構わなかったのでしょう。嫌になったゲームを無理に続行しなければならない理由はどこにもありませんからね。それに、ゲームへの参加が自由意志に基いているのならば──
社長:ゲームからの離脱もプレーヤーの自由意思
企画:そういうことです。全てのゲームにおいて、「ゲームを中止する」という選択肢は常に提示されていて(*74)、プレーヤーはそれを選ぶこともできるんです。1回、自分が嫌なゲームに出くわすまで気付かないことなんですけどね。それに、「嫌になったら途中退場が可能」というのは、ゲームに限らず、映画や小説・アニメなど、あらゆるフィクションについて言えることだと思いますが……。
営業:しかし、ゲームクリエイターが「いつでもやめれば良い」とコメントするのは、私としては感心できませんね。ゲームをお客様に売り込む立場の人間としては、「気に入らなかったらいつ止めても結構」なんて言葉、口が裂けても言えません。それは自分達の作った作品が大した物ではないかのように言い触らす行為にしかなりません。それに、ゲームは一種の耐久消費財です。1本当たりの単価はまだまだ高いので、一般消費財のようにバンバン買ってバンバン捨てるようなことはできないのです。そんなことができるのは大学生以上の人間だけです。先程の台詞は、このことを念頭に置いた上で言ってもらいたいですね。
企画:…………。
総務:…………。

 会議室が静寂に包まれる。

社長:……しかし、面白いものだな。
営業:何がですか?
社長:主人公の名前を変更するシステムのことだ。あれは「共犯」関係を補強する為の装置の一部と見ることが可能である、と言ったな。しかし、そのシステムを使うことによって、主人公の名前を「(削除)」に変更し、プレーヤーと主人公を完全に分離したプレーすらも可能にしてしまうのだからな。これは『ONE』の製作者が想定したシステムの使い方とは異なるであろう?
企画:確かに予想外……というか、普通、「(削除)」なんて名前、入力しません(^^;)(*75)
社長:それは言えてるかもな(^^;)。
営業:プレーヤーと主人公を完全に分離させたゲームとしては、『なかない猫』(*76)という作品もございます。これは『ONE』における「共犯」問題の分析に際して参考になるかもしれません。
社長:それは覚えておこう。
総務:あの……申し訳ありません。折原浩平については、まだ言わなければならないことがあります。
社長:何かね?
総務:「えいえんのせかい」に関する彼の言動です。ゲーム中の言動を見る限りでは、彼は現実世界に存在している間は、「えいえんのせかい」を受忍しているかのように受け取られかねないのです。「永遠なんて要らない」と言い出したのは「えいえんのせかい」へ行ってしまった後です。それを「現実逃避」と断罪してしまった場合には──
営業:折原浩平に対する評価も下がってしまう……。
総務:そういうことだと思います。
企画:しかし、「えいえんのせかい」へ行ってしまったことが現実逃避か否かを論議するのは、ここでは適当ではないと思われます。脚本についての問題で併せて論議しませんか?
総務:そうですね。
社長:では、このまま脚本についての論議に突入するぞ。



注釈

愛称(*49)
 社長が「ななぴー」という愛称を知っていた理由に関する突っ込みは却下……却下だ(^^;)。

メインの長森瑞佳と里村茜(*50)
 一応、この2人が『ONE』におけるメインヒロインの2人だと思われる。

お気に入りキャラが脇役だった(*51)
 ギャルゲーをプレーしている時に遭遇する最も悲しき現象の1つ(^^;)。
 『ONE』についてこの現象が最も頻繁に報告されているのが柚木詩子であるが、オンラインで実施したアンケートでは、他にも深山雪見や「ちびみずか」などに対して「彼女が攻略対象だったら……」と漏らす人間が存在した。

大好きな女性がいてこそ楽しめる(*52)
 前出の『D+VINE[LUV]』『ママトト』などゲーム性の強い作品や、『SEEK』などの鬼畜系・陵辱系の作品では、この条件は必ずしも必須にはならない。

身体障害者が2人(*53)
 川名みさき(事故により失明)と上月澪(聾唖)。

知恵遅れが1人(*54)
 椎名繭。『ONE卒業文集』内で、火塚たつや氏は「実は自分を幼く偽っているのではないか」と話しているのだが、エピローグの日記を見る限りでは……うーん……やっぱり、あれが「地」のような気がするなあ……何せ日記の文章もあんな感じだったし(--;)。

異様なまでの大食漢(*55)
 川名みさき。典型的な「痩せの大食い」という奴である。

大の甘党(*56)
 里村茜。味覚障害を患っているわけではない。

照り焼きバーガー大好き娘(*57)
 椎名繭。川名みさきほどではないにしても、胃袋はそれなりに大きそうである(おい)。

『CAMPUS 〜桜の舞う中で〜』(*58)
 1999年にエーテルが発表したWin用18禁ADV。主人公・高坂隆景(変更不可)と病弱な義妹・舞子、そして同じ大学に通う悪友と女性達が織成す恋愛模様を描いた作品。脚本面での評価は決して悪くないものの、操作性の悪さや取扱説明書の不備などが問題点として指摘されていた。2000年5月にKIDから『Screen』というタイトルでPS移植版が発表された。なお、本作品の制作に携わったエーテルは2000年5月に解散されており、同作品の販売はアセンブラージュが代わりに実施している。

柊真由美と立花智里(*59)
 2人は同一人物。本物は柊真由美で、立花智里は柊真由美が変装した仮の姿である。

身体障害者の書き込みが甘い(*60)
 川名みさきが杖を持っていなかったり、上月澪に手話を教えようとする人間がゲーム中に誰もいなかったりしたこと。とても些細な問題点だが、筆者の友人に身体障害者が実際にいるため、こういう「不十分な」描写は気になってしまうのである。

「不治の病」(*61)
 『Kanon』の美坂栞が患っていたという不治の病。その病状は以下の通り。

(1)子供の頃にでも発症する可能性がある。
(2)比較的早くに死期が分かる。作品中では「2月1日まで生きられない」とされていた。
(3)難しい病名であり、栞は病名についてあまり注意を払っていない。
(4)不治の病であり、基本的には完治することができない。


 ここまで見たら、普通の(?)不治の病であることが分かる。ところが、栞は見た目は元気であり、1月31日の深夜──死亡の10〜20分前まで一般市民とさほど変わらない生活を送っている。最高気温が氷点下にもなる街中を薄着で歩き回り、平気な顔をして沢山のアイスクリームを食べているのである。その病名については白血病やエイズ、脳関係の病気など様々な説が主張されていたものの、結局は正体不明のまま放置されている。
 なお、美坂栞の抱えていた「不治の病」は、「水瀬秋子謹製の謎ジャム」と並ぶ『Kanon』の2大ミステリーとなっている。

『Kanon』の鯛焼き(*62)
 月宮あゆの大好物。その執念の凄まじさは、食い逃げを何度も繰り返してしまうほどである。

牛丼(*63)
 川澄舞の好物。

「うぐぅ」(*64)
 一般には月宮あゆの口癖として知られているが、長森瑞佳もこの言葉を口にしていた。

「保護欲」(*65)
 お気に入りキャラを訊ねられた時、『Kanon』では水瀬秋子、『AIR』では神尾晴子の名前を挙げた筆者にはいまいち実感が沸かなかった。

「はちみつクマさん/ぽんぽこタヌキさん」(*66)
 川澄舞シナリオで登場。「YES」が「はちみつクマさん」。余談になるが、この選択肢の存在を知らなかった時に、とある18禁CGサイトの出入り口に「はちみつクマさん」と「ぽんぽこタヌキさん」の2択が掲げられていたのを見た時には、本当に困ってしまった。

女性キャラクターの描写が大きく変化した『AIR』(*67)
 簡単に申し上げれば、『Kanon』とは異なり「女性が強い人間として描かれている」ことを指す。
 詳細はkagami『私見AIR考』を参照のこと。

男性よりも女性達のほうから支持を集める結果(*68)
 2000年1月6日から2000年1月20日までインターネット上で実施された『ONE 〜輝く季節へ〜』に関する意識調査によると、男性が出した『AIR』に対する10段階評価は8.1585点(回答者=82人)であるのに対し、女性が出した『AIR』に対する10段階評価は9.2500点(回答者=4人)となっている。同様の現象は『MOON.』でも発生しており、こちらでは男性が7.2931点(回答者=58人)、女性が7.7500点(回答者=4人)となっている。

「2ちゃんねる」(*69)
 巨大掲示板サイト。2000年に発生した西鉄高速バスジャック事件で話題になった。今年に入ってからはサーバ移転騒ぎなど色々と大変だったらしい。

「眼鏡」(*70)
 ゲームに登場した眼鏡っ子として特に著名なのは、保科智子(『ToHeart』)とフィリア・フィリス(『Tales of Destiny』)の2人。また、「眼鏡」属性保有者が部長の椅子に座っているため、多数の眼鏡っ子がゲームに登場することになったALICE SOFTや、登場人物が男女関係無く全員眼鏡着用者だった18禁ADV『終末の過ごし方』(アボガドパワーズ)など、眼鏡っ子については実に様々なエピソードが存在する。
 たかが眼鏡1つ……と思われる方も多いであろうが、実は、眼鏡の有無というのはギャルゲーに登場する女性達の「外見属性」の中でも最も重要な要素の1つだったりする。上出の眼鏡っ子大好き部長が製作を指揮した『鬼畜王ランス』では、眼鏡っ子オンリーの部隊すら編成できたりする(しかも、試してみれば分かるのだが、こいつがなかなか強い)。
 だが、『MOON.』以降の4部作は眼鏡っ子と縁遠い。『Kanon』回想イベント中の川澄舞と、『輝く季節へ』の清水なつきが眼鏡を着けていただけ。どうてしこうなったのかという理由であるが、筆者は「『ぷに』系のイラストは眼鏡っ子を描くのに適さないからではないか」と推測している。無理して描こうとした場合には、どうあがいても、清水なつきのような丸眼鏡になってしまう。

長森瑞佳シナリオのクリスマスイベントの「衝撃」(*71)
 「クリスマス」とあるが、実際には1998年12月19日から1999年1月4日までの16日間を指す。

人によっては爆笑を誘った『ONE』のギャグも、人によっては「転校して来たばかりの七瀬留美を虐めているだけ」と受け取られかねない(*72)
 七瀬留美と折原浩平の間で展開されていた漫才(?)についての論議を真剣に行ったら、「お笑いとは何か」という命題について論議をしなければならなくなる。

「共犯」関係を強調するという目的(*73)
 詳細は『ONE卒業文集』に掲載されている肯定派諸氏の文章を参照のこと。

「ゲームを中止する」という選択肢は常に提示されていて(*74)
 パソコン用ゲームの場合、「ゲームを止める」という「選択肢」は、ゲーム画面右上の端に「×」のアイコンとして表示されている。家庭用ゲーム機の場合には、電源を切るという行為がそれに相当する。

普通、「(削除)」なんて名前、入力しません(^^;)(*75)
 筆者が後輩からこのアイデアを聞かされた時、一瞬絶句してしまった。

『なかない猫』(*76)
 彩文館出版内のゲームソフト開発チームScramble HOUSEが2000年7月に発表したWin用18禁ADV。主人公が姉に促されて両親を殺す夢を見るという衝撃的なシーンで幕を開けるサイコサスペンス。ゲームとして特筆すべきは、ゲーム中の文章が全て(!)3人称で書かれている点である。


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(1)(2)/(3)/(4)(5)(6)参考資料追記

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